ジャスト日本です。
有名無名問わず、さまざまな分野から私、ジャスト日本が「この人の話を聞きたい」と強く思う個人的に気になるプロレス好きの方に、プロレスをテーマに色々とお聞きするインタビュー企画「私とプロレス」。
今回のゲストは、プロレス団体GLEAT代表であり、リデットエンターテインメント社長・鈴木裕之さんです。
LIDET UWF Ver.4
開場17:30開始18:30
ent.lidet.co.jp/event/
#GLEAT #LIDETUWF #LIDET
プロレスとの出逢い、初めて好きになったプロレスラー、プロレス業界に関わる以前の経歴、プロレス業界に関わる経緯、SANADA(真田聖也)選手をマネージメントしたした時期の話、プロレスリングノアのオーナー企業になった経緯、ノア時代の苦悩、田村潔司選手が鈴木社長にプレゼンした時の話、GLEAT旗揚げ、LIDET UWF、GLEATの今後について…。
鈴木さんから興味深い話が次々と飛び出しました。
私とプロレス 鈴木裕之さんの場合「第1回 私がプロレス業界に関わった理由」
私とプロレス 鈴木裕之さんの場合「第2回 『脱・三沢光晴』を掲げたノア時代とGLEAT旗揚げ」
──鈴木さんが創設した新団体・GLEATでは旗揚げ発表後にYouTube公式チャンネルで「GLEAT実験マッチ」と題して道場でのプロレスやUWFルールの試合を定期的に動画配信されました。これはどういった意図があったのですか?
鈴木さん 実験マッチは田村潔司エグゼクティブディレクターの提案です。GLEATを創設した2020年はまだコロナ禍であり、大会スケジュールが組みづらい状態で、それでも2021年7月1日の旗揚げ大会まで何かしらのプロモーションと所属選手に経験を積ませることが大事だったので、主にメジャークラスの大会を経験された他団体またはフリーの選手に参戦していただき、伊藤貴則と渡辺壮馬の成長過程を実験マッチと称してYouTube配信させていただきました。
──伊藤選手と渡辺選手はGLEATに来てかなり変わりましたよね。伊藤選手は体重を絞って精悍な感じに変貌しましたし、格闘技経験がなかった渡辺選手に至ってはキックボクシングの試合にもチャレンジしましたから。プロレスラーとしての太い軸がGLEATに入ってから出来たような印象があります。
鈴木さん そうですね。私としては当時の所属選手4人の中でも伊藤貴則、渡辺壮馬にGLEATのエースとして活躍してほしいと伝えていたので自覚も強くあったでしょうし、田村潔司エグゼクティブの教えも力になったと思います。
当初、田中稔とCIMAは相容れない関係と強く感じていた
──その後、プロレスリングHEAT-UPから飯塚優選手が移籍したり、田中稔選手や松井大二郎選手が入団されましたね。
鈴木さん はい。あと実験マッチしている頃に#STRONGHEARTSがGLEATに参戦してくれて、入団するまでの関係を構築できたのは大きかったですね。
──#STRONGHEARTSは国内と国外の団体を転戦していて、CIMA選手はAEWにも参戦していたのですが、コロナ禍があって海外に行きにくいという状況でしたね。
鈴木さん 恐らくコロナが解決すれば#STRONGHEARTSとしてアメリカはもちろん世界中で活動と活躍を予定していたと思います。でも実験マッチで縁があって最終的には入団をしてくれて、本旗揚げ前のGLEATに大きな注目と期待を得るきっかけとなってくれました。
──彼らの入団は驚きました。#STRONGHEARTSがいればプロレス部門(G PROWRESTLING)は確立できますからね。
