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START&ミサイル:狂ってみたところで始まらない

2020-09-21 17:52:48 | 欧州情勢複雑怪奇

ロシアには一年中様々な職業の日というのがある。9月19日はロシアのGunsmith Dayだった。

gunsmithとは直訳すