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宝塚花組「元禄バロックロック/The Fascination!」 [観劇感想(宝塚)]

宝塚花組「元禄バロックロック/The Fascination!」
2021年11月19日(金)13時 2階10列センター

ポスターがとても素敵。柚香さんの美しさ。謎衣装の美しさ。
タカヤ先生の衣装と装置と照明という雰囲気作りは最高なので、ちょっと期待していた。
だけど…時間足りなかったのね?広げた風呂敷が全く畳めてなくて、とっ散らかったままでは?クロノスとかバロックロックとか、親父ダジャレの世界なの?本作のテーマは何?ストーリーの軸はどこ?何が言いたかったの?SF風だけど、理屈も何もあったもんじゃない。
クロノスケは全然かっこよくないし(外見は別)、キラはわがままであまりに自分勝手すぎ。クラノスケはどういう人物か謎のまま。コウズケノスケはイケオジだけど間抜けな悪役、タクミノカミはとても麗しいが、ずっとふらふらしてるだけ。
そして真の主役ツナヨシ。とっ散らかった諸々を全部まとめて強引に畳んでいった。すごい迫力でした。もうツナヨシの印象しか残らないくらい。
この脚本でOKだしちゃいかんだろ?って思うほど、ストーリーは破綻していた。衣装と演出と照明とセットとツナヨシで何とかした感じ。

ショーは、なんか古臭い感じのショーだな~って印象。すべてがゆったりしている。まるで80年代のように。綺麗なんだけど、宝塚らしいんだけど。でもなんかタルイ。ガンガン踊ってるのにのっぺりした印象はなんで?って思う。同じ衣装が続きすぎ場面が長すぎ。しかも似たテイストの場面が多いからか。新作ショーとは思えない。100周年だからか~と納得はしたが、そういうのはイベントで納めてほしい。本公演はちゃんとした作品を作ってほしいものです。中村B先生のショーは好きなのに、変な趣旨を入れると良さが吹っ飛んでしまうような気がする。

ということで、今回お芝居もショーも、衣装と照明とセットは良かったけど、なんだか好みじゃなかったです。

202111花バロック.jpg

三井住友VISAカード シアター
忠臣蔵ファンタジー
『元禄バロックロック』
作・演出/谷 貴矢

SFで時間モノですよね。でも、「アインシュタイン」で感じた本格SF風味は無く、ラノベ。主人公が装置(特殊能力的な)を使い、何度も時間を遡る形式は、今流行りの「なろう小説」の異世界モノに多い設定だなと。そして、その時間を戻す装置(時計)。設計図をもとに、「ちょっと勉強した」というお嬢様が製造し使いこなせるモノらしい。なのに、その父の政府高官が国家総力を挙げても製造できず、また設計に協力したと思われる時計職人にも製造できないというモノなのだ。・・・ここで設定破綻してない?まあ、元の設計図を描いた(発明した)のが、一国の藩主タクミノカミってところもどうかと思う。でも超オタクなら、引き籠り令嬢キラよりは納得できる。キラ嬢もオタクな天才時計職人なのでしょうか?。そうは見えない。火事場の馬鹿力的な恋の一念なのか。これはSFではなく、ラブコメなのか。

そして、時を遡る時計。こんな世界征服ができるレベルの特殊能力装置なのに、使い方がなんとも卑小というか。私は時を戻すクロノスケに、ドラえもんの道具を使うのび太君を思い出したわ。それでいいのかクロノスケよ!(そういえば、キラ制作の時計は完成品で小型化されているのに、クロノスケ制作の時計は未完の上デカい。キラのほうが優秀やん)。
ついでにキラ嬢のクロノスケへの執着は、某皇室のお姫様を思い出した。彼女の時計の使い方はすべてクロノスケへの執着。「父に閉じ込められた籠の鳥から救い出してくれる人!絶対に離さない。私の思い通りに愛して」という執念を感じる。(彼女の時計の使い方もなあ~と思っていたら、同行の友人が「真〇様とK君みたい・・」といった。それだ!)

