研ぎ澄まされた孤独

とりとめのない思考を無理に言語化した記録

2021年に観た映画 一気に感想書く

毎年恒例、今年映画館で見た映画を一気に振り返る回です。ぼくは映画館の半券をノートに貼るという行為を大学3年生の時から続けており、年末にそれを見返すということを毎年の習慣としています。今年は去年よりは映画館に行けたと思います。ほんのわずか上回る程度ですが、合計22本でした。

 

1/1 私をくいとめて@テアトル新宿

元日に見てたんですね。たしか実家から歩いて新宿に行ってぶらぶらして、なんとなく見たような気がします。のんさんが主役のやつだったっけ。たしか、3年ぐらい前に「勝手にふるえてろ」を元日に見ましたね。同じ監督、同じ綿矢りさ原作。

 

2/14 花束みたいな恋をした@Tジョイ品川

バレンタインに見てたのか…お客さんはカップルが多かった気がします。あのカルチャースノッブの麦くんが暗がりでパズドラをやっているシーンは、既視感があって怖かったです。さまざまな示唆に溢れる映画でしたよね。

 

3/28 シン・エヴァンゲリオン劇場版@Tジョイ品川

こういう風にまとめるんだ! と感嘆。エヴァらしくもあり、けれどもちゃんと決着をつけた、すばらしい映画だったと思います。鑑賞後、品川でいいワインとつまみを買いこみ、家でゲンロンカフェのエヴァ特番を8時間ぶっ通しで視聴したりしました。後日、会社の後輩とだらだら語り合ったのも楽しかったですね。

 

4/17  ヤクザと家族@角川シネマ新宿

義理と人情では食えなくなったヤクザの悲しき末路。盃のシーンで筆文字縦書きのスタッフクレジットを出す演出がカッコ良すぎて震えましたね。もう今の時代、昔のようなヤクザ映画は作れない。作ったとしてもなんのリアリティもない。現実はこうなんだから。と、破産宣告した作品のように思いました。彼にはヤクザしかなかった。それだけが居場所だった。

 

4/17 パームスプリングス@新宿ピカデリー

緊迫感のないループもの。見ていて楽しかったですね〜。下ネタ多いけど…ループ抜け出す方法わかんないけど楽しければいっか! という開き直り。「終わりなき日常」を生きる意思、「意味から強度へ」の移行が行われていました。

 

4/17 騙し絵の牙@新宿ピカデリー

出版社の話。そんなうまくいくかよ! という突っ込みを入れたくなるけれど、それ以上に、この大泉洋みたいにプロジェクトを引っ張っていくリーダーがいたら仕事も楽しいかもなあ、と思ったりしましたね。松岡茉優の最後の決断もなかなかなるほどなと。お仕事映画でしたね。

 

4/25 JUNK HEAD@アップリンク渋谷

全編手作りストップモーション、撮影、脚本、声優、監督、全部俺! という怪作。エンドロールで同じ人の名前がズラーって流れていくところはちょっと笑う。キービジュアルはダークな雰囲気があるけれど、実際は可愛げのあるコメディタッチでとっつきやすいです。

学生時代から何回も行ったアップリンク渋谷。これが最後の鑑賞となりました。今までありがとう。

 

5/8 名探偵コナン緋色の弾丸@キネカ大森

前から行こう行こうと思っていたけれど行けず、やっと来れた劇場。スクリーンは3つあって、作品選びのセンスがいい。

しばらく見ないうちに小室ファミリーとかいろいろ知らないキャラクターがたくさん出てきていてついていけないところがありました。犯人逮捕のための「弾丸」も、いやそんなうまくいくか⁉︎ という突っ込みをせざるを得ませんでした。

 

5/9 あのこは貴族@キネカ大森

生まれ育った環境で人は決まってしまうのか…悲しきさだめ。まあたしかに、自分と近い環境で育った人とつるみますよね、人は。でも、違う環境にいた人ともまあそれなりに仲良くなることもできるし、反対に、同じような「上流階級」にくくられる人たちのなかでさえも深い断絶があることもある、ということを描いた映画でした。

 

5/9 SNS 少女たちの10日間@キネカ大森

女性に少女のふりをしてSNSに自撮りなどを投稿してもらうというチェコのドキュメンタリー映画。少女のアカウントに群がる男性たちを描いています。最後のほうでは、そのなかの一人の男性に撮影隊が接触する様子が描かれますが、一方的に怒りをぶつけて溜飲を下げるだけで、事態の原因を探ろうというジャーナリスティックな問題意識を感じませんでした。女性を「おとり」にここまでやってるのに、相手側に対する取材が浅いというか。