鈴木さん そうですね。#STRONGHEARTSは「プロレスで人の心を掴む」スペシャリストです。その対極として田中稔は「UWFをやりたい」と言ってくれたので、選手兼任でUWFルールテクニカルオフィサーに就任していただきました。G PROWRESTLINGはCIMA、LIDET UWFは田中稔が責任者として仕切ることになるのですが、当初、田中稔とCIMAは相容れない関係と強く感じておりました。
──そうなんですか!イデオロギーがぶつかっているのですね。
鈴木さん 日本プロレス界で一時代を築いてきた選手同士リスペクトはありながら、育ってきた環境と教育は全く異なるのでイデオロギーの対峙は当然のことでした。その二人にカズ・ハヤシがスーパーバランサーとして大きな力を発揮してくれました。カズ・ハヤシがいなかったら早い段階で破裂していたかも知れません。
──カズ選手、CIMA選手、田中選手は日本ジュニアヘビー級戦線におけるレジェンドレスラーですからね。
鈴木さん 確か3人ともタイトル記録保持者でしたね。カズ・ハヤシが全日本の世界ジュニアヘビー王座最多連続防衛保持者(17回)で、CIMAがドラゴンゲートのオープン・ザ・ドリームゲートの記録保存者(最多連続防衛回数:15回、最多通算防衛回数、最長連続保持期間:574日、最長通算保持期間:1056日 )で、そして田中稔は新日本・全日本・ノアのメジャー団体ジュニア王座グランドスラムを達成していて、IWGP Jr.最多連続防衛保持者(11回/覆面レスラー「ヒート」時代)という凄い記録を持っていると本旗揚げ後に知りました。
──実績が桁違いの皆さんですね!
鈴木さん 三人には各々に強烈な実績と個性、生まれ育った団体の文化があるので、カズ・ハヤシがバランスを取ってGLEATらしさを構築してくれているところです。
──カズ選手は社長の経験があるのが大きいですよね。
鈴木さん カズ・ハヤシは実績が示す通りプロレスラーとしても超一流ですが、プロレス団体の社長経験もあり、私のことを力強くサポートしてくれます。
ハードヒットとの全面対抗戦は私達フロント側すら大会をきちんと最後まで大会を成立させられるのかと緊張感と殺伐感を体験させていただきました
──素晴らしいですね。GLEATは2020年10月15日・後楽園ホールでプレ旗揚げ戦、2021年5月26日に新宿フェイスで『G PROWRESTLING Ver.0』、2021年6月9日に新宿フェイスで『LIDET UWF Ver.0』を開催していきます。特に『LIDET UWF Ver.0』では「現在進行形のU」を標榜するハードヒットとの全面対抗戦が行われました。ハードヒットとの対抗戦についてはどのようにご覧になられましたか?
鈴木さん LIDET UWFをやるにあたって、私はハードヒットの大会をはじめて観戦に行きました。すると「LIDET UWFで考えているスタイルを既にやっている団体があった」「しかもUWFと田村潔司という名前にかなりシビアだぞ」というのが率直な感想でした。
──ハードヒットのUWFに対する執着心は凄まじいですよ。
鈴木さん なぜかUWFではなくハードヒットと名乗り、「現在進行形のU」と主宰の佐藤光留選手を筆頭に選手たちは口を揃えて言ってました。そして赤いパンツの頑固者と言われる田村潔司エグゼクティブに剝き出しの闘志を感じさせる白いパンツの頑固者和田拓也選手にも衝撃を受けました。そうなるとハードヒットとの対戦は絶対に避けて通れないので、ならば一発目の興行で決着をつけようと決断にいたりました。ハードヒットには自分たちがUWFを守ってきたという愛とプライドがあって、LIDET UWFも中途半端な気持ちではやっていないことを証明するためにも全面対抗戦を実現させて、勝負を決する道を選びました。昭和のプロレスって緊張感と殺伐感に溢れた試合が多かったじゃないですか。その一方で平成後期になって見やすい試合が多くなっている印象があります。
