ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

ドント式

2021-10-06 08:23:05 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「ドント式」9月30日
 『自民総裁に岸田氏』という見出しの記事が掲載されました。菅首相総裁選不出馬を受け、4氏で争われた総裁選の結果を報じる記事です。そこに次のような数値が掲載されていました。第1回投票の『岸田文雄 110(29%)  河野太郎 169(44%)』。党員・党友票の結果を表す数値です。また、決選投票の『岸田文雄 8(17%)  河野太郎 39(83%)』という数値の記載もありました。都道府県票を表す数値です。
 しかし、この2種類の数値は、実は自民党の党員・党友が総裁選に投票した票という同じものを示したものなのです。前者は、各候補への投票総数をドント式で計算し直したもの、後者は、都道府県単位で2人の内一票でも多かった方を勝ちとし、勝った都道府県の数を示したものです。
 一つしかない党員・党友の投票結果が、異なる処理をすることで全く違う印象を与えます。後者では、5倍近い差をつけて河野氏の圧勝となりますが、前者ならば、差は1.5倍にしかなりません。
 私は自民党の総裁選について語ろうというのではありません。どのような処理をするかによって、一つに事実が異なる意味、イメージで捉えられるということについて述べたいのです。
 教員は、子供を評価します。説明責任が問われるようになったこともあり、どのような事実に基づいて評価したのか、基準を明確にすることが求められるようになっています。子供や保護者から、どうしてこういう評価なのか納得がいかない、と申し出があったとき、理路整然と説明することができなければ、いい加減に感覚で評価していると非難されてしまうのです。
 ですから、今はほとんどの教員が、ペーパーテストの点数、授業中の態度、提出された作品やノートの内容などを記録紙数値化して、説明できるように備えています。しかし、いくら客観性をもたせようとしても、そこには自民党総裁選における党員・党友票の扱いのような問題が生じてしまうのです。
 最も客観性があると思われているペーパーテストの点数についても、一つの単元終了後に行うテストと途中で行う小テストの配分比率をどうするか、学期単位の評価において8時間かけた単元と12時間かけた単元の評価反映率は1対1か、1対1.5か、という問題が生じます。条件をどう設定するかによって、総合的な評定は違ってきてしまうのです。
 しかも、自民党総裁選における党員・党友票の扱いは、その是非はどうあれ事前に周知されていますが、教員が行う評価において、事前に今学期の○○科の評価は~と細かく説明されることはありません。それだけに、不満が生じる可能性が高いのです。幸いなことに、今、特に小学校では子供や保護者が教員の評価に不満や疑念をもち、学校や教委に説明責任を果たすように求めるという動きはほとんどありません。その根底には、まだかすかに残る学校や教員への信頼の残滓のようなものがあると思われますが、それもやがてなくなるでしょう。そのときに備えて、説明可能で教員負担が重くなり過ぎない評価の在り方について、研究を進めておくべきだと考えます。

 

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