*** june typhoon tokyo ***

MY IMPRESSIVE SONGS in 2021


 2021年に強く印象に残った楽曲たち。

 2018年まで行なってきた個人的なフェイヴァリット・アルバム・ベストを決める企画〈MY FAVORITES ALBUM AWARD〉を休止して以降、2019年に“2010年代において自身が印象深かった作品10枚を紹介”するというスピンオフ企画「MY IMPRESSIVE ALBUMS in 2010s ERA」、2020年に強く印象に残った楽曲10曲を独断と偏見で列挙していく企画「MY IMPRESSIVE SONGS in 2020」を開催してきたが、2021年もあまりアルバム作品を聴いてこなかったという印象が強かった。
 ということで、2020年同様に2021年も強く印象に残った楽曲を列挙する〈MY IMPRESSIVE SONGS in 2021〉をエントリー。

 毎度のことながら、思いつきの列記なので、後日振り返った時に「あの曲がない!」「もっといい曲あったワ!」などの感情が渦巻きそうではあるが、現時点で頭に浮かんだラインナップということで、悪しからず。ランキングなしの順不同。“2021年の15曲”を軽めのコメントと動画で振り返ろう。

◇◇◇

■ Ace Hashimoto / 
TRAK STAR

 エース橋本ことブランダン・デシャイのデビュー・アルバム『Play.Make.Believe.』から。同アルバムは拙ブログでもレビューした愛聴盤。向井太一をフィーチャーした「2NITE」も良かったが、選曲に限りがあるゆえ、こちらのネプチューンズやファレル路線のメロウ・グルーヴなファンクをピックアップ。その他も良曲揃いなので、詳細は『Play.Make.Believe.』のアルバム・レビュー(→「ACE HASHIMOTO『Play.Make.Believe』」)をご覧あれ。




■ Chlöe / Have Mercy

 ビヨンセが設立したパークウッド・エンタテインメント所属の姉妹デュオ“クロイ&ハリー”の姉、クロイ・エリザベス・ベイリーのソロ・デビュー曲。フロリダ出身のラッパーのT・T・ジ・アーティスト(TT the Artist)とニュージャージー出身のヴォーカリスト/DJ/プロデューサーのユニーク3(UNIIQU3)の「Off the Chain」を下敷きに、クロイ&ハリーのテイストとは異なるクールなヒップホップを展開。強烈なインパクトがある訳ではないが、耳を傾けているうちにクセになる中毒性あるトラックが特色。




■ D-Nice / Rather Be (with Kiana Ledé)

 D・ナイスことデリックジョーンズは、米・ニューヨーク出身のラッパー/DJ/プロデューサー/ビートボクサーで、80年代半ばにヒップホップ・グループ“ブギーダウン・プロダクション”でキャリアをスタートさせた人物。ニーヨとケント・ジョーンズを迎えた「No Plans For Love」も、ニーヨが絡んでいるからか(テディ・ライリーと組んだ時期あたりの)マイケル・ジャクソン風味で最高なのだが、泣く泣くこちらに。ヴォーカルに迎えたキアナ・レデは昨年の〈MY IMPRESSIVE SONGS〉企画でアリ・レノックスを迎えた「Chocolate.」を歌った人。キアナ・レデの甘美かつハスキーなヴォーカルとスムースR&Bとのマッチングが絶妙なミディアムだ。




■ Doja Cat feat. SZA / Kiss Me More


 「Say So」のヒットでグラミーウィナーとなったドージャ・キャットの楽曲。こちらもピックアップしようかと迷った「Good Days」を出したSZA(シザ)とともに、ドージャ・キャットらしいキュートながらもちょっぴりひねりというか刺激を忍ばせたポップネスが耳を寄せる。宇宙飛行士が乗る惑星探査機が墜落した惑星で、エイリアン風のドージャ・キャットとSZAが遭遇し、韓国人男性と絡むというミュージック・ヴィデオも話題に。




■ edbl / The Way Things Were Feat. Isaac Waddington

 英・チェスター出身のソングライター/トラックメイカー/ギタリストのedbl(エド・ブラック)が、人気公開オーディション番組『ブリテンズ・ゴット・タレント』に出演して注目されたという1999年生まれのシンガー、アイザック・ワディントンを迎えたR&Bマナーのミディアム。エド・ブラックの胸高ぶらせるようなギターと人懐っこさと情緒に富むアイザック・ワディントンのヴォーカルが、心地よいグルーヴを構築していく。楽曲自体は2019年に発表されているが、ソロ作をまとめた日本独自アルバム『South London Sounds』がリリースされたこともあり、セレクト。