──確かにそうですね。
鈴木さん ハードヒットとの全面対抗戦は私達フロント側すら大会をきちんと最後まで大会を成立させられるのかと緊張感と殺伐感を一発目の大会で体験させていただきました。
──個人的にはLIDET UWF VS ハードヒットは最高の対抗戦でした。ものすごい刺激物であり、劇薬だったと思います。
鈴木さん ありがとうございます。ハードヒットの選手は本当にUWF愛が凄いです。伊藤と渡辺はUWFと言われても、田村潔司という凄い人に教わっていることもピンときてない印象でした。伊藤はPRIDEが好きだったので田村エグゼクティブの試合は見たことがあるかもしれませんが、渡辺に関してはハッスルがプロレスを好きになるきっかけでしたから・・・
──それは知りませんでした。
鈴木さん ハードヒットとの対抗戦で「これからの道は簡単ではない」と伊藤と渡辺はよく理解してくれたと思います。
──「生半可な気持ちでUWFを名乗らないほうがいい」ということをハードヒットが教えてくれたような気がします。
鈴木さん 色々と現実を認識した大会が『LIDET UWF Ver.0』だったかなとは思います。
UWFはかっこいいだけでもダメだし、強いだけでもダメで、両方を備えているべき
──これは持論なんですけど、UWFはプロレスと格闘技の間なんですよ。LIDET UWFとハードヒットはUWFスタイルを標榜しながら、目指すものが違っていて、プロレスと格闘技の配合具合がかなり異なっているんです。LIDET UWFはUWFインターナショナルに近くてプロレス7.5割、格闘技2.5割。ハードヒットはパンクラスに近くてプロレス5割、格闘技5割という印象があって、配合の違いが試合になった顕著に現れるんですよ。だからハードヒットは「相手の光を消す」というのがやり方ですので、LIDET UWFの強さが目立ちにくい傾向があるのかなと思います。
鈴木さん おっしゃる通りです。LIDET UWFはファッショナブルでスター性のある選手を重視していて、ハードヒットは泥臭くても強い実力者が主に参戦していると感じます。第2次UWFはこれらをミックスアップした選手たちがやっていたから凄いです。船木誠勝選手なんてその象徴じゃないですか。
──確かにそうですね!
鈴木さん UWFはかっこいいだけでもダメだし、強いだけでもダメで、両方を備えているべきと考えています。
──LIDET UWFのプロモーション戦略とハードヒットの強さが重なると凄いUWFが生まれそうだなと感じました。
鈴木さん あとハードヒットとの闘いでは、LIDET UWFの選手は佐藤光留選手から得たものや授かったものがたくさんあると思います。佐藤光留VS青木真也(2023年4月12日・後楽園ホール/LIDET UWF初代王者決定トーナメント準決勝)は本当に「ザ・UWF」みたいな緊張感が充満した試合でしたから。「LIDET UWFはこうあるべきだ」を一番体現しているのはハードヒットの城主である佐藤選手かも知れません。
──それは興味深い話ですね。佐藤選手はなんだかんだ言って鈴木みのる選手のイズムがあるんですね。色々と口撃するけど、最終的にはその団体にとって有益になるものをきちんと提供している印象があります。
鈴木さん その通りです。
内部充実を図っていく事がGLEATにとって一番の課題
──ありがとうございます。次の話題に移りますが、鈴木さんはGLEATという団体はプロレス界でどのような立ち位置にあるとお考えですか?
