見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2023年5月展覧会拾遺(その2)

2023-05-28 21:59:05 | 行ったもの(美術館・見仏)

國學院大學博物館 春の特別列品『土御門家がみた宇宙(そら)-江戸時代の天文観測-』(2023年4月1日~5月14日)

 陰陽家として主に天文道をもって朝廷に仕えた土御門家。その役割のひとつに「天文密奏」(異常な天文現象が観測された場合に、その観測記録と解釈を内密に上奏すること)があり、国学院大学図書館は、こうした「天文密奏」やその根拠となる天文観測記録を含む「土御門家記録」を所蔵している。特に嘉永6年(1853)のクリンカーフューズ彗星、安政5年(1858)のドナティ彗星にはまとまった観測記録が残されている。いや面白かった! 星図(中国風の)に彗星の軌道を書き入れたものあり、高度や方角を数字で書き留めたものあり(地上〇〇度、方位卯南〇〇度など)、愛宕山の空に真上に長い尾を引いた彗星のスケッチあり。勘文(上奏文)の控もある。

 江戸時代の天文学といえば幕府天文方が思い浮かぶが、ドナティ彗星の観測値を比較すると、幕府天文方や大坂の町人天文学者(間家)よりも土御門家のほうが欧米のものに近いことが分かったという。これは意外!呪術や祭祀だけをやっていたわけではないのだな。明治時代初期の『京都梅小路土御門旧邸宅図』も出ていた。私は、むかしこの土御門旧邸と土御門家の菩提所・梅林寺のあたりをうろうろしたことがある。久しぶりにググってみたら、梅林寺さんがtwitterをやっているのを発見した。それと「京都千年天文学街道」というサイトがあって、天文と関連の深い歴史上の人物のゆかりの地を探訪するツアーを開催しているようだ。いいな、参加してみたい。

國學院大學博物館 企画展『祓-儀礼と思想-』(2023年5月20日~7月9日)

 祓(はらえ)の儀礼と思想の形成の歴史を様々な資料から明らかにする。会場で「六月晦大祓(みなづきのつごもりのおおはらえ)」という言葉や、茅の輪の写真を見て、なるほど、この時期にふさわしい展示なんだな、と納得。祓は神道の中核的な儀礼であるが、道教・仏教・陰陽道・儒教などと関わりながら、徐々に形成されてきたという。

たばこと塩の博物館 『没後200年 江戸の知の巨星 太田南畝の世界』(2023年4月29日~6月25日)

 蜀山人ほか数々の異名を持つ文化人・大田南畝(1749-1823)の生涯と功績を紹介。私は、まず文学史で名前を覚えた後、確か国立公文書館の展示で、学問吟味に首席合格し、官吏として能力を発揮した人物であることを知り、へえ~と驚いた記憶がある。本展にも、竹橋の書物蔵で勘定所の帳面を整理していた時期や、大坂の銅座や長崎に出張した御用に関する資料が出ていた。「五月雨や日もたけ橋の反故しらべ 今日もふる帳 明日も古帳」という狂歌ににんまりしてしまった(私も竹橋が勤務地なのだが、仕事は古帳調べではない)。このほか南畝は、体験や伝聞・読書を筆まめに記録し、「叢書」を編纂して典籍の保存にも努めた。あわせて、南畝の知友でたばこ屋でもあった二人・平秩東作と蘭奢亭薫も紹介されている。江戸時代のたばこ屋って、どんな商売だったんだろう?と気になってしまった(→江戸時代のたばこ文化)。

三井記念美術館 NHK大河ドラマ特別展『どうする家康』(2023年4月15日~6月11日)

 今年の大河ドラマは、流し見を続けている程度。この特別展にも、あまり関心が持てなかったが、まあせっかくだからという気持ちで見に行った。そうしたら、朝から開館待ちの老若男女の長い列ができていて、さすが家康公と感心した。展示は久能山東照宮博物館の所蔵品が中心となっている。私は久能山の博物館は行ったことがない(たぶん)ので、珍しいものをたくさん見ることができた。金陀美具足も(たぶん)初めて見た。あとは合戦図や道中図・洛中洛外図の屏風が多くて楽しかった。『大日本五道中図屏風』は、過去に見た記憶がなかったが、三井記念美術館の所蔵なのだな。『関ケ原合戦図屏風(津軽屏風)』(大阪歴史博物館)は前期展示だったので見られず。残念~。

永青文庫 令和5年度初夏展『細川家の茶道具-千利休と細川三斎-』(2023年5月20日~7月17日)

 千利休と細川三斎(忠興)ゆかりの名品を中心に、細川家に伝わる茶道具の数々を展覧。黒や焦茶色の地味でシックな茶道具が多い。なお、2021年に『花伝書抜書』の紙背文書として発見された、古田織部から細川三斎に宛てた書状が初公開されている。また、近現代の細川四代(護立、護貞、護煕、護光)が手掛けた茶道具も展示されていて、興味深かった。護煕氏の大きめの黒楽茶碗もいいと思ったが、護光氏(1974-)の作品もいい。信楽・唐津・高麗・楽焼などを手がける陶芸家で、永青文庫の理事も務めていらっしゃることを初めて知った。あと、細川家にゆかりの深い沢庵宗彭(1573-1645)の生誕450年を記念し、頂相や墨蹟のほか、熊本の妙解寺山門の対聯が特別展示されている。「万歳万歳万万歳皇風永扇/九州九州九九州仏法流布」というもので、真面目なのかふざけてるのか、つい噴き出してしまった。


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