ウクライナより小さい国の懸念 | 塩見有輝の日本と海外のデュエルライフ

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シンガポールに12年住んでいました。現在は、月の半分が日本、半分が海外です。仕事でインドネシア、シンガポール、マレーシア、フィリピンに行くことが多いです。1年間にその他10か国以上旅行して、美しい景色、文化、人々に会うことを楽しんでいます。


今日は、2022年3月1日の
シンガポールの
バラクリシュナン外務相が、
ウクライナの件について
議会で話したことが
大変わかりやすかったのと、
外務省がする仕事を
このスピーチを含め
速やかにされていることなどに
個人的に共感したので、
訳してご紹介します。



 


 


 


 


 


黄色い部分は、大臣ご自身が、
お話の中でquote, unquoteと
あえて強調をつけた部分です。

議長、皆さん、
私たちは、こうして話している間にも
主権国家による挑発的な軍事侵略を
目撃しています。


ウクライナは多言語と多宗教の
人口約4,400万人の大きな国です。
ロシア、および他の地域の週と
複雑な関係を持つ長い歴史があります。
ウクライナは、ソビエト連邦が崩壊した
1991年に独立しました。


その後まもなく1994年に、
ウクライナはその当時所有していた
世界第3位の規模の核兵器を
放棄するよう説得されました。
そして、
核兵器の不拡散に関する条約に
署名をしました。


その見返りとして、
ロシアと
アメリカ合衆国と
イギリスの3国が、
安全保障を提供するという
ブダペスト覚書に署名しました。
その際に、
"ウクライナの
領土保全や独立に対して、
核の脅威を使ってはいけない、
という義務を
再度、確認しました。


そして、それらの武器は、
自己防衛、あるいは、
国連憲章による場合を除いて、


いっさい、ウクライナに対して
使用しないことと決めました。”


この言葉は、今日となっては、
空しく響きます。


それ以来、ウクライナは
分離主義運動や、
ロシアとの緊張により悪化した
かなりの国内政治の混乱に
直面しています。


ブダペスト覚書から20年後、
世界が見ている前で、
ロシアはクリミアを併合します。
ドンバスでの地上での紛争は
一時的な限定停戦も含め
過去8年間続きました。


そして2021年春、ロシアは、
ウクライナとの国境に、
軍隊を10万人以上集めました。


2022年1月、
ウクライナ政府のウェブサイトに対し、
サイバー攻撃が開始されました。


そして2022年2月21日、
ロシアは、ウクライナの
2つの地域の離脱を認め、
ロシア軍が、いわゆる
〝平和維持活動”と呼ぶものを
実行し始めました。


2022年2月24日、
ロシアは、ウクライナにおける
特別軍事作戦の開始を
発表しました。


その後まもなく、
ウクライナ全土の複数のターゲットへの
陸、空、海による攻撃が
続いています。
ロシア陸軍は急遽ウクライナに
北から、南から、東から入り、
首都のキエフに到達しました。


