見もの・読みもの日記

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2021年10月@九州:白馬、翔びたつ(佐賀県美)

2021-10-12 22:17:19 | 行ったもの(美術館・見仏)

佐賀県立美術館 特別展『白馬、翔びたつ-黒田清輝と岡田三郎助-』(2021年9月 7日~10月17日)

 先週末は九州へ遊びに行ってきた。九博で、どうしても見たい展示があって、ピンポイントでこの週末に決めた。そうしたら、この展覧会にも行きたくなって、金曜に有休をとって2泊3日の旅行にした。思えば、旅行のために有休をとるのも、飛行機に乗るのも、ほぼ2年ぶりである。

 金曜は、東京・羽田空港から福岡空港へ。空港から高速バスで佐賀駅バスセンターに直行した。路線バスに乗り換えて、お堀に囲まれた佐賀城公園へ。広々した敷地に、巨大で斬新なデザインの博物館と美術館が並んでいる。

 本展は「日本近代洋画の父」と称えられる鹿児島県出身の黒田清輝と、繊細優美な女性像を描いた佐賀生まれの岡田三郎助について、彼らの代表作を展示し、それぞれが求めた美を紹介する。展覧会タイトルは、もちろん、彼らが結成した洋画グループ「白馬会」から取られている。

 黒田清輝の展覧会は、これまで東京で何度か見たことがあるが、岡田三郎助を取り上げるのは珍しくて、見たいと思ったのである。今年、『コレクター福富太郎の眼』展で見た『あやめの衣』に見惚れてしまったせいもある。展示作品は、文書やスケッチ等を含め110件。ざっと数えたところ、黒田の資料が35件、岡田が30件くらい。それ以外に、やはり白馬会の洋画家である、久米桂一郎、小代為重、藤島武二、青木繁の作品もあり、この二人の師匠であるラファエル・コラン、さらに山本芳翠、百武兼行、曽山幸彦、浅井忠など、明治大正の洋画好きにはたまらない、充実したラインナップだった。そして、かなりの数の展示作品が、同館コレクションであることにも感心した。地方美術館、あなどれない。

 山本芳翠の3件『若い娘の肖像』『花化粧』『帆船』はどれも初めて見た。和服の少女が大きな薔薇の花簪を額にあてて鏡を見る図の『花化粧』は東博所蔵だというが、一度も見たことがない。曽山幸彦の『弓術之図』(東大工・建築学専攻)は、泉屋博古館分館の住友財団修復助成30年記念展で見たもので、思わぬ再会。コランの『若い娘』(福岡市美術館)は、品のいいピンナップガールみたいな大衆性のある美女だけど、嫌いじゃない。黒田の日記からは、コラン先生の愛情深い人柄が感じとれた。

 黒田清輝は、代表作の『婦人像(厨房)』や『昔語り』画稿は何度も見ているので、記憶にない小品のほうが新鮮で印象に残った。『画室内』(佐賀県美)や『アトリエ』(鹿児島市美)、花瓶に山盛りの小菊を描いた『菊』(ポーラ美術館)など。『山かげの雪』(黎明館)に黒田は雪景色を描くことを好んだという解説があり、初めて認識した。

 岡田三郎助の作品は、こんなにまとめて見たのは初めてだと思う。人物画がどれも好き。自画像、西洋婦人、老人、農家の娘など、いろいろあるけど、面長で目の大きい、着物姿の女性像(いくつかバリエーションがある)が一番好き。『萩』(兵庫県美)とか『薊』(佐賀県美)とか。晩年の『来信』『裸婦』のこってりした感じも好き。代表作『あやめの衣』は、絵画の背景と同じような、明るいクリームイエロー(かな?)の壁に掛けた演出が素敵だった。あと、黒田が描いた『大隈重信肖像』と岡田が描いた『大隈綾子肖像』という取り合わせも面白かったので記録しておく。夫婦とも好人物だか胆力のありそうな風貌に描かれている。

 なお、同館敷地内には、東京都渋谷区恵比寿にあった岡田のアトリエが移築され、公開されている。自宅に隣接して建てられた木造の洋風建築で、岡田が主宰した画塾「女子洋画研究所」の教室として使用された部屋もある。ちょっと調べたら、三岸節子やいわさきちひろも岡田の画塾で学んだらしい。へええ。→ドキュメンタリー映画『あるアトリエの100年

 そして、また佐賀駅に戻り、福岡天神行きのバスに乗った。正味3時間足らずの滞在だった。実は佐賀県は、唐津や伊万里に行ったことはあるのだが、佐賀市に足を踏み入れたのは人生初だと思う(鉄道で通過の経験はあり)。むかし、佐賀出身の年下の友人が「ほんとに何もないところなの!」と怒ったように言っていたのを思い出す。また来ることはあるだろうか。意外と一度縁ができると、ありそうな気がする。

10/14追記:上記のように書いたあと、なんとなく気になって調べたら、私は2009年に特別展『運慶流』を見るために佐賀県立美術館に行っていたことが判明した。うーむ、完全に忘れていた。このときも、長崎に泊まって佐賀へ日帰りで出かけるという強行軍だったので、美術館以外を全く見ていないのだ。次の機会こそ市内観光を。


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