前半から失点を重ね、終盤1点差に迫るも首位・神戸に敗戦。
振り返ってみれば、リーグ戦は3月18日の第5節、アウェイ名古屋戦のスコアレスドロー以来、9試合連続で失点。この神戸戦でも前半だけで3失点し、連続失点も10試合と伸ばしてしまった。
失点するといっても、相手の圧倒的な実力に打ち砕かれたというよりも、自らのミスで綻びを開けての失点という形が多い。ボールを奪って持ち運ぶまでは良くても、その後の配球の精度に欠き、アタッキングサードへ突入するところでボールを奪われたり、下げさせられたりして、攻撃のズレが出たところを神戸に突かれ、高い位置でのボール奪取から守備の枚数が少ないなかで速攻を受け続けていた。
中盤でのボールロストで神戸に主導権を渡すと、20分に汰木の左サイドからクロスをファーサイドにポジションを取っていた武藤が技ありのバウンドシュートを叩き込んで、先制。その後も大迫、齊藤などのゴールを狙うが、GKヤクブ・スウォビィクが好セーヴを続け、耐える時間帯が続く。
FC東京も安部や渡邊がボールを押し上げ、ディエゴ・オリヴェイラ、仲川らを絡めながら攻撃を仕掛けて、35分前後には安部が右ポスト直撃のシュートなどチャンスのシーンも生まれ始めかけたが、41分にGKヤクブ・スウォビィクが躓きながら蹴ったボールを初瀬が奪うと、左エリアへ展開。武藤とのワンツーからのクロスに大迫が右足のヒールで流し込んで神戸が2点目。その3分後には中盤右サイドで小泉が競り合いで倒れて神戸にボールを奪われると、大迫の前線への斜めのスルーパスに武藤が反応。エンリケ・トレヴィザンらDF陣を置き去りにした武藤が冷静にゴールへ流し込んで、神戸が前半だけで3点を奪う。
FC東京の失点シーンは、相手に完全に崩された訳ではなく、攻撃へのスイッチが入り、全体的に攻め上がった瞬間にボールロストをするゆえ、必然的に守備の枚数が少ない段階でカウンターを喰らう形が多数。2失点目はGKヤクブ・スウォビィクがロングボールを蹴ろうとして全体的に重心が前に傾いていたところを躓いてフィードに狂いが生じ、高い位置で奪われてのもの。3失点目は小泉が倒されたところで、一瞬ボールウォッチャーになって足を止めた隙を大迫が見逃さなかった。
後半開始と同時に東慶悟を青木に、渡邊を塚川に代えると、ようやくスピーディな展開や仕掛ける回数が増え始める。小泉のドリブル突破を大迫が倒し、FC東京がゴール正面でFKを得ると、そのFKの流れからエリア内で山川の手にボールが当たってハンドの判定。ディエゴ・オリヴェイラが冷静にPKを決めて1点を返すと、70分前後からエンリケ・トレヴィザンのミドルやヘディングシュートなど攻勢を強めるなか、神戸はCB山川が負傷交代。尾崎を右SBに入れて、DF陣の配置換えで対応。中盤のスペースが開くオープンな展開でのカウンター合戦の様相を呈してくると、東京は仲川に代えて俵積田を投入。神戸は大迫をジェアン・パトリッキ、佐々木を井出にスイッチ。FC東京がボールを収め出し、ペースを握りながらもなかなか追加点ば生まれないでいると、さらに安部を下げてペロッチを投入。すると、ゴール前で得たFKを森重が右サイドの塚川へ供給し、塚川がクロス。このクロスにエリア内で汰木が腕を上げてハンドの判定に。ペロッチがPKを決めてFC東京が1点差と迫る。
さらにFC東京の攻勢が続き、ディエゴ・オリヴェイラ、ペロッチの前線にボールを集めながら、サイドの俵積田のドリブルなどで神戸陣内へ幾度も進出。神戸は武藤を中心にボールを運びながら、FC東京陣内で時間を進める作戦に移行。アディショナルタイムに入り、神戸はコーナー付近でリンコンと井出のコンビネーションで時間をかけ、FC東京もそれを掻い潜って神戸陣内へとボールを動かすも、最後まで耐え抜いた神戸が勝ち点3を獲得し、首位をキープした。