ウクライナから
遠く離れてはいますが、
私たちは懸念すべき危機に
迫られています。


経済的な影響はすでに
感じられます。
例えば、
電気とガソリンの価格上昇です。
これについては本日後ほど、
Sagan Kim Yong氏から話します。


しかし、こういったことが、
ウクライナの状況が私たちにとって
重要である理由ではないのです。


ウクライナで起こっていることは、
他の主権国家に対して、
武力行使と攻撃行為を禁止する、
国際法と国連憲章の基本的な規範の
核心をついていることです。


ロシアによるウクライナ侵略は、
国際規範の明らかな重大なる違反で、
全く容認できない事例です。


これは、私たちにとって
実存的な問題です。


ウクライナは、ロシアより
はるかに小さいです。
しかし、シンガポールと比べれば
はるかに大きいです。


力を基準とした世界秩序、
強者ができることをし、
弱者は強いられて苦しむ、


そのような世界秩序は、
小国の安全と生き残りを
さらに害するものになるでしょう。


私たちは、
一国が、他国を、


この独立が
〝歴史的な誤りと狂った決断"
の結果であるという議論の
正当性なしに、


攻撃することを受け入れません。


そのような理論的根拠は、
国際的に認められた正当性と、
シンガポールを含む
多くの国の領土保全に、
対立するものです。


それが、私たちが、
国際法と国連憲章の
原理原則を頑なに支持する
理由です。


大国、小国、すべての国の、
主権、政治的独立、領土は、
尊重されるべきです。


いつでもどこでも発生しうる、
これらの原則の違反について、
シンガポールは真剣に
受け止めなくてはいけません。


これが、シンガポールが
ロシアによるウクライナへの
挑発的侵略に対して、
強く非難する理由です。


この不当な戦争行為攻撃の結果、
重傷者と、
そして多くの罪のない命の喪失を
見るのは悲痛です。


この攻撃的な軍事行動を直ちにやめ、
平和的な解決のために、
国連憲章と国際法に従うよう、
私たちはつよくロシアに要請します。


そして、ウクライナと、
それを必要としている
すべての人のへの
人道支援のアクセスの、
安全確保も求めます。


シンガポールは
私たちの役割を果たします。


シンガポール赤十字社は、
ウクライナ赤十字社と
赤十字の国際連合
赤新月社と協力して、
この危機に影響を受ける
コミュニティに対して、
US10万ドルを寄付しました。


これらは生活必需品を提供します。
紛争によって移動し困っている方への
衛星用品、家庭用品に使われます。


シンガポール政府も
シンガポール赤十字を通じて
人道的活動に
10万ドルを寄付します。


皆さん、
この現在のウクライナの危機から
私たちは学ぶべき重要なことが
あります。


まず第一に、
国際法と外交の原則は
不可欠ではありますが、
それで十分であるということは
ありません。


ブダペスト覚書は、
ウクライナの安全を
ロシア、
アメリカ、
イギリス、という
3つの核の力によって、
保証するはずのものでした。


しかしこの合意は、
それぞれの当事者が
それを尊重した場合には、
そして
それを強制施行できる場合には、
意味があります。


ウクライナ侵略は、
特に大きな強力な相手の場合、
弱い国はどんなに速く
侵略されてしまうのかを
実証しています。


これはすべての小さな国にとって
深刻な現実です。


シンガポールも例外ではありません。


2014年のロシアのクリミア併合、
1990年のイラクのクウェート侵攻は、
これをはっきりと思い出させます。


他の国に、
自分の国を守ることを
頼ったりはできないのです。


したがって、
私たちは
防御する能力を決して失うことなく、
自国を守ります。


そしてこれが、
シンガポールがこれまで絶えず
シンガポール軍に投資して、
頼ることのできる強い軍隊を
構築して、
私たちの国民性の
基本的要素となる徴兵制を
維持してきた理由です。


シンガポール軍の機能は
シンガポール人の決意に
支えられています。
自分たちのものと、
自分たちの生き方を守るため
必要であれば闘って死ぬという
私たちの鉄の決意です。


そういった機能と決意なくして
どんな量の外交も、
国を救うことはできません。


第2に、
小さな国は、大国の、
地政学的なゲームに
簡単に巻き込まれてしまいます。


小国が、
どちらかの国が、
もう一方の国に対して使う、
犠牲的な1歩になったり、
猫の前足のようになったりを
避けなければいけません。


1973年に、
リー・クアン・ユー元首相が、
タンザニアの当時の
ジュリアス ニエリ元大統領と
合意をしました。
ニエリ大統領は、
象が闘うとき、
草が苦しむと言いました。


ですから、私たちは
すべての近隣諸国と
良好な関係を維持するために
努力します。


事態が起こったときの
私たちの評価と行動は、
私たちの国家の
長期的な利益を明言し、
一貫して守っていきます。


どちら側を選ぶということなく
それよりも原則を守るということに
価値があります。
それによって、
首尾一貫した外国政策を行う際、
同じような原則を持った人々から、
私たちは信頼されるパートナーに
なるのです。


しかしながら、原則について
一国あるいは複数国に
今回のように対立する場合もあります。


第3に、
歴史の浅い国として、
国内団結と結束を維持することが
大事です。
特にこのインターネット時代であり
ハイブリッド戦争の到来の中で、
簡単に内部部門が悪用されて、
内部的に公然とひそかに
対戦相手を分割して弱体化させるのが、
従来の戦争にさらに加わったことを
念頭にいれないといけません。


したがって
私たちの国内政治は、
水際で止めないといけません。
この教訓を遵守したことについて、
私は国家議員の皆さんに
感謝します。
この点において、
対立野党のリーダーである
プリタム・シン氏にも、
感謝をします。


