走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

ホットスポットのICUの状態

2021年05月10日 | 仕事
今回はカナダのYoutuber 研修医の紹介。よくカレッジに目をつけられず、このような活動ができるもんだ!と感心する。ギリギリ路線で規制に引っかからないよう。

で、彼女が最近のICUのシフトについてあげていました。ここで紹介する理由は3つ。

1、変異株が猛威を振う街のICUの様子を知ってもらいたいから
2、看護師が2人登場してきます。医師との会話で対等に話している事を知って欲しい
3、医療者の立場でこのように公開しているYoutubeを作っている人に参考にして欲しいから

注意、英語です。
以下私のコメントを書いておきます。

1:20 ICU患者層がこの1ヶ月で激変した事を語っています。症状の急激な悪化、若年層化は変異株による陽性率が高い地区で見られる現象です。Scary 怖い と彼女は言っています。怖いと言うのは感染が怖いと言う意味ではなく医療者として今までに経験した事がない状況で先行きの不安です。

3:00 研修医1年目と4年目(Youtuberの方)がペアになって救急室に運ばれた患者の診察に向かいます。コンサルテーションを受けたと言う事。

4:10 検査の結果コロナ肺炎と肺梗塞が2箇所見つかります。血栓形成による梗塞もコロナによる特徴です。脳梗塞、肺梗塞、心筋梗塞、末端四肢の梗塞、腸管動脈梗塞。早期発見と治療が予後を左右します。

4:32 ICU看護師が治療方法についての彼女の考えを研修医に伝えています。看護師の案は血液ガス検査の結果から患者の体位をうつぶせにした方が良いのでは?と聞いています。研修医は計算をして、看護師の勧めに同意をして指示を出します(重症患者なのでこれは指示が必要)。

5:55 もう1人の看護師が人口呼吸器の付いている患者のうつぶせ位について説明しています。的確に説明する能力がある看護師だと一目瞭然。

8:40 状態が悪化した患者を挿管して(管を喉から入れる)人口呼吸器を装着、つまり鎮静と麻酔をかけなければならない。この患者は他の街から転送された患者で家族は駆けつける事ができないし、コロナで面会制限もあるので鎮静を始める前にZoomで家族との会話を設定すると悲しげに話す。
I hope she won’t say goodbye to them.
最後の会話になるかもしれない、その可能性がゼロでない事を知っている医療者にとって、患者の口からそれを聞くのは精神的にかなりやられる。勿論だからベストを尽くしてケアをしていくわけだが、医療者のコロナ疲労と言われるのはこのような状況を短時間に繰り返し経験し続けるから。特にビデオに登場(姿はなし)する患者は30〜40代でコロナになるまで全く元気だった人ばかり。コロナの脅威を目の当たりにするのは前線の医療者たち。しかし一歩病院を離れると対岸の火事の如く規制を守らない人々を目撃するわけで、そのギャップも追い討ちをかける。

11:14 帰宅してコロナ疲労について話します。これは深刻な問題で医療者がこれによって働けなくなり病気休暇を取らざるおえなくなったり、転職している現象が起こっています。以前書いたように機械は沢山購入できてもそれを使える人間がいないと医療は成り立たないのです。カナダでは早くからこの現象に注目をしていて、セルフケアの講習や啓蒙に力を入れています。ビデオの中で言っているように人員を増やす事もしていますが、このような疲労は知らず知らずのうちに貯蓄して、症状がガーンと出てくるのが怖いところ。これを防ぐ方法は一つ。コロナ感染を抑えていく事で、現場のストレス(重圧)を減らしていく事です。

ビデオの概要欄を開けてみるとわかるように、ちゃんと参考先を記入しているのも彼女のビデオの良いところ。なんせカレッジや職場の規制は厳しいですから。





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