史上初の最終節での多摩川クラシコ、数的優位活かせず、自滅で敗戦。
開幕戦のカードで今季のJ1リーグの最終節を迎えることになった第40回多摩川クラシコは、得点を獲り合う展開の末、オウンゴールで決着。FC東京がまたしても川崎に敗れ、2019年のホーム味スタ以来、屈辱の7連敗となった。
川崎は、横浜FMの結果次第で優勝の可能性が残されているなかでの大一番。FC東京は前節・名古屋戦での敗戦で3位の可能性も消滅したが、アウェイ等々力での開幕戦で敗れはしたものの、新生アルベル体制の期待を大いに抱かせてくれたのも記憶に新しいところ。それからの成長をどれだけピッチで表現出来るかが問われた一戦となった。前節からのディエゴ・オリヴェイラの不在はルイス・フェリッピが担い、バングーナガンデの累積警告出場停止により、SBはカタールW杯日本代表に選出された長友と中村のコンビに。得点ランキング1位のチアゴ・サンタナ（清水）に3ゴール差となってしまったアダイウトンが先発。サブのGKには、約2年間怪我で戦列を離れることを余儀なくされ、今季で契約満了を発表した林が入った。
味スタでのリーグ最終節では無敗、さらに今季先制した試合はJ1唯一の勝率100％というFC東京と、前述のとおり、近年の多摩川クラシコでは6連勝と圧倒し、3連覇の望みを繋いでいる川崎フロンターレ。他力本願にはなるが、優勝というドラマが描かれる可能性もあるマッチメイクに、ファン・サポーターはチケット完売で応えたという試合だったが、結果はFC東京のミスからの自滅と川崎の地力の差で、川崎が勝利。横浜FMが神戸に勝利したため、味の素スタジアムでの優勝セレモニーは回避されたが、終盤の勝たねばならないという試合で連敗、そして数的優位をものに出来ずに終わった徒労感が、試合後のスタジアムを包んでいた。
何が何でも優勝を掴み取るという意志が見えた川崎が、球際も泥臭く当たり、FC東京の選手たちよりも一瞬動き出しが早いなかで、19分に脇坂のミドルが炸裂し、川崎が先制。だが、29分に中盤からの塚川のロングフィードに抜け出したアダイウトンを止めようとした川崎・GKチョン・ソンリョンが、アダイウトンにファールを冒して一発レッドカード。川崎は早々と1人少ない状況で戦わざるをえなくなった。以降、FC東京が圧倒的に押し込む時間帯が続くが、シュートが枠を捉えられず、川崎のリードで前半を終える。
後半開始と同時に脇坂を車屋に代えるなど、選手交代でやり繰りしながらリードを保ちたい川崎だったが、FC東京は47分、CKから中村からのパスを受けた塚川のクロスがゴール前で混戦になったところをアダイウトンがいち早く反応し、右足で押し込み同点。一気呵成に攻め立て逆転のムードも漂ったが、ルイス・フェリッピのシュートがバーを叩くなどなかなかゴールへ届かない。
すると、61分、右サイドから橘田が前方のスペースへパスを送り、知念を走らせたが、森重が身体を入れてカヴァー。これで一旦は攻守交替かと思われたところで、橘田が森重に激しくプレスを仕掛ける。森重は橘田に背中を向けてボールをキープ、そのまま反転してかわそうとしたところで、橘田にボールを奪われると、橘田はグラウンダーのクロス。これにゴール前のマルシーニョが右足でふわりとシュートを浮かせると、GKヤクブ・スウォビィクの伸ばした手の上を越えてネットを揺らし、再び川崎がリードを奪う。
FC東京は長友を紺野に、塚川を三田に代えて、数的優位を活かして攻め続け、74分に右サイドからの紺野のファーサイドへのクロスを左サイドから走り込んできた渡邊が折り返したところに、アダイウトンが頭で合わせて再び同点に。次こそ逆転というムードが漂い始めようかという直後に、左サイドからの車屋のクロスがファーサイドへ流れたところで、渡邊の膝に当たったボールがゴールへ吸い込まれる。川崎がオウンゴールで勝ち越しに成功。FC東京はレアンドロ、安部を入れて攻勢を高めようとするが、焦りからか連係がチグハグで、かえって川崎のプレスを掻い潜るのに苦労し、なかなかゴール前へボールを運ぶことも難しくなり、そのままタイムアップ。FC東京は約70分間数的優位だったが、ミスを連発して自滅。オウンゴール後は精神的にも堪えたようで、それまでの勢いも一気に失ってしまった。