■ Justin Bieber / Peaches ft. Daniel Caesar, Giveon

 「Best Part」でグラミー・ウィナーとなったカナダ・トロント出身のダニエル・シーザーと、ドレイク「Chicago Freestyle」の客演で話題となったカリフォルニア州ロングビーチ出身のギヴォンをフィーチャーした、ジャスティン・ビーバーの6thアルバム『Justice』からのシングル。90年代のモダンレトロなムードが薫る、テンダーなミディアムR&B作風が美味。




■ ilham / gang signs

 イルハムは、フレンチ・モンタナに見出されたニューヨーク・クイーンズ出身のR&Bアーティスト。〈デフ・ジャム〉からリリースした「gang signs」は、憂いを帯びながらもスムースなR&Bに落とし込んだサウンドと、シルキーで滑らかなヴォーカルワークが耳を惹く楽曲だ。エスニックな顔立ちも併せて、色気のある佇まいも魅力。




■ Joyce Wrice / On One Ft. Freddie Gibbs

 アメリカ人の父と日本人の母との間に生まれたシンガー・ソングライターのジョイス・ライス。D・マイルが制作し、ラッキー・デイ、マセーゴ、ケイトラナダ、UMIら参加したデビュー・アルバム『OVERGROWN』が佳曲揃いなのだが、そのなかの1曲。ギャングスタ・ギブス名義でも活動するラッパー/プロデューサーのフレディ・ギブスをフィーチャーした、90年代のR&B/ヒップホップソウル・テイストの美しいグルーヴが白眉。




■ Leela James / Rise N Shine

 おそらくアルバム・アウォードをやったらノミネートしていたに違いない、ほぼミディアムやメロウなテイストで占められたリーラ・ジェイムスのアルバム『SEE ME』から、ラストを飾るアッパー・ダンサーを。現代のソウル・クイーンが歌う軽快なダンス・グルーヴといった表現がピッタリで、軽薄にならないファンキー・ソウルが味わえる逸品。




■ Lucky Daye / How Much Can A Heart Take ft. Yebba

 6名の異なる女性シンガーをフィーチャーしたラッキー・デイのコンセプト作『Table For Two』に収録された楽曲で、PJモートンのライヴ・アルバム『Gumbo Unplugged』への参加や、サム・スミスやエド・シーランらとのコラボレーションでも知られる米シンガー・ソングライターのイエバをフィーチャー。晴れやかで清爽なメロディラインとウォームでスウィートな2人のデュエットが、良きケミストリーを起こしている。




■ Nao / And Then Life Was Beautiful

 英・ロンドン出身のネイオが、出産を経て届けた3rdアルバムのタイトル・チューン。ネイオの魅力は何といってもその声色で、清廉で人懐こい褐色のヴォーカルとUKオルタナティヴなR&Bがエレガントな化学反応を起こすところに耳が寄せられる。楽曲が持つピュアで美的な佇まいは、神々しさも漂う。




■ Silk Sonic / Leave the Door Open

 ブルーノ・マーズとアンダーソン・パークによるソウル・ユニットのデビュー・アルバム『An Evening With Silk Sonic』からの1stシングル。70年代フィリー・ソウルをベタで行く甘美な楽曲で、全米1位を獲得。2021年の1曲として多くが挙げたと思われ、天邪鬼ゆえに選外にしようかとも考えたものの、さすがに外せないかなと。70年代ソウル/ファンク好きはマスト。




■ Tinashe / Undo (Back To My Heart) (with Wax Motif)


 アンビエントR&B作風で良曲を重ねているティナーシェの5thアルバム『333』に収録。オーストラリア出身で、上海出身の父と香港出身の母をもち、ギャングスタハウス・シーンでヒットを放つDJ/プロデューサーのワックス・モチーフが参加。こちらはアンビエントR&B作風というより、ボトムの効いたエモーショナルなダンス・トラック。格闘ゲームのようなCG画風のミュージック・ヴィデオにも注目。





■ Victoria Monét / Coastin'

