昨日の日本時間早朝、ワルシャワカップアイスダンスFDが行われ、村元哉中/髙橋大輔組が2位になりました。
連戦にも関わらず本当に素晴らしい演技でした。見事表彰台おめでとうございます!
お写真の一つも貼りたいところですが、もうご覧になってるでしょうから、こちらの白ソーランを。
12月にポーランドで放映予定だそうですが、その前に日本のどこかでやってくれないかなあ。フィギュアスケートTVとか期待してるんですけどね。ニュースでもRDのオリジナル映像がちらっと流れましたよね。
試合前にエントリー表をチェックしてある程度良いところに行くとは予想できましたが、経験豊富なカップル揃いでせめて4位くらいを願ってました。GPSカナダ大会3位だったグリーン/パーソン組を抑え、まさかいきなり表彰台、しかも2位とは快挙です。
この試合の結果シーズンランキングが11/22付で19位となりました。
得点のほうはいきなり10点も上がりましたが、ロシアの記事でもかなだいまではジャッジは正当な仕事をしたと評価してました。1位のディアナ/スポルキン組の高得点については若干物議を醸しておりますが・・・どの国にも陰謀論を醸すくだらない人は大勢います。
でもこの議論のおかげでかなだいの点数がごく妥当であったと結論付けられたとも言えます。それだけ課せられた期待のハードルが一段と上がったとも言えますが。
まあ熾烈な代表争いはアイスダンスが盛んな国ならどこも一緒ってことですね。少ない切符を求めてずらりと列が並んでいるのです。
早朝でしたので、全カップルは追えませんでしたが、それでもアイスダンスの競技としての難しさと楽しさが分かってきた気がします。
GPSはそれこそ国の1位2位のカップルだけが出場してるので上手くて当たり前だったんですが、幅広いレベルの参加者が集うCS(チャレンジャーシリーズ)の方が、実力差があるだけにスケーティングの良しあしが素人目にもよくわかりました。
それからアイスダンスにおいては選曲と振り付け、構成がいかに重要なのかも見えてきます。
シングルの場合もエレメンツをこなしやすいプログラム作りは求められるでしょうが、振り付けにおいてはそこまで重視されず、ぶっちゃけジャンプさえ決まれば他は何とでも・・と言う気もします。特にソチ五輪以降の選手はその傾向が強いですね。
その点二人の足元や振りをぴたりと合わせなくてはならないアイスダンスは、間違ったり疲れたからといって勝手に振りを変えることはできませんし、休みどころがないのですごく大変そうです。プログラムをこなすための体力作りが半端なく必要なんですね。ペアやアイスダンスの男子選手は皆、筋骨隆々になるわけです。女子はその上で体重管理もしなくてはならないし、日本から中々トップに食い込めるカップルが現れなかったのも無理からぬ話です。もちろん練習できるリンクの不足とか資金面とか事情がたくさんあるんでしょうけどね。
かなだいが名ガイドになってくれたおかげでまた未知なる世界が広がったし、詳しいことは知らずとも見てる分にはとっても面白い競技だと思います。
何より大ちゃんたちが生き生きとして、上り調子ってのが応援し甲斐がありますね。N杯で知り合った方々にファンになったきっかけを聞いたら、13年の全日本落ちとかそれどころか19年全日本フェニックス落ちとか、ハマったときにはすでに現役終わってた・・・みたいな方々も結構いらっしゃって、そうしたファンの皆さんが一様にこうして試合する大ちゃんを応援できてうれしい!!ってお話されてました。
ソチ以降はファンを止めてた方も復帰以降はガンガン応援モードが復活したという話も聞いたし、やっぱ先に目標があるってことはファンにも張り合いが生まれていい影響を及ぼすんだなあと感じましたね。
大輔さんにとってはソチ五輪以来7年ぶりにISUが主催する国際試合に出場、メダル獲得は2013年のNHK杯以来ということになります。(2020年は国内選手のみ出場)
7年前とはいえあの頃のことは全部忘れられない思い出ばかりです。2013-2014シーズン、右膝の故障を抱えたままのクワドチャレンジは彼に酷な精神的肉体的な疲労を強いましたし、競技継続のモチベーションを失いかけた年でもありました。
その葛藤はスケートアメリカでの表情にも現れてしまい、皆をやきもきさせました。