 

5/15 街の上で@下北沢トリウッド

トリウッド、いつぶりだろう…学生時代に友達と言の葉の庭か何かを見に行った時以来か。下北沢が舞台の群像劇。全チャプターがブクマ案件、4人のヒロインの瑞々しい演技、やや屈折したキャラクターも見逃せません。今年最高傑作です。

とにかく行間を読ませる映像。メンソのタバコになぜ火をつけないままだったのか? とか。本筋とは関係ないエピソード、登場人物もサイコー。それら全体を通して下北沢という街の息遣いをトレースしているよう。本当にいそうですもん、あのクセの強い警官とか。主人公のアオを演じる若葉竜也、めちゃくちゃ上手い。あのダルッとした喋り方、間の取り方。どうやったら狙ってあんな演技できるんだろう。

魅力的なシーンは無数にあるけれど、とくにイハと家で喋るところはいいようのない多幸感が溢れました。なんだろう、あの距離感、あの雰囲気。で、明日あの布何に使うんだろう。「荒川さんのシーン、使われてましたよ」。イハはなぜ嘘をついたのか。いろいろ考えたくなります。そしてエンディングの切れ方もよかったですね〜。急に終わった感じもしなくはなかったけど、でもあの終わり方がよかった。アオ、なにも得てないしなにも成長してないんだけど、でも、この映画の良さってなんだろう、やっぱ人間を描いてるってところなんですよね。それも何気ない日常に滲み出る人間性みたいなところを描いているというところ。って言葉にするとなんとも陳腐ですが…。

そうそう、ユキとマスターが一緒に歩いてるところに出くわして、そこに「3人目の彼氏」がチャリで登場するあたりは最高でした。劇場が沸いた。ほんといいんですよねえ、あの瞬間。意図せずしてオーディエンスの感情が同期「してしまった」瞬間。これがあるから映画はやめられない。ユキが坂道駆け上がって途中で自転車乗ろうと試みるが勾配急で諦めて押して登るところ、爆笑しました。

閉幕後、一目散にパンフレット購入。例のラーメン屋に行ってみたらすごい行列ができていました。

 

5/22 くれなずめ@ヒューマントラストシネマ渋谷

男子校ノリがずっと展開される映画。成田凌という俳優が個人的に苦手だったのですが、こういう柔らかい雰囲気も演じられるんだ、とちょっと見直しました。

 

10/5 シャン・チー@Tジョイ品川

くれなずめから大分空いたな…まあ、デルタ株とか色々あったので。アクションがカッコよかった! とくに最初のサンフランシスコのバス内でパルクール的に躍動しながら敵を倒していくところは見どころ。逆に言えばそのあとはあんまり…でもエンディング曲がめちゃくちゃチルでおしゃれで最高だった。ぼくのApple Musicの解析によれば、今年の再生回数2位らしい。

 

10/5 007 No Time to Die @Tジョイ品川

長い! 疲れた。まあ、アクションはカッコよかった。でも敵もあんまり魅力的ではないし、スペクターみたいな「巨悪に立ち向かう正義」という構図が作れないためにテンション上がらないという問題点がありますよね、と会社の後輩の言。

 

11/20 アイの歌声を聞かせて@ユナイテッドシネマ豊洲

「イヴの時間」の吉浦康裕監督のアニメ映画。なんだろうな…面白いんだけど、胸に刺さるような感じもなかった…ぼくが歳をとったからか? 社会の激流のなかで角が研磨されて引っ掛からなくなってしまったのか? かつてのぼくであれば、こういう映画に何か深いものを感じ、読み取り、語っていたでしょう、確実に。そういうものが惹起されないことに一抹の悲しさを覚えました。

 

11/27 エターナルズ@新宿ピカデリー

後輩はエターナルズを「マイノリティ・アベンジャーズ」と呼び、セレスティアルズはなぜ意図的にこうしたいろんな「特徴」のあるヒーローたちを作り出したのか?(もっとメンタル面身体面で完璧な人をつくればよいのでは?)という疑問を抱いていました。ぼくもまったく同じことを思っていたのですが、それ以上に、彼らが長い年月のなかで、傷つけあったり、慰めあったりして生きていくその描写が美しくて感動しました。目ビームの彼が主人公に目ビームしようとするけど昔仲良くしていた時のことを思い出してできない…とか。これまでのマーベルとは違う感じですよね。繊細な。

