さわやか易

人生も歴史もドラマとして描いております。易の法則とともに考えると現代がかかえる難問題の解決法が見えてきます。(猶興)

皇室の大事件「宇佐八幡宮神託事件」

2023-09-04 | 浮生は夢

道鏡

道鏡(700~772)

親分、ちょっと歴史を後戻りさせて申し訳ないのですが、奈良時代に僧侶の勢力が強くなり過ぎたから京へ遷都したということでしたよね。何か大きな事件のようなことがあったのでしょうか?

そうだったな。詳しく説明しなかったが、実は僧侶が朝廷にからむ大きな事件があったんだよ。大仏を建立したのは聖武天皇だったよな。この聖武天皇は仏教にのめり込んで、天皇の後継者も定まらないまま自ら上皇になってしまったんだ。男子は生まれて直ぐに夭折していて、皇女が1人いたんだ。その皇女が6人目の女帝・孝謙天皇となったんだ。聖武天皇の皇后だった光明上皇后が健在中は良かったんだが、上皇后が亡くなると、天皇としての重圧から孝謙天皇は長い病に臥せってしまうんだ。

天皇なんて、大変な重責ですからね。それでどうしました?

大臣の藤原仲麻呂は天武天皇の皇子を淳仁天皇として即位させ、孝謙天皇には上皇になってもらった。その孝謙上皇の病を看病していたのが僧侶の道鏡だった。孝謙上皇は道鏡のお陰ですっかり元気になったんだな。道鏡と仲良くなって、いつも一緒にいたんだ。これが問題になってしまうんだよ。

つまり男女の関係ですね。相手は上皇ですから問題ですね。

藤原仲麻呂は二人が余りにも接近するのはいかがなものかと、淳仁天皇に注意してもらうことにしたんだ。ところが注意された孝謙上皇は激怒し、「大きなお世話よ!あんたは私のお陰で天皇になったんじゃないの!その私に説教するの!黙りなさい!」それから上皇と道鏡側と、天皇と藤原仲麻呂側にひびが入り、ついには戦争になって藤原仲麻呂は殺され、淳仁天皇は流罪になってしまうんだよ。

それは大変な事件ですね。それからどうなりましたか?

孝謙上皇は現役復帰で称徳天皇になるんだよ。絶対の信頼を持った道鏡を大政大臣禅師とするんだ。道鏡は最大の権力を得て一族を次々と官職に付けるんだな。奈良の都は大混乱になっていく。さらに大事件が起こるんだよ。

さらなる大事件ですか?

道鏡は野心のとりことになって、自分が天皇になることを計画したんだ。大宰府の主神に「天下泰平には道教を皇位に就けることなり。」という宇佐八幡宮の神託があったと称徳天皇に奏上させたんだ。何も知らない称徳天皇は世の中が治まるならと乗り気になったが、神託の真偽を確かめるために、家臣の和気清麻呂を宇佐八幡宮に派遣するこにした。道鏡は清麻呂に「吉報を持ち帰ったら、お前の出世とお前の一族郎党全員を宮中に抱えてやる。」と言い含めて宇佐八幡宮に行かせる。

清麻呂の忠誠心が問われますね。

和気清麻呂が改めて受けた神託には、「天の日継は必ず帝の氏を継がしめむ。無道の人は宜しく早く掃い除くべし。」とあった。清麻呂はそのまま宮中に持ち帰ったんだ。

無道の人というのは道鏡のことですね。早く追い払えという神託ですね。

そうだ。769年のこと。「宇佐八幡宮神託事件」といって、危うく皇室の歴史を揺るがす大事件だったんだ。これは道鏡と弟、大宰府の主神が仕組んだことが後で解ったんだよ。しかし、和気清麻呂はたいへんだった。称徳天皇からは「別部穢麻呂(わけべのきたなまろ)」と改名させられ鹿児島へ流罪になる。道鏡はその途中で暗殺しようとするが、辛くも失敗する。翌年770年に称徳天皇は亡くなり、道教は遠く下野国に左遷され、世を去った。和気清麻呂は復帰して、桓武天皇のもとで要職に就き大活躍したという話だ。

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