FC東京は、青木を入れた後半から徐々にボールを動かせるようになったが、このところ序盤は相手からのプレスに苦しみ、リズムを作れずに守備が崩れて失点というパターンを修正し切れていない。球離れがワンポイント遅くてボールを奪われたり、パスコースを狭められるなどの微調整はまだまだ精度を高めていかないと、なかなか主導権を握れないと思われる。たとえば、ディエゴ・オリヴェイラがボールを収め、運ぼうとした時に近い距離にサポートが思うようにないのも、攻撃が停滞する原因にもなっている。
ボールを大切にすること＝最終ラインからボールを動かそうとすること、前線へチャレンジすること＝ボールロストのリスクが大きい、ということではなく、ゴールあるいはシュートへの着地点から逆算してどのようにボールを動かし、スペースへ動いていくかを再度熟考する必要がある。
前半と後半で表情が異なる試合となったが、後半は神戸が山川の負傷交代、疲労によってチームがパワーダウンしたこともあり、FC東京が攻勢を仕掛けたが、それが相手との兼ね合いで生まれたともいえる。前半に散見されたミスが致命傷に繋がるのは一目瞭然で、それがレヴェルの高いチームが相手ならばなおさらだ。この試合ではPK2本で1点差となり、数字上は惜しい試合にも見えがちだが、90分を通して試合をマネジメント出来なければ、勝ち点3を奪うことは難しくなってしまう。
その課題を抱えたままだと、次節の横浜FM戦は痛い目に合うことは必至。今季リーグでは6試合中4勝1分1敗と好調のホームに戻って、まずは守備を立て直し、躍動感あるプレーで勝ち点3を奪取したい。
◇◇◇
明治安田生命J1リーグ 第15節
2023年5月27日（土）14:03KO ノエビアスタジアム神戸
入場者数：20,414人
天候：晴 ／ 気温：25.4℃ ／ 湿度 43％
主審：笠原寛貴 ／ 副審：淺田武士、鈴木規志
第4の審判員：川崎秋仁
VAR：岡部拓人 ／ AVAR：清水修平
神 戸 3（3-0 / 0-2）2 FC東京
【得点】
神 戸：武藤嘉紀（20分）、大迫勇也（41分）、武藤嘉紀（44分）
FC東京：ディエゴ・オリヴェイラ（59分、PK）、ペロッチ（85分、PK）
〈試合経過〉
20分 得点 神戸 武藤嘉紀
41分 得点 神戸 大迫勇也
44分 得点 神戸 武藤嘉紀
46分* 交代 東京 渡邊凌磨 → 塚川孝輝 ／ 東 慶悟 → 青木拓矢
55分 警告 神戸 大迫勇也
59分 得点 東京 ディエゴ・オリヴェイラ（PK）
63分 警告 東京 森重真人
70分 交代 神戸 山川哲史 → 尾崎優成
76分 交代 東京 仲川輝人 → 俵積田晃太
78分 交代 神戸 大迫勇也 → ジェアン・パトリッキ ／ 佐々木大樹 → 井出遥也
81分 交代 東京 安部柊斗 → ペロッチ
85分 得点 東京 ペロッチ（PK）
87分 警告 神戸 ジェアン・パトリッキ
90+2分 交代 神戸 汰木康也 → リンコン
【FC東京】
〈スターティングメンバー〉
ＧＫ 27 ヤクブ・スウォビィク
ＤＦ 05 長友佑都
ＤＦ 03 森重真人
ＤＦ 44 エンリケ・トレヴィザン
ＤＦ 17 徳元悠平
ＭＦ 37 小泉 慶
ＭＦ 10 東 慶悟
ＭＦ 08 安部柊斗
ＦＷ 11 渡邊凌磨
ＦＷ 09 ディエゴ・オリヴェイラ
ＦＷ 39 仲川輝人
〈控えメンバー〉