たしかに長い時間にわたって、攻勢を続けていたが、FC東京は、パス出しでも仕掛けでも初動に至るまでの遅さが目立った。これはこの試合に限ったことではないが、相手陣内へ一気に攻め立てられる場面でも、繋ごうという意識が強いあまりなのか、いくつか先のプレーへのイメージが出来ていないのか、スローダウンしたり、一旦後ろへ戻したりして手数を掛けている間に、守備に戻られてしまうという場面が散見。また、ボール保持してしる際にもスペースやパス先を探している間に相手に詰められ、パスコースの選択肢が消え、パスも緩くて遅いことが少なくないゆえ、リスクが増大。何とか攻撃を組み立てようとする意図は解かるが、ボールを大事にしたいところでチャレンジングな縦パスなどでボールを失い、一気に守勢に回るという場面は、今季は改善までには至らなかったのは残念だ。
アルベル監督が、新たな変革には時間や苦悩を擁するとシーズン前に語っていたこともあって、最後は尻つぼみな連敗になってしまったものの、戦術の移行を構築しながらの6位フィニッシュは、及第点とはいえる。とはいえ、それは初年度まで。タイトル争いに絡めず、ACL圏内への望みがかかるという場面で、勝ち点を積み上げられないのは、例年のごとくだ。移籍や補強など人的移動はもちろんあるだろうが、戦術とともに勝ちへの意識をより高める集団にならないと、リーグタイトル争いには辿り着けない。その差を川崎のパフォーマンスから感じた多摩川クラシコだった。
アダイウトンは2得点を上積みし、12ゴールでリーグ得点ランキング3位タイ。FC東京としてはアダイウトンに続くのが、渡邊の6ゴール、レアンドロと安部の5ゴールでは、得点力という意味で厳しい。最低でも2桁ゴールを2名出すくらいでないと、優勝争いには絡めないだろう。ちなみに、優勝した横浜FMはアンデルソン・ロペスとレオ・セアラが11ゴール、西村が10ゴール、2位の川崎がマルシーニョと家長が12ゴールと、それぞれ2名以上が10ゴールを挙げている。
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【明治安田生命J1リーグ 第34節】
2022年11月5日（土）14:03試合開始 味の素スタジアム
入場者数 34,820人
天候 晴 ／ 気温 19.9℃ ／ 湿度 33％
主審 山本雄大 ／ 副審 山内宏志、森川浩次
第４の審判員 蒲澤淳一
ＶＡＲ 池内明彦 ／ ＡＶＡＲ 大塚晴弘
FC東京 2（0-1 / 2-2）3 川 崎
得点：
（東）アダイウトン（47分）、アダイウトン（74分）
（川）脇坂泰斗（19分）、マルシーニョ（61分）、オウンゴール（75分）
〈試合経過〉
19分 得点 川崎 脇坂泰斗
29分 退場 川崎 チョン・ソンリョン
33分 交代 川崎 登里享平 → 丹野研太
46分* 交代 川崎 脇坂泰斗 → 車屋紳太郎
47分 得点 東京 アダイウトン
59分 交代 川崎 小林悠 → 知念慶 ／ ジョアン・シミッチ → 大島僚太
61分 得点 川崎 マルシーニョ
66分 交代 東京 長友佑都 → 紺野和也 ／ 塚川孝輝 → 三田啓貴
74分 得点 東京 アダイウトン
75分 得点 川崎 オウンゴール
80分 交代 東京 渡邊凌磨 → レアンドロ ／ 松木玖生 → 安部柊斗
80分 交代 川崎 マルシーニョ → 山村和也
85分 警告 東京 木本恭生
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【FC東京】
≪スターティングメンバー≫
ＧＫ 24 ヤクブ・スウォビィク
ＤＦ 37 中村帆高
ＤＦ 30 木本恭生
ＤＦ 03 森重真人
ＤＦ 05 長友佑都 → 紺野和也（66分）
ＭＦ 35 塚川孝輝 → 三田啓貴（66分）
ＭＦ 10 東 慶悟
ＭＦ 44 松木玖生 → 安部柊斗（80分）
ＦＷ 23 渡邊凌磨 → レアンドロ（80分）
ＦＷ 22 ルイス・フェリッピ