鈴木さん プレ旗揚げ戦(2020年10月15日・後楽園ホール大会)、旗揚げ戦(2021年7月1日・TDCホール大会)もそうですが、プロレス界のスター選手が集結して、GLEATの所属選手がそこに挑んでいくという闘いが主軸だったと思います。旗揚げ戦は新日本のSHO選手がメインイベントのUWFルールで参戦して、伊藤と対戦しました。それが週刊プロレスの表紙を飾りましたが、団体が旗揚げ戦してからしばらくはスター選手のゲスト参戦で「次、誰が出るのだろう」と興味を引かせてきたのが初期GLEATでしたね。
──割と驚くゲスト参戦の選手が多い印象がありましたね。
鈴木さん それが2023年には所属選手19人、フルグレイトの石田凱士も入れると20人ということで、所属選手の数が日本のプロレス団体では割と多い団体になってきました。最初はスペシャルゲストの参戦が軸でしたが、今は、タイトルマッチを主軸にして内部充実を図り、所属選手でメインイベントを締めれる大会が増えてきている状況ですね。
──ビッグマッチ『GLEAT ver.MEGA』(2023年8月4日・両国国技館大会)で行われたシングルのタイトル戦は、T-Hawk VS 田村ハヤト(G-REXタイトルマッチ)の所属選手同士でしたよね。
鈴木さん 両国国技館大会のG-REX戦だけ所属選手2人の試合で、あとの試合は対外敵の試合が軸となりました。これからも内部充実を図っていく事がGLEATにとって一番の課題になると思います。
予定外の開催だったGLEAT両国国技館大会
──『GLEAT ver.MEGA』はGLEATにとって旗揚げ以後、収容人数最高となるビッグマッチでした。この大会が決まった経緯について教えてください。
鈴木さん これは全く予定していなかったビッグマッチでしたが、新日本プロレスさんを退団された飯伏幸太選手にGLEATの課題を相談させていただいたのが事の始まりです。
──そうだったんですね。
鈴木さん TDCホールで1200~1300人の観客動員数を記録したのですが、2000~3000人という数字が見えないことを飯伏選手に相談すると「だったら両国国技館大会をやったらいいですよ。」と言ってくれました。飯伏選手の様々なお話しすべてに熱があり理にかなっており、両国国技館大会開催を決心する事ができました。
──ちゃんと両国国技館のスケジュールも空いてたんですね。
鈴木さん GLEATが両国国技館で平日に開催するにはまだ力不足と考え、担当者に幾度も両国国技館に土日祝日で日程の空きがあるのかを確認してもらいました。結局、土日で空きがなくて最終的に2023年8月4日の金曜日に入れてもらいました。7月12日にTDCホールで2周年記念大会があって、8月23日に後楽園ホール大会がある中でしたが、結果、それでもやって良かった思える大会になりました。
──実際に両国国技館大会をやっていかがでしたか?
鈴木さん 2500人のお客様が来場してくださり、2000人を超えたのが初めてだったのでいい経験になりました。目標は3000人だったので数字は届きませんでしたが、2500人はいったので及第点です。あとYouTube配信の再生回数が5万回くらいのアッパーだったのですが、両国国技館大会は10万回再生をあっという間に超えたんです。年末の12月30日のTDCホール大会は過去最高の1500人を超えましたし、2023年は前年対比で観客動員数を大きく上げることに成功できました。飯伏選手をはじめスーパースター選手にも多数ご参戦いただけたことはもちろん、ファン皆様、所属選手や社員、関わって下さった皆様の力でGLEATをより多くの方に知っていただく事ができたのが両国国技館大会でした。
──素晴らしいですね!思えば飯伏選手はDDTがまだ後楽園ホール大会を集客に苦戦していた頃に両国国技館大会を開催するという大博打を打って、興行が大成功する光景を当事者として目のあたりにしているから、その経験に基づいて、鈴木さんに両国国技館大会を進言したんでしょうね。
鈴木さん おっしゃる通りで、その話をされてましたよ。飯伏選手が「両国国技館大会を経験すると、こんなに大きな世界があるんだと知りましたよ」と言ってました。
──先ほど鈴木さんは2007年の棚橋弘至VS後藤洋央紀の話をされていましたけど、この大会の観客動員の実数は2000人弱なんです。
鈴木さん ええええ!!
──棚橋選手の著書『棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか』(飛鳥新社)には「じつを言えば、棚橋VS後藤のIWGPヘビー級タイトルマッチをメインイベントにしたこのときの両国大会は集客に苦しみ、実質2000人ちょっとしかお客さんが入っていなかった。だけど、大会は異常に盛り上がった。とくに、メインの棚橋VS後藤がものすごい盛り上がりを見せて、観戦していた東京ダイナマイトのハチミツ二郎さんが『平成新日本のベストバウトだ!』と絶賛してくれた。プロレスファンのあいだでは『新日本の両国大会がすごく盛り上がった』と評判になったという」と書かれているんですよ。
鈴木さん たとえ集客に苦戦したビッグマッチだったとしても、一大会1試合で流れが変わることがあるんです。棚橋VS後藤の会場での熱狂は凄まじかったですから。
──2007年の新日本は後楽園ホール大会が顧客満足度が高くて素晴らしかったんです。後楽園ホール大会の熱気を両国国技館大会に持ち込むというムードがあったように感じました。
鈴木さん 棚橋VS後藤の熱狂は1990年代の四天王プロレスを見ているような印象を受けました。
GLEATが仕掛けていきたい戦略とは?