その一方でスケーティングの方は著しく上達していました。ビートルズメドレーの振付師、ローリー・ニコルはかのジョン・カリーが率いたアイスショーカンパニーメンバーだったので彼のメソッドを色濃く受け継いでいて、大輔さんに振り付けるにあたり基礎の基礎、まずコンパルソリの指導から始めたのです。大輔さんの習熟能力の高さは誰もが認めるところで、わずかな期間に見違えるように軽やかなスケーティングをものにしていました。
2013年6月に開催されたAOIでその滑りを目の当たりにした私は、大輔さんが滑ってるのではなく、氷の方が彼を載せて動いているようだと感じたくらいでした。
しかし、シングルの靴でそこまでスケートを極めた人が、エッジが全く異なるアイスダンス用の靴で競技に復帰するって、そりゃ常識的に考えてやめとけ!って考える事は別に不思議ではありません。少なくとも簡単な話じゃないくらいは私でもわかります。
大ちゃんが初めてアイスダンスの靴を履いた時に開口一番「怖いっ!!」って言ってましたものね。エッジも靴の形も全く違うのでグラグラするし、重心が乗る位置が違うって。しかもそれが全く違うならともかく、微妙に違うのがまた嫌なところなんですって。
シングルの靴で20年以上も練習してきた人が、足と靴が一体化するまで体にしみこませてきた人がいきなりアイスダンスの靴を履くなんて、それは足ごとそっくり義足にすげ替えるようなもの。達人であればあるほど、転向は難しいでしょう。
それをたった2年でこのレベルまで持ってきたのは、界隈の方にとっては奇跡だと思います。はい、えげつない進化です。
NHK杯のRDがなぜかジオブロ解除されてまして、日本からも視聴できるようになりました。ロシアだけじゃなくて世界中から大絶賛ですね。
カナダペアのエリック・ラドフォードさんも大ちゃんに対し、深い尊敬の念を抱いている。すべての成功を手にした彼が、僕たちの年代にもかかわらずまったく異なる競技にこのようなハイレベルで復帰するなんて凄く興奮してる。という意味のコメントしてくれました。
実はラドフォードさんは大ちゃんより一つ年上の36歳です。しかも同じ引退からの現役復帰ですから五輪を目指すアスリートとしても深く共感したんでしょうね。パートナーのヴァネッサさんもずっと彼のファンだったと告白し、私たちの世代で復帰したうえに、その素晴らしい才能で何か新しいものを見せてくれるのはすごく素敵!幸運を!ずっと応援してますとおっしゃってます。
正直大ちゃんのようなチャンレジするスケーターが日本からまた出てくるとは思えません。シングルでいい成績を修めた選手がその栄光を手放すようなことはしないはず。だって本当にゼロからのやり直しですもの。
ファンも周りも手放しで歓迎して後押ししてくれるような人ばかりではなかったです。アンチ以外からの批判も多くみかけましたし、転向を機に彼に背を向けたファンも大勢いますよ。社会からの評価も栄光も将来も本当に何もかも失う覚悟がなければ、進むことはできない道でした。
でも一人ではなかった。手を引いてくれる人がいた。
この2年、哉中ちゃんを見て来て知れば知るほどその成し遂げる力に感嘆します。そこらの人とは胆力が違いますね。もちろん試合前には緊張もするだろうし、心身の悩みもおありだと思うけど、一途に歩みを止めないところが凄いです。
もちろんそれは彼女が心から信頼するズエワコーチの導きがあるからでしょうけどね。哉中ちゃんが大ちゃんをアイスダンスに誘う決心がついたのも、まあイチかバチか聞いてみなけりゃわからないと思ったからだそうですが、ズエワ先生の存在が心強い支えになってたことは間違いありません。
こちらのインタビューとても読みごたえがありました。翻訳してくださった方もいますので全文読むのならそちらを探していただくとして、興味を引かれたところだけピックアップします。
現在、ズエワ先生のところで本格的にやってるカップルは村元・髙橋組だけだそうです。10年ほど前、ズエワ帝国とすら呼ばれたころは強豪選手を大勢抱えていて、とても捌ききれないほどでした。メリチャリ、シブタニズ、テサモエ、リード姉弟も彼女を師事してましたし、振り付けの仕事もひっきりなしにこなしてました。そんな中ではスケジュールの調整も難しく、教え子にも優先順位が付いてしまいます。
