Smokestack Lightning/Mike Harrison | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 Mike HarrisonThe V.I.P.'sSpooky ToothのLead Singerとして活躍した大好きなMusician。英国が誇るBlue-Eyed Soul Singerの一人だけど、この人も残念ながら未だに過小評価されている。英国北西部に位置するCumbriaを形成するCumberlandにある歴史のある街Carlisleで生まれたHarrison。Scotlandとの国境にあるCarlisleはRomaに支配されるまではWales語を話す人々が定住し続けたという。そんなCarlisleを拠点としてThe Ramrodsを結成し活動していたHarrisonは学友のベーシストGreg Ridleyが加入したのを機にThe V.I.P.'sと改名してドラムスのMike KellieらとModなバンドとして欧州を中心に人気を集めるようになる。バンドには、あのKeith Emmersonが在籍していたことでも知られている。ギターのLuther Grosvenorが加入し、バンド名をArtと再び改名し67年に『Supernatural Fairy Tales』をリリースしている。同年に米国人鍵盤奏者Gary Wrightが参加すると、ご存知Spooky Toothとして始動。2ndアルバムとなる名盤『Spooky Two』を残すなど英国の70年代初頭を代表する名バンドのひとつとして名を残している。Toothは何度かの解散再結成度重なるメンバー・チェンジにより実力者が集まったバンドのわりに2ndアルバム以外に傑作を残すことはできなかった。70年にToothが最初の解散後、Harrisonは71年ソロとしての活動を開始している。71年Island Recordsから自らのPriduceで、旧知のメンバーをバックに迎えた『Mike Harrison』をリリース、これが地味ながら英国情緒が漂う実に渋いスルメ味の作品であったが、本作はそれに続く2ndアルバムとなる。ProduceはHarrisonとChris Blackwell。なんとMuscle Shoals Sound Studiosで録音されたこれまた激渋のBritish Swampに仕上がっている。Muscle Shoals Rhythm SectionをバックにHarrisonのSoulfulなVocalが堪能できる。

 

 『Smokestack Lightning』はMike Harrison72年にリリースしたアルバム。Barry Beckettの鍵盤にRoger Hawkinsのドラムス、David HoodのベースにJimmy JohnsonのギターというThe Swampersに加えてThe Fame Gangの鍵盤奏者Clayton IveyとTrumpet奏者Harrison Calloway、Sax奏者Harvey Thompson、Baritone SaxのRonald Eades(以上いずれもMuscle Shoals Rhythm Sectionのメンバーでもある)、さらにギターにPete CarrWayne Perkins、Muscle Shoals HornsのLeader Charles RoseのTromboneという豪華メンツである。盟友Luther Grosvenorもアコギで参加しているのが嬉しい。

アルバム1曲目は英国人のS.S.W. Jimmy Stevens作の“Tears”。エレピとHammondをバックにHarrisonが情感タップリに歌い上げる。大好きなWayne PerkinsSlideが泣きのフレーズをまじえて最高、途中から登場するStringsが気持ちベタかなという気がしないでもないけれど、コレはコレで素直に盛り上がってしまう。

続いてもJimmy Stevens作の“Paid My Dues”。2曲ともMaurice GibbがProduceしたStevens唯一のアルバム『Don't Freak Me Out』に収録されている。Popな味わいの曲で、こちらもStringsが情緒過多であるのが気になるが、Harrisonのこういう軽やかな歌いっぷりも悪くはない。

冒頭のエレピWah Wah Guitaarから待ってましたのFats Dominoの名曲“What A Price”。心地良いハチロクのBeatにのってHarrisonのVocalもSoulfulに歌い上げる。Muscle Shoals Hornsもご機嫌で、ここぞという時に登場するSaxソロもイイ感じ。これは最高っす。

Joe Texの“Wanna Be Free”もタメのきいたBritish Swampな味わいがたまらない。

FunkyにウネリりまくるHarrisonとLuther Grosvenor共作の“Turning Over”はアルバム一番のお気に入り。カッコ良すぎ。

アルバム最後をシメるのはHowlin' Wolf作のタイトル曲“Smokestack Lightning”。12分越えの大作ながら英国的な翳りを感じさせる激渋の仕上がり

(Hit-C Fiore)