晴走雨読

晴耕雨読ではないが、晴れたらランニング、雨が降れば読書、きままな毎日

ジェイムス・スーズマン 『「本当の豊かさ」はブッシュマンが知っている』 その1 

2022-11-26 13:58:16 | Weblog

2022.11 今日この頃。国家なき社会を追い求めている僕にとって、国のフラッグを掲げて戦うワールドカップやオリンピックには、いつもながら熱くなれない。反対に醒めてしまう。多様な出身地の選手で構成される地域のクラブチームは、コンサドーレをはじめとして応援し甲斐がある。国技とされている大相撲も、国のためなどではなく力士たちが稽古を積んでぶつかり合う姿に見入ってしまう。

 

『「本当の豊かさ」はブッシュマンが知っている』(ジェイムス・スーズマン著 NHK出版局 2019年刊) その1 晴走雨読 欲望の資本主義 電通       

「本当の豊かさ」とはどういうものなのだろうか。自分に引き合わせて考えてみれば、一言でいうと「時間」だ。労働や家事、雑事など義務的に費消する時間が極力少なく、「晴れた日には、ランニング、雨が降れば読書」と、気ままに使える時間が多いことが僕の考える「豊かさ」だ。

少し観点が異なるが本書で著者は、「労働が私たちの生活の形を作って意義を与え、“私たちは何者か”を定義する」と述べ、働くことが私たちの存在を意味づけるのだという。労働することの重要性、おそらく労働のやりがい、労働を通じて生きがいを感じているかなどがポイントと述べる。だが、現代においては「人々が仕事に取りつかれており」(P376)と、労働のあり方が異常で、労働に対する考え方が本来的なところからズレてしまっていることを指摘する。

このような問題意識を持って人類学者である著者は、ブッシュマンたちが今なお持ち続けている思想に学ぼうというのである。もちろん、ブッシュマンとて現代の文明社会の中で生活をしているのであるから、昔からの狩猟採集生活だけをしているわけではなく、「彼らは現代国家の一国民であると同時に国家への完全な参加から除外され古代の狩猟採集民の技と精神をもらって、近代化にかかわらなくてはならないのだ」(P41)と述べ、彼らの現実的な生活とは別の、彼らの精神の中にあり続けているものの考え方、物事の捉え方について学ぶことができるという。

では、彼らの考え方を見る。「狩猟採集民はすでに手にしているものより多くを望まないというシンプルな方法によって満足している」(P31)。また、「叶うはずがない願望に支配されない」(P32)と、節度を持つことを基本におく。これは、個人では使いきれないほどお金があってももっとほしい、儲けるために儲ける、欲望が欲望をよぶ「欲望の資本主義」に対する警句だ。「足るを知る」という言葉が彼らの考え方を表す言葉としてふさわしいと思う。

「本当の豊かさ」とはどういうものなのだろうか。巷で話題になっている東京五輪汚職事件。逮捕された元電通の高橋某など、80歳にならんとしているのになぜあそこまで金を欲しがるのか。個人で使う限度を超えていても、金をせしめるために次から次と口利き、談合、中抜きを重ねて私腹を肥やした。歯止めのかからぬマネーゲーム。ブッシュマンの考えからは一番遠い所にあるのだろう。


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