長年共同して指導にあたってきたイゴール・シュピルバンド氏は重点的に新しく入会したカップルの指導に力を入れてましたが、その点でズエワ氏と対立、とうとうクラブを解雇されてしまいます。それにシュピルバンド氏は猛反発。裁判沙汰も辞さない構えだったのは当時のインタビュー記事で読みました。
シュピルバンド氏が出て行った結果、マディソン・チョック&エヴァン・ベイツほか何組かがズエワコーチから離れ、その後、メリチャリ引退、シブタニズのマイヤちゃんが病気休養という状況でだんだん生徒が減っていき、今はアイスダンスアカデミーオブモントリオールのマリーさんたちのところが大盛況という流れです。
(小松原組もこのモントリオールを拠点としているのですが、なぜかカナダの入国許可が下りず、リモートでしか指導を仰げないのが現状)
アイスダンス超初心者で、最初から、そもそも体を作るところから始めなきゃならない生徒より、ある程度出来上がった実績あるカップルを教える方が成果が出るし普通ならずっと楽ですもの。
新参者がいきなり多忙な先生に直接指導してもらうのはいかに難しいかと言う点で、かなだいは最初からものすごく恵まれていたわけですね。
ズエワ先生にしても多くの生徒さんを抱えてた時はフラストレーションが溜まっていたはず。やっと自分がしたかった理想の指導ができてるんじゃないかと、キスクラの嬉しそうなお顔から察します。
ワルシャワカップで1位になったディアナ/スポルキン組のコーチはなんとシュピルバンド氏だったのですが、二つのカップルを挟んで同じ写真に納まってるところがディアナさんのインスタに掲載され、国内外のスケオタを何とかに耽らせてました(笑)
まあすべては教え子への愛ですねえ。愛😅
パパシゼがトップになってからはすっかりモダンダンス風の振り付けが主流を占めるようになったし、ズエワ先生らしいロマンチックな振り付けは古風、時代遅れとすら揶揄されてたくらいですけど、あえて流れに逆らい、古典、それもバレエを真っ向から取り入れるなんてかなり冒険ですよね。
しかも!もしかして自慢じゃないのか?ってくらい事あるごとに体の堅さを強調してたあの大ちゃんにですよ。子供のころからやってたならともかく、34歳のおっ・・・・・・ゴホッ 男の人にバレエプログラムをやらせますか?!
ズエワ先生は「ラ・バヤデール」をずっと温めていましたが、長いこと演者を見つけられずにいたそうです。かなだいを見てやっと演者が見つかったと。
確かに大ちゃんが優れたダンサーであることはLOTFで実証済みですが、バレエとなると話は全く別ですよね。ズエワ先生もただ美しく滑るよりはずっと難しいことを認め、下手するとバレエのパロディになってしまうとおっしゃってます。
それよりなにより私としてはアイスダンサーデビューが「ラ・バヤデール」だと聞かされた大ちゃんがどんな反応だったのかを知りたいですね。
絶ーーー対に
「無理無理無理無理!!」
って首振りながら後ずさりしたと思うんだけど、それをどうやって騙した説得したのか教えていただきたいものです。
まあなんとなくですが、最後は笑うセールスマンみたく
「あなたがやるのです!!どーーーん!!」
ズエワ先生が否応なく承諾させたに違いないと・・・・
目をくるくるさせながら「はい」と答える大ちゃんの姿が目に浮かびます。
できたらその場にいたかったなあと思いますよ。
2020年2月に渡米したものの、5月には帰国を余儀なくされ、夏の間はリモートで練習。コロナ禍で往来もままならぬ中よくまあ11月のNHK杯までに形になったものです。そして今年、世界中からこのバレエプログラムに賞賛が寄せられて、ゴージャスなバレエダンサーとまで言われるようになるとは。
自分の可能性を最大限に活かすには“できない恐怖”ときちんと向き合い行動を起こすこと
言うのは簡単ですけどね。
実際に向き合える人はそんなにはいません。さらに結果を出せる人はどんな分野においてもリスペクトされるべきですね。
ズエワ先生はかなだいはテサモエよりも技術的なポテンシャルが高いとおっしゃってますし、私もちゃっかりその言葉にのって、夢見させてもらってます。最高の先生と最高に努力できる二人の弟子が我々の目の前にいるんですもの。これで信じられなきゃいつ現実になると言うのでしょうか?
全く頑張ってない自分が言うのは恥ずかしいですが、行動を起こしてがんばる人の応援って楽しいものですね。
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