第4に、
主権と国益を守るため、
ある程度の犠牲や痛みを
伴います。
ウクライナ人は
その命と生活の自由の為に
究極の代償を払っています。


この侵略に反対する
他の国際社会も、
制裁を通じて、
ある程度の痛みに耐え、
代償を払わないといけません。


シンガポール人も、
私たちの国益のために
立ち上がることには
多少の代償があることを
理解する必要があります。


私たちは
互いに助け合い
一緒に立ち上がり
痛みに耐える準備を
しなければなりません。


私たちは引き続き、
ロシアとロシア人の人々との
良好な関係を大切にし続けます。
ただし、別の国家の領土を脅かす
このような違反は、受け入れません。


私たちはASEANや
国際的なパートナーと協力し続け
ウクライナ侵略に対立し、
さらなる暴力、流血、緊張を
緩和していきます。


私たちは、国連にも
活発的に参加していきます。


この3日間、
ロシアのウクライナ侵略を
非難するため、
国連の安全保障理事会に
解決案の草案が
発表されました。


シンガポールは、
この安全保障理事会決議
を指示した82か国の中の
1国です。


予想通り、ロシアは、
安全評議会の常任理事国として
その決議を拒否しました。
その為、
決議は通過しませんでした。


とはいえ、
安全保障理事会の15国のうち
11国は賛成票を投じました。
残りの3国の、
中国
インド
アラブ首長国連邦は
棄権しました。


国連総会は、
本日後ほど、
同様の討論をします。
国連総会決議は、
拒否権の対象ではありません。
しかし、いずれにせよ
拘束力はありません。


しかしシンガポールは
国際コミュニティの
責任あるメンバーとして
国連総会決議の精神と書簡に
準拠します。


シンガポールは、常に、
国連安全保障理事会の
制裁と決定に準拠します。


しかし、シンガポールは
国連安全保障理事会の
決議や指示なしに、
他国に制裁を課すことは
ほぼありません。


しかしながら、
ロシアによるウクライナ侵攻と、
安全保障理事会決議案に対しての
ロシアの予想通りの拒否という
前例のないことが起こり、
シンガポールは同じ志を持つ、
他の多くの国々と関係を保ち
ロシアに対して適切な制裁と
制限をしていく予定です。


特に、
ウクライナで危害を加えたり
ウクライナ人を征服するために
直接使われる武器の輸出制限を
実施します。


また、ロシアの銀行との取引と
ロシアと関連する金融取引を
ブロックします。


具体的な対策を進めており
間もなく発表します。


私たちのとる手段は、
ある程度の費用がかかり、
シンガポール人と
働く人々に影響があるとは
予見しています。


しかし、私たちは、
小国の独立と主権についての、
まさに基盤となる原則の為に
立ち上がらなれば、
国家として存在し、
繁栄するという
私たち自身の権利は、
今後、疑わしいものに
なってしまいます。
リム リカー博士と
ズカニアン アブドゥール ラヒム氏が
ウクライナの現状と、
特にシンガポール外務省が
ウクライナにいる
シンガポール人救済の為に
すべきことについての評価を
提出しました。
この後、その懸念について
説明します。


皆さん、
2022年2月24日の
ロシアによるウクライナへの
軍事進攻に先立ち、
シンガポール外務省は、
2022年1月26日と2月13日に
旅行制限の勧告をしました。


私たちはシンガポール人に
直ちに撤退するように勧告し
その時点では撤退可能でした。


また、
ウクライナのシンガポール人に
外務省のネット登録をするように
促進しました。
それによって
領事館のアシストを受け、
1回目の勧告で
7名のシンガポール人が
紛争勃発前に民間輸送手段で
脱出することができました。


ロシアの侵略の開始以来
別の3人のシンガポール人が
ウクライナを出て、
ポーランドに入りました。
まだウクライナに現在8人の
シンガポール人がいて、
国内のいくつかの都市に
散在していますが、
連絡はついており、
あと1名と現在も
連絡しているところです。


シンガポール人の安全は
私たちの優先する事項で
あり続けます。
外務省は、シンガポール人が
どこにいても、
どうであっても、
可能な限り助けます。


また状況が許せば、
国を離れる選択肢を探ります。
また同時に、
シンガポール人とウクライナ人は
警戒地区の避難所を探し、
当局からのアドバイスに
注意してください。
まだ外務省に
ネット登録していない方は
ただちに登録してください。


皆さん、
私たちは団結し、
私たちが独立した主権国家として
生き残り、そして
存在していくという
原則のために立ち上がり、
その原則を支持していく、
今がその時です。


 




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