キラが時を戻す前の物語を再現する場面があったが、肝心なところは全然変わってないやん。ここでクラノスケたちが全然違う人物のような態度だと、「ああ時を戻して世界を変えてしまったな」と思えるのだけど、クラノスケたちも同じまま。例えば、最初(キラが戻したパターン)のクラノスケは「らっきーこいこい」で腑抜けを演じるおちゃらけ姿(だが裏では陰謀)で、キラが戻さなかった時間軸のクラノスケは、まっすぐに復讐(討ち入り)をする険しい家老、とかね。そこは変えてほしかった。永久輝さんも演じにくかったと思うよ。この人物の在り方がよく分からなくなるもの。

戻す前と戻った後のストーリーは、変えていくのが王道。(悪役令嬢が破滅しないように行動を変えた結果、ストーリーが変わるのが醍醐味です:笑)。主人公の異なる行動で回りの対応が変わり、ストーリーが変わるのが楽しいのに、本作は主人公の行動の変化と周りの変化が分かりにくくて。行動を変えたというより、変えきれなくて、ツナヨシが強引に変えた感じ。
多分、あと60分あったらちゃんと描けたのですよね。きっと。


<赤穂藩の人>
クロノスケ 柚香 光
赤穂藩の時計職人で大変綺麗な男。藩主が時計オタク(設計オタクか?)なので、側近中の側近だと思うが、藩主が事件を起こした理由や、その無念やらなんやらは全然考えてなさそう。エドの歓楽街で楽しく不正をしてお金を稼ぎ、その美貌で女性を侍らせて楽しんでいるようだ。この時点で「この人・・・」となってしまう。後半はほとんどキラに強引に引きづられていった。なんだか何もしない役立たず系の役が続いてるような気がするわ柚香さん。巻き込まれ型というかヒロインに振り回され型というか、そういうのが似合いますけどね。
見た目は大変イケメンでかっこよく、あの衣装がとてもお似合い。性格も優しくて女性のいうことをよく聞いてくれて理想的。籠の鳥のお姫様が一目ぼれするのがよく分かる。ただ主人公として何かを成したか?というと?が浮かぶのであった。

タクミノカミ 聖乃 あすか
すべての原因を作った方。時を戻す時計を発明するという偉業を達成し、その設計図を完成させる(だが完成品は作ってなかったのだろうか?なら設計図の価値もそれほどではないのではないか・・ねえコウズケノスケさま。完成品があればそれをいただくほうが早いですもんね)。その発明品をどこで誰に話して、コウズケノスケ様に知られて設計図を奪われてしまったのでしょう。しかし、完成品がまだ存在しないなら、コウズケノスケ様の権力と人脈と財産を使わせてもらって、研究費と人材を拠出させて完成させればよかったのでは?または、「これを完成されられるのは私しかいない!」とか言って時間を稼げば、奪い返せる機会や、またはワザと失敗してごまかす手段もあっただろうに。なのになのに「設計図を渡さない!」」といきなり斬りかかったのか、それが最大の謎。短慮に過ぎる。しかもあっさり処刑されて悔いなしとか言ってるし。やっぱり謎な人だ。
登場時から霊のため、白と青の清廉な大変美しい高価な衣装。それが素晴らしくお似合いで、とても発明オタクには見えません。ただ歩いているだけなのに麗しかった。。。


クラノスケ 永久輝 せあ
赤穂藩の家老。よく分からない理由で藩主を処刑され、お家断絶。藩主の恨みを晴らすために、わざと虚けを演じ、エドの歓楽街で享楽生活をしている(らしい)。藩主処刑の理由が「忠臣蔵」とは違うので、彼の設定も大石内蔵助そのままにしなくても良いのに。この松ノ廊下事件の真相だと、彼が藩主から何も知らされてなくて、なぜ藩主が命を懸けて阻止しようとしたかがわかってないようにしか見えない。殿が時を戻す機械をコウズケノスケ様に渡さないように命を懸けたなら、それが完成される前に奪われた設計図を取り戻すのが第一義では?さっさと吉良邸にのりこんで設計図を取り返すべき。虚けを演じて時間を稼いでる場合ではないのでは???と思える。コウズケノスケ様のお命を奪う(復讐)のはそのあとではないかと。クラノスケの行動にも全く共感できない。
そしてキラが時を戻す前と戻した後の行動がほぼ同じなので、余計にわからない。永久輝さんは、おちゃらけクラノスケと、まじめクラノスケで顔つきや声色を変えて工夫して演じていらしたが、脚本の筋が通ってないので、大変もったいなかった。さぞや演じにくかっただろうと思ってしまった。