ＦＷ 15 アダイウトン
≪サブスティテューション≫
ＧＫ 33 林 彰洋
ＤＦ 28 鈴木準弥
ＤＦ 47 木村誠二
ＭＦ 31 安部柊斗
ＦＷ 17 紺野和也
ＦＷ 20 レアンドロ
ＦＷ 07 三田啓貴
≪監督≫
アルベル
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【FC東京 2022シーズンスケジュール・J1リーグ】
第01節 02月18日(金)19:00 ✕FC東京 0-1 川 崎（Ａ・等々力）
第02節 02月26日(土)15:00 FC東京✕名古屋（Ｈ・味スタ） ※中止
第03節 03月06日(日)16:00 〇FC東京 1-0 Ｃ大阪（Ａ・ヨドコウ）
第04節 03月12日(土)15:00 〇FC東京 2-1 広 島（Ｈ・味スタ）
第05節 03月19日(土)14:00 〇FC東京 1-0 京 都（Ａ・サンガＳ）
第06節 04月02日(土)19:00 ✕FC東京 1-2 横浜FM（Ａ・日産ス）
第07節 04月06日(水)19:00 〇FC東京 3-1 神 戸（Ｈ・味スタ）
第08節 04月10日(日)14:00 △FC東京 0-0 浦 和（Ｈ・味スタ）
第09節 04月16日(土)13:00 △FC東京 0-0 札 幌（Ａ・札幌ド）
第02節 04月20日(水)19:00 △FC東京 0-0 名古屋（Ｈ・味スタ）※代替
第10節 04月29日(金)19:00 〇FC東京 2-0 Ｇ大阪（Ｈ・国 立）
第11節 05月03日(火)17:00 ✕FC東京 1-5 福 岡（Ａ・ベススタ）
第12節 05月08日(日)15:00 ✕FC東京 0-1 鳥 栖（Ｈ・味スタ）
第13節 05月14日(土)14:00 ✕FC東京 1-2 磐 田（Ａ・ヤマハ）
第14節 05月21日(土)15:00 △FC東京 0-0 柏 （Ｈ・味スタ）
第15節 05月25日(水)19:00 〇FC東京 3-0 清 水（Ａ・アイスタ）
第16節 05月29日(日)15:00 〇FC東京 3-1 鹿 島（Ｈ・味スタ）
第17節 06月18日(土)18:00 ✕FC東京 0-2 湘 南（Ａ・レモンＳ）
第18節 06月26日(日)19:00 ✕FC東京 0-5 鳥 栖（Ａ・駅スタ）
第19節 07月02日(土)18:00 △FC東京 2-2 福 岡（Ｈ・味スタ）
第20節 07月06日(水)19:00 〇FC東京 3-0 札 幌（Ｈ・味スタ）
第21節 07月10日(日)19:00 ✕FC東京 0-3 浦 和（Ａ・埼 玉）
第22節 07月17日(日)18:00 〇FC東京 2-0 磐 田（Ｈ・味スタ）
第23節 07月30日(土)19:00 〇FC東京 2-1 広 島（Ａ・Ｅスタ）
第24節 08月07日(日)18:00 ✕FC東京 0-2 清 水（Ｈ・味スタ）
第25節 08月13日(土)19:00 FC東京✕Ｃ大阪（Ｈ・味スタ）※延期
第27節 08月27日(土)19:00 〇FC東京 6-3 柏 （Ａ・三協Ｆ柏）
第28節 09月03日(土)19:00 △FC東京 2-2 横浜FM（Ｈ・味スタ）
第29節 09月10日(土)19:00 △FC東京 0-0 Ｇ大阪（Ａ・パナスタ）
第26節 09月14日(水)19:00 ✕FC東京 1-2 神 戸（Ａ・ノエスタ）
第30節 09月18日(日)19:00 〇FC東京 2-0 京 都（Ｈ・国 立）
第31節 10月01日(土)15:00 〇FC東京 1-0 鹿 島（Ａ・カシマ）
第32節 10月08日(土)15:00 ✕FC東京 0-2 湘 南（Ｈ・味スタ）
第25節 10月12日(水)19:00 〇FC東京 4-0 Ｃ大阪（Ｈ・味スタ）※代替
第33節 10月29日(土)15:00 ✕FC東京 1-2 名古屋（Ａ・豊田ス）
第34節 11月05日(土)14:00 ✕FC東京 2-3 川 崎（Ｈ・味スタ）
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