──それはあるかもしれませんね。ではプロレス界で生き抜くためにGLEATが仕掛けていきたい戦略はありますか?
鈴木さん ひとつひとつの興行を「次また見たい」と思ってもらえるような大会運営を継続するだけですね。今のプロレス界は選手よりも一部のファンの方が凶暴になっているなという感覚があって、選手に対して上からものを言う状態が横行していると感じます。それはプロレスラーと団体側の責任でもあって、私はプロレスラーは超人であれ、超人が集う闘いがプロレスであるべきだと考えているんですけど、人を超えた存在であるべきプロレスラーが神棚から降りてきている傾向があると感じます。
──同感です!
鈴木さん 新日本の選手はまだ神棚の上にいて、スターダムの選手もそこに近しいスタンスかなと。でもGLEATも含めたその他の団体の選手はファンと横にならんでしまって近い関係になってしまっているんです。超人ではなく人でしか見れない状態からどうやって神棚に上げることができるのかというのがありますね。
──そのためのブランディングやナビゲーションは重要ですね。
鈴木さん そうですね。AKB48はスターを夢みる人たちが段々と神棚に上がっていくドラマだと思っていて、最終的には握手したくてもできない領域に持って行ったんです。だから今後は「会えないけど、会いたいと思わせる」「選手を神棚に上げていくこと」がGLEATにとってステップアップするために必要な戦略かなと思います。あとはエンターテインメントであることが大事で、変に格闘技面しないこと。GLEATというエンターテインメントが何をお客さんに届けたいのかですね。
──LIDET UWFという格闘プロレスをやりながら、エンターテインメントの根本は忘れないということですか?
鈴木さん 私はLIDET UWFをプロレスという括りをしていて、GLEAT MMAは格闘技なんです。それを『GLEAT VER.MEGA』だとG PROWRESTLING、LIDET UWFはプロレス、GLEAT MMAは格闘技と2種三つのブランドを観戦できます。GLEATのナンバーシリーズではG PROWRESTLINGとLIDET UWFの二つのプロレスが観戦できる形にしています。あと、怪我や不慮の事故が発生すると親が子供に見せられなくなるじゃないですか。
──確かにそうですね。
鈴木さん リング上で凄い闘いが展開されることは重要なことですが、いかに大怪我をさせずに最後まで試合を成立させることがより重要だと思います。
──GLEATの医療体制はどうなのですか?
鈴木さん 各大会は極力、ドクターを呼ぶようにしていて、ビッグマッチは必ずドクターが来場しています。どうしてもドクターがいない場合は緊急対応してくれる病院を下調べしておいて、そこにすぐご相談させてもらうような体制にしています。あとは試合会場と連携して対応していくという形でスタッフ間浸透させるようにしています。
鈴木さんが選ぶプロレス名勝負
──ありがとうございます。では鈴木さんが選ぶプロレス名勝負を3試合、選んでください。
鈴木さん 先ほどから言ってますが、1試合目は棚橋弘至VS後藤洋央紀(新日本・2007年11月11日・両国国技館大会/IWGPヘビー級選手権試合)です。
──実は棚橋選手も自身のベストバウトとして後藤戦は上げているんですよ。
鈴木さん そうなんですね。あとは船木誠勝VS鈴木みのる(パンクラス・1994年10月15日両国国技館大会)は名勝負でした。
──確かに素晴らしい試合でした!
鈴木さん それから三沢光晴VS川田利明なんですよ。どの時期とは言えないんですけど、シングルマッチでもタッグマッチでも三沢さんと川田さんの絡みが強烈な印象で覚えています。
──鈴木さんから見て三沢VS川田はどのような試合に映ってましたか?
鈴木さん 三沢VS川田は愛と憎悪が入り混じった試合でした。お互い愛し合ってんだけど憎しみ合いもしていて、それがどっちも愛と憎悪が中途半端じゃなくて、フルボルテージでぶつかっている感じがしました。
──同感です。
鈴木さん 川田さんには三沢さんという超えられない壁がずっとまとわりついていて、三沢さんには川田さんを超えさせない壁であり続けたわけで、三沢VS川田は唯一無二の特別な決闘で、感動というより胸が苦しくなるような試合で、人として生きていく上で必要なものを与えてくれたのかなと思っています。そういう意味では人間賛歌なのかもしれません。
GLEATを自立自走させることが大事。そのためには選手を増やしていくことだけではなく、削ることもあるかもしれない
──ありがとうございます。では鈴木さんの今後についてお聞かせください。
鈴木さん まずはGLEATを自立自走させることが大事ですね。みんなよくやってくれているので収益性は拡大してますけど、まだ持ち出しはありますから。あと2年で自立自走できるようにしていきたいですね。そのためには選手を増やしていくことだけではなく、削ることもあるかもしれません。規模感は小さくなってはいけないと思いますけど、ただ試合をしている人が残っていくというのではなく、本人はもちろんGLEATが人気を得るための強烈な努力を継続している選手だけが団体に残るべきだと考えます。それができない選手には団体を去ってもらうしかありません。今は団体を残る人が正義で、辞めてもダメだし、辞めさせてもダメという風潮があるじゃないですか。
──確かにそうですね。
鈴木さん 私は選手にも各々に合った団体があると考えます。まだGLEATに上がっていない選手の中に適性がある方もいるかもしれませんし、逆にGLEATに上がっているけど他の団体の方が合っている選手もいるかもしれません。限りある時間でそこの無駄なやり取りはあってはならないので、GLEATに根を張れる選手たちだけ団体に残ってもらえる見極めがこの1年間なのかなと考えています。日本プロレス界の過去約70年で様々な団体から選手が集まっている団体って崩壊しているところがほとんどじゃないですか。
──その通りです。外様が集まった団体はスタイルが違う者がくっついていることが多くて、まとまりがなくなって最終的に内ゲバになって崩壊していくという印象があります。
鈴木さん 生き残っている団体は生え抜きの選手の割合が多いとか、生え抜きのスーパースターがいるというのが大きな要因の一つであると考えます。外様が悪いわけではないんですが、「他がある」とお考えならばGLEATからはお引き取りいただくしかありません。他から参戦した選手でも「GLEATにたどり着くために生きてきた」という選手を生み出し、歓迎していくことが今後の課題ですね。
──「GLEATでのしあがっていくんだ!」という信念を持つ選手は生き残っていくということですね。
鈴木さん そうですね。口だけじゃなくて、行動も含めてGLEATに骨を埋めることができる選手を輩出できるかです。そのためにはGLEAT版棚橋弘至選手を生み出すことが大事ですね。口だけ番長じゃなくて、周囲が納得せざるを得ない行動や試合をやってきたのが棚橋選手で、目標を語って責任を取って、そこに向かっていって結果的に逆算型で叶えていくのが棚橋選手の凄さです。日本のプロレス界は棚橋弘至選手がいてよかったですよ。ジャイアント馬場さん、アントニオ猪木さんに継ぐ偉大な存在ですよ。
──棚橋選手は鈴木さんの発言を知ると泣きますよ(笑)。
鈴木さん 棚橋選手がいたから自分の中で「諦める」という概念は消えましたよ。
あなたにとってプロレスとは!?
──ではここで最後の質問です。あなたにとってプロレスとは何ですか?
鈴木さん プロレスとは…自分ですね。私はプロレスによって形成させているものが多くて、プロレスから得たものから会社の社長をさせていただいています。私という人間の半分以上はプロレスによって形成されているので、プロレスは自分を作ってくれた源であり、原子なんですよ。
──これでインタビューは以上となります。鈴木さん、長時間の取材にお受けいただき本当にありがとうございました。今後のご活躍とご健勝を心よりお祈り申し上げます。
鈴木さん こちらこそありがとうございました。
(私とプロレス 鈴木裕之さんの場合・完/第3回終了)