ヤスベエ 飛龍 つかさ
赤穂浪士の筆頭。ちょい役だがセリフがあるだけまだ存在感があった。彼は確実に殿が事件を起こした理由は知らない。もしかすると殿が発明オタクだったのも知らないかもしれない。忠義の人なのはわかった。

チュウザエモン 高翔 みず希
赤穂浪士で最年長、かな。いろいろ知っているが、なんだかすべてにあきらめを感じた方。それでいいのか?という気もする。

リク 華雅 りりか
クラノスケの妻。何も知らされてないが、貧乏生活の中大変生活力のある女性でした。良いお育ちだろうに、なんて野性的な(笑)

<吉良家>
キラ 星風 まどか
コウズケノスケ様の一人娘。なんと母はあの方!そんなんあり得る?と驚愕の出生の秘密なのだが、かなり華麗にスルーされる。父は大事に大事に籠に入れて育てている。それが不満で、迷い込んできたイケメンに強引に連れ出してもらい、自由な恋を満喫。そのためにすべての力を使う意志の強い女性。真〇様を彷彿とさせる意志力だ。
とても美人。あの衣装がよく似合う。家出して遊郭にいるけど、父はちゃんと護衛のくのいちを派遣している。そのあたりわかってるのでしょうか?自分の恋(相手の思いも不問)にしか見えてないから、わかって無さそう。
誰の力も借りず、自力で時を戻す機械を完成させてしまう天才。だがその使い方は、大変自分勝手。自分勝手な使い方はクロノスケも同様だが、他人への影響度という点ではキラのほうが迷惑度が高い(被害者はおもにクロノスケと赤穂浪士の方々)。
最後は強引にハッピーエンドに持って行った。力強いヒロインでした。

コウズケノスケ 水美 舞斗
キラの父で政府高官。タクミノカミから設計図を奪うが、完成させられないヘタレ(娘は自力で完成させたのに!)。将軍さまから圧力を受けて大変(娘にきけって!)。彼もまた完成させたら自分勝手な利用法をしようと考えている。さすが親子、そっくりだ。いろいろ暗躍しているが、結局は将軍様の掌の上。幼いツナヨシの迫力に負けている(誰も勝てない)。
見た目はイケメン、髭が似合ってかっこいい。あまりオジサマに見えないが、イケメン。
彼は将軍になろうとしていたし、娘に対し「ツナヨシの地位にいるのがお前かも」なんて言ってますが、ここは古代エジプトですか?桂昌院は将軍ご生母ですがただの側室、エジプトの女王クレオパトラではありませんって。なぜそんなことを思うのか、その発想から全然理解できない。タカヤせんせは日本の将軍継承ルールを知らないんでしょうか?それともエドはエジプトなんでしょうか?コウズケノスケ様がそんなことを言い出したので、「いやいやどう頑張っても無理!」とつっこみ、彼が錯乱したのかと思ってしまったわ。この世界、わからない・・・。

カエデ 美羽 愛
コウズケノスケ様の間諜。キラに付けていたら、キラに寝返られてしまった。さすがキラ。愛を理由にどんな理論でも構築して自己の意思を貫く天才だ。美羽さんも可愛い。

ツバキ 星空 美咲
コウズケノスケ様の間諜その2。コウズケノスケ様って可愛い娘ばかり周りにおいてる・・くのいち軍団凄いやん。星空さん可愛い。

<エド城>
ツナヨシ 音 くり寿
影の主役と呼んでも良い方。ゴールデンリトリバーの大きなぬいぐるみとともに登場。大変可愛らしく幼い印象なのに、自分の意思を通す際に見せる迫力。サイコパスのような視線と話し方。「争いは嫌いっていったでしょ?いま争ってたの?」というセリフの後に、争っていた人々の死屍累々が浮かんでしまうほどの恐ろしさ。
最後はその迫力ですべてを片付けていった。ツナヨシがいなければ、この話は終わらなかった。脚本、それでいいのか?と思うが、音さんのサイコパス演技ですべて収めた。素晴らしい。「マスカレードホテル」の時も思ったが、この方の演技力は宝塚の枠を超越している。そしてすべてを搔っ攫っていく方だ。

ケイショウイン 美風 舞良
ツナヨシの母で、幼いっぽいツナヨシの後見をしているようだ。だが過去にコウズケノスケ様と関係があり・・って、なにそれ?と思った。美しく優しくきりりとしたお母様でした。でも最後は恋する女になってしまった。この人間関係、何考えて書いた?と聞いてみたい。