 T.I.や
クリセット・ミシェル、ブランディ、フィフス・ハーモニーなどへの楽曲提供、BLACKPINKがセレーナ・ゴメスをフィーチャーした「Ice Cream」などのヒットを生み、何といってもアリアナ・グランデ作品に大きく貢献してきたことで知られる、米・カリフォルニア州サクラメント出身のヴィクトリア・モネ。2020年には自身のアルバム『Jaguar』もヒットし、勢いあるなかで発表したのがこの曲。ケニ・バークの「Risin' to the Top」を拝借しながら、ブルーノ・マーズ「24K Magic」などで知られるプロデューサー・チームのザ・ステレオタイプスがプロデュース。ブリージングで開放的なムードがシティポップにも通じるようなアーバンなディスコ・ファンク・マナーは、マイダス・ハッチやトム・ミッシュあたりの作風にも似て、時流にマッチ。




■ HALLCA / Fall Back asleep

 洋楽ばかりなので、1曲くらいは日本の楽曲を。ということで、前回ブログにてレビューをエントリーしたHALLCAの2ndアルバム『PARADISE GATE』から、「Fall Back asleep」をピックアップ。詳細はブログのレビューを参照してもらえればと思うが、変態的な転調以降のネオソウル/フィリーソウル・マナーで綴るクライマックスが、褐色を帯びた上質なスムース・グルーヴで美味。HALLCAのさらなる音楽的飛躍を見込めそうなエポックメイキング的な楽曲になって欲しいところ。



◇◇◇


 当初は10曲を選ぶ予定だったが、絞り切れずに結局15曲を挙げてしまった。
 そして、早速(個人的に2021年に1番聴いたと思しき)H.E.R.がないし、サマー・ウォーカーやジャズミン・サリヴァンもない。ラヒーム・デヴォーンもヴァンジェスもスノー・アレグラも入れていないじゃないか……などが頭を過ぎった。この手の楽曲単位のベスト企画に名を連ねなかったということは、個人的に一曲のインパクトは大きくないと捉えたのかもしれない。だが、テーマやコンセプトで聴かせることを主眼とする、すなわちアルバム単位のベスト企画であれば、
おそらくH.E.R.をはじめ、後から名前が挙がった面々はノミネートされていたと思う(それなら最初からアルバム・アウォードをやればいいだろうという文句は受け付けないゾ……苦笑)。

 2021年初頭にも言ったと思うので繰り返しとなるが、2022年こそはもう少し深く、無理をして嫌気をささない程度の心持ちで、多くの音楽に触れていければと思う。

◇◇◇

※ 参考
【MY FAVORITES ALBUM AWARD 歴代受賞作】
2005年
ERIC BENET『HURRICANE』
2006年
NATE JAMES『SET THE TONE』
2007年
洋楽部門:LEDISI『LOST & FOUND』
邦楽部門:AI『DON'T STOP A.I.』
新人賞 :CHRISETTE MICHELE『I AM』
功労賞 :ICE
2008年
洋楽部門:Raheem DeVaughn『Love Behind The Melody』
邦楽部門:有坂美香『アクアンタム』
新人賞 :Estelle『Shine』
2009年
洋楽部門:CHOKLATE『To Whom It May Concern』
邦楽部門:該当作品なし
新人賞 :RYAN LESLIE『Ryan Leslie』
2010年
洋楽部門:ERIC BENET『lost in time』
邦楽部門:久保田利伸『TIMELESS FLY』
新人賞 :JANELLE MONAE『THE ARCHANDROID』
特別賞 :『SR2 サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム オリジナルサウンドトラック』 
2011年
洋楽部門:KELLY PRICE『KELLY』
邦楽部門:MISIA『SOUL QUEST』<“77 Minutes Of MISIA”Mixed By MURO>
2012年
洋楽部門:SY SMITH『Fast And Curious』
邦楽部門:AISHA『I,Shout!!!』
2013年
最優秀作:Joe『Doubleback:Evolution Of R&B』
特別賞 :Maxine Ashley『MOOD SWINGs』(配信作品)
2014年
最優秀作:Jesse Boykins III『Love Apparatus』
新人賞 :Tinashe『Aquarius』
2015年
最優秀作:Dornik『Dornik』
2016年
最優秀作:Bruno Mars『24K Magic』
2017年
最優秀作:FKJ『French Kiwi Juice』
2018年
最優秀作:Nile Rodgers & Chic『It's About Time』


■ 2019年 ※開催せず
MY IMPRESSIVE ALBUMS in 2010s ERA (スピンオフ企画)
■ 2020年 ※開催せず
MY IMPRESSIVE SONGS in 2020 (スピンオフ企画)
■ 2021年 ※開催せず
MY IMPRESSIVE SONGS in 2021 (スピンオフ企画)(本記事)

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