 

11/27 マリグナント@TOHO新宿

まずオープニングの、いろんな映像や音声がつなぎ合わされるカットがかっこいい。これから起きる出来事を暗示しているんですよね。実験日誌のセンテンスが徐々に危険な内容になっていったりとか…で、ストーリーもアクションもめちゃくちゃ練られている。そうか、だからあの時…と、伏線も周到に張られている。よく作られているホラー。こういうのを映画館で見たいですよね。

 

12/12 ラストナイト・イン・ソーホー@ホワイトシネクイント

新生渋谷パルコの最上階にあるシアターで鑑賞。大好きなエドガーライトの最新作は、60年代ロンドンで商業主義の男性に翻弄される女性を描く意欲作。鏡越しに何かを見たり、話したりといったシーンに溢れていて、単純に映画の表現技法としてレベルが高いなと思いますし、また鏡越しにそれを見るということ自体が何かのメタファーなのではないか、と読み取ることのできる深さを持っているように思います。視覚的にも楽しめ、もちろんストーリーもスリリングで引き込まれました。なお、主人公と似たような経験をした人にとってはややショッキングな描写が多いかもなと思いました。

 

12/18 パーフェクト・ケア@新宿ピカデリー

最初は面白かったし、ある程度年行った女性のシスターフッドものという観点でも見る理由があると思っていたんですが…そもそも主人公の悪行がただひたすらに私利私欲のためでしかないことに辟易してしまいました。医師と組んで高齢者に「自立不可能」の診断を下し、施設に放り込み、金をもらう…一応法には触れない範囲でやっているというのが生々しくて怖い。さらに、中盤明らかになる「敵」に立ち向かうのも、単なる見栄張りでしかなく、それに勝つことで誰かが救われるとか「ではない」ところが、この映画の本質的な無意味さを表しています。見たあとなんも残んねー!

 

12/26 プロミシング・ヤング・ウーマン@池袋新文芸坐

いや〜いつぶり? 新文芸坐来るの。学生の時以来か。「SNS」と二本立て上映だったんですが、あっちは見たのでこちらだけ見ました。鑑賞中はずっとナイフを突きつけられているような感じでした。「傍観者」ですら当事者であると定義づけ、振る舞いの是非を問う、誰にも「他人事」にさせないという監督の強烈な問題意識を感じました。でも決して説教臭くなく、復讐もの、エンタメとして面白い。結末もいろいろ考えさせられる。ライムスター宇多丸シネマランキング2021年1位の理由がわかりました。

 

12/29 食人族/悪魔のいけにえ@池袋新文芸坐

また来たぜ池袋新文芸坐。ほぼ満席という人気回。食人族は初見。グロテスクな映像、スナッフフィルムに興味がある人は見ればいいと思います。別にこれを見ることでなにかトラウマが植え付けられたとかはないですが、他方、これを見たことで何か得たものがあるわけでもなく…畢竟、「あの問題作、一応昔見たよ」というトロフィーを獲得することができたなという思いだけがありましたね。

悪魔のいけにえは、新文芸坐の音響のすごさを思い知りました。いろいろありますが、とくに最後、レザーフェイスが夕景にチェンソーを振り回すシーンはかなり迫力がありました。めっちゃ音うるさい。エンドロールに入る前、「Hoo!」って叫んで感動を露わにしている人もいました。

 

12/30 ドライブ・マイ・カー@キネマ旬報シアター

常磐線で千葉県・柏へ初上陸。こんな劇場があるんですね。見なきゃとは思いながら見過ごして、近場ではここしかやっていませんでした。味わい深い映画でした。3時間近くありましたがぼくにしてはめずらしく一睡もしませんでした。全てのシーンの描写に意味がありました。セリフの内容というよりも、演技や、カメラの撮影にうまさがありました。全編にわたり、台本の朗読みたいな奇妙さや不自然さがありましたが、それが何かを企図しているように思いました。…劇中劇のほうがリアルっぽくて、映画のほうが作り物っぽい。そんな転倒が起きていました。

 

以上!  来年もいろいろ映画館で映画を見たいですね。