ヨシヤス 優波 慧
魔術師のような風貌の将軍側近。巨大な帽子で誰かわからなかったわ。見た目や雰囲気がとても素敵だが、特に何もしていないような。いやコウズケノスケ様にプレッシャーかけていたかな。ツナヨシ様は全然制御できてない(制御できる人なんていないだろう)。


意味ありげに出てきた外国人も特に何もしなかったし、なんだったんでしょうね?
突っ込みどころ満載の脚本。ただ、衣装と照明とセットは大変美しかった。美しい人がさらに美しく見えたので、深く考えず、ただジェンヌさんの美しさを堪能する作品だと思った。


三井住友VISAカード シアター
レビュー・アニバーサリー
『The Fascination(ザ ファシネイション)!』
-花組誕生100周年 そして未来へ-
作・演出/中村 一徳

ショーで、良かった!と覚えているのは、最後の黒燕尾とピンクドレスの大階段。とても構成が凝っていて、おお!と感動した。そしてエトワール。音さん以外にもちゃんと歌の上手い娘役がいたのね!

あとは白燕尾の場面があまりに長くて、覚えてない。王子様な正統派な場面が多かった。そういうのは大好きだけど、余りに続くと飽きる(勝手でごめん)。
エキサイターとか花組の代表作の曲があったのはわかった。「エーデルワイス」で花組の歌自慢の方の歌い継ぎがありましたが、あれは何?エーデルワイスが主題歌の作品があったのでしょうか(私は覚えてない。この前の宙組ドラマシティ作品がテーマにしてたな、くらい)。
花組100周年で、花組代表的なショー作品を振り返る趣旨なのはわかった。それなら!なぜ「ダンディズム」をここでやらないの??と声を大にしたい。ついこの前の星組で見たあの名作よ。なんで次の花でやらないの?あの作品こそ花ショーの代表作では? もう連続で入れていいから。柚香さんならあのスーツ似合う!そういえばスーツ場面が無かったような?あった?印象にない。
なにより中村B先生と言えば雪組やん(イメージ)。過去の名作「ダンディズム」それか大介先生のエキサイター系のショー。なんだかすっきりしない。無理に100年オマージュしなくていいのに。梅芸でやってるのにそれでいいやん。と思ったのでした。

花組は、番手スターに歌が得意な方がいらっしゃらないので、歌が印象に残らないような気がする。音さんや副組長、エーデルワイスを歌い継いだ方々は素晴らしいのですが、メインスターではないので、歌量が少なくて残念。永久輝さんの声が少し濁っていたのが気になる。もっとすっきりした声だったのにな~と。
エトワールは咲乃さんですね。声が綺麗。これからの活躍を期待する(音さんは存在が巨すぎるから)

こんなくらいの印象しかなくてごめんなさい。
今回の花組公演は、どちらも好みではなくて残念でした。


この日はB席半分が、高校生の団体でした。学生団体も復活したのね~
嬉しそうにチケットを握っている男子学生に、思わず顔が緩む。
こんな作品だけど、綺麗だったでしょ?ね?と後で力説したくなった。


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えり

お忙しいなか早速更新ありがとうございます!
耳にしていた評判と全く違うので、やっぱりえりあさんのレビューは面白いです!初日は羽根問題で全てが席巻されていて「作品は?それで作品は~?」と思っていたのですが、あとから概ね面白いよ~感想がたくさん聞こえてきたので、そーなんだ!と思っておりましたが……私は東京組なのであらゆる意味で更に楽しみになりました。ありがたいてず。では決してご無理なさらず、また更新楽しみにしています!
by えり (2021-11-24 01:39) 

えりあ

綺麗で豪華で良いですよ~!衣装もセットも照明も演出もとても素敵。でも脚本・・・なんか私ネガティブな感想ですみません。観劇後タカヤ先生に1時間くらい質問攻めにしたい気分になりました(笑
羽根問題、ありましたね。とりあえず、私はストーリー展開が気になってしまって、頭の中に?飛ばしつっこみながら見てました。だからちゃんと場面を追えてないかも。ショーの記憶も曖昧で。もう一度見るときは頭をからっぽにして楽しみたいと思います。

by えりあ (2021-11-24 21:08) 

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