見もの・読みもの日記

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休館前のお楽しみ/自然が彩るかたちとこころ(三井記念美術館)

2021-07-14 22:31:02 | 行ったもの(美術館・見仏)

三井記念美術館 コレクション名品展『自然が彩るかたちとこころ-絵画・茶道具・調度品・能装束など-』(2021年7月10日~8月22日)

 同館選りすぐりの名品を、(1)理想化された自然を表す (2)自然をデフォルメして表す (3)銘を通して自然を愛でる (4)素材を活かして自然を表す (5)実在する風景を表す (6)文学(物語や詩歌)のなかの自然を表す (7)自然物を造形化する (8)掌のなかの自然 (9)自然を象徴するかたち、の9つのテーマに基づいて展示。構成は、茶道具、絵画、工芸などジャンル別になっているのだが、キャプションにさりげなく、どのテーマに該当する作品かが示されている。

 茶道具に(3)が多いのは当然だが、光悦作の黒楽茶碗「銘:雨雲」は、無心に眺めても素晴らしいが、銘を意識するとまた格別によい。見る位置によっては、黒雲にきらめく稲妻のような割れ目が内側に走っているのを発見した。志野茶碗「銘:卯花墻」は、今回、展示室3(茶室ふうの展示ケース)に置かれており、どっしりした存在感があった。

 絵画は、酒井抱一筆『秋草に兎図襖』を初めて見たような気がした。戸襖(板襖)で、驟雨に乱れる秋草と、その先に飛び出した目の赤い白兎が描かれている。斜めに走る細かい線が激しい雨脚を表していると思ったが、よく見たら描かれた線ではなく、幅数センチの木材を斜めに並べて、斜めの縞模様をつくっているのだった。おもしろい。

 川端玉章の『東閣観梅・雪山楼閣図』2幅は、いかにも玉章らしい、色彩の美しい、精密で写実的な山水楼閣図だった。若い頃、三井越後屋の奉公人だったというのがおもしろい。同じ玉章でも『京都名所十二月』は、ふんわり柔らかな作風。展示は4幅で、嵐山の渡月橋(三月)と金閣寺(七月)はすぐ分かった。夜の四条(六月)は、言われてみればそうなのだが、いまひとつ画面の中の位置関係が掴めない。修学院の千歳橋(九月)は、画像を検索してみて、初めてこんなかわいい屋根付き橋があることを知った。修学院離宮、行ったことがないので一度は行きたい。

 工芸は、明治・大正・昭和初期に制作された象彦の蒔絵がとてもよかった。『宇治川先陣蒔絵硯箱』は、蓋のオモテに佐々木高綱の武者絵を配しているのだが、敢えて蓋裏を展示する。極細の線の繰り返しで表現された川波の図案がオシャレ。作者名は、ただの「象彦(西村彦兵衛)」表記のものと「八代」「六代」が注記されているものがあった。象彦のホームページを見ると、明治維新のときが四代目(現在、十代目)のようだ。

 高瀬好山の自在置物(伊勢海老!昆虫!)や安藤緑山の染象牙(牙彫)(蜜柑!)も久しぶりに見ることができて嬉しかった。『波に舟彫木彩漆八足卓』は変わった小卓で、表面は青海波文の波間に帆掛け船が漂う様を細かい彫りで表している。日本製か中国製か判断がつかないとのこと。

 なお、同館は本展終了の8月末から2022年4月下旬までリニューアル工事のため休館するという。え~首都圏のごひいき美術館が、いま複数閉まっているので残念。あと、私はここのミュージアムカフェの夏メニュー・冷やし胡麻だれうどんが好きなのだ(当初はごまだれそうめんだった)。来年の夏も食べられますように。


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