ＧＫ 41 野澤大志ブランドン
ＤＦ 04 木本恭生
ＭＦ 16 青木拓矢
ＭＦ 26 寺山 翼
ＭＦ 35 塚川孝輝
ＦＷ 22 ペロッチ
ＦＷ 33 俵積田晃太
〈監督〉
アルベル
◇◇◇
【明治安田生命J1リーグ 2023シーズン FC東京試合日程・結果】
第01節 02月18日(土)14:00〇FC東京 2-0 浦 和（Ｈ・味スタ）
第02節 02月26日(日)15:00△FC東京 1-1 柏 （Ａ・三協Ｆ柏）
第03節 03月04日(土)14:00✕FC東京 0-2 京 都（Ａ・サンガＳ）
第04節 03月12日(日)15:00〇FC東京 3-1 横浜FC（Ｈ・味スタ）
第05節 03月18日(土)14:00△FC東京 0-0 名古屋（Ａ・豊田ス）
第06節 04月01日(土)15:00✕FC東京 0-1 鳥 栖（Ａ・駅スタ）
第07節 04月09日(日)15:00△FC東京 2-2 湘 南（Ｈ・味スタ）
第08節 04月15日(土)16:00✕FC東京 1-2 Ｃ大阪（Ｈ・味スタ）
第09節 04月22日(土)14:00〇FC東京 2-1 広 島（Ａ・Ｅスタ）
第10節 04月29日(土)15:00〇FC東京 2-1 新 潟（Ｈ・味スタ）
第11節 05月03日(水)15:00✕FC東京 0-1 福 岡（Ａ・ベススタ）
第12節 05月06日(土)14:00✕FC東京 1-5 札 幌（Ａ・札幌ド）
第13節 05月12日(金)19:30〇FC東京 2-1 川 崎（Ｈ・国 立）
第14節 05月20日(土)15:00△FC東京 1-1 鹿 島（Ａ・カシマ）
第15節 05月27日(土)14:00✕FC東京 2-3 神 戸（Ａ・ノエスタ）
第16節 06月03日(土)15:00 FC東京 ✕ 横浜FM（Ｈ・味スタ）
第17節 06月11日(日)18:00 FC東京 ✕ Ｇ大阪（Ａ・パナスタ）
第18節 06月24日(土)19:00 FC東京 ✕ 名古屋（Ｈ・味スタ）
第19節 07月01日(土)19:00 FC東京 ✕ 柏 （Ｈ・味スタ）
第20節 07月08日(土)19:00 FC東京 ✕ 浦 和（Ａ・埼 玉）
第21節 07月16日(日)19:00 FC東京 ✕ 鹿 島（Ｈ・味スタ）
第22節 08月06日(日)19:00 FC東京 ✕ Ｃ大阪（Ａ・ヨドコウ）
第23節 08月12日(土)19:00 FC東京 ✕ 京 都（Ｈ・味スタ）
第24節 08月19日(土)19:30 FC東京 ✕ 横浜FM（Ａ・日産ス）
第25節 08月26日(土)19:00 FC東京 ✕ 神 戸（Ｈ・国 立）
第26節 09月02日(土)00:00 FC東京 ✕ 福 岡（Ｈ・味スタ）
第27節 09月16日(土)00:00 FC東京 ✕ 川 崎（Ａ・等々力）
第28節 09月23日(土)00:00 FC東京 ✕ 鳥 栖（Ｈ・味スタ）
第29節 09月30日(土)00:00 FC東京 ✕ Ｇ大阪（Ｈ・味スタ）
第30節 10月21日(土)00:00 FC東京 ✕ 横浜FC（Ａ・ニッパツ）
第31節 10月28日(土)00:00 FC東京 ✕ 広 島（Ｈ・味スタ）
第32節 11月11日(土)00:00 FC東京 ✕ 新 潟（Ａ・デンカＳ）
第33節 11月25日(土)00:00 FC東京 ✕ 札 幌（Ｈ・味スタ）
第34節 12月03日(日)00:00 FC東京 ✕ 湘 南（Ａ・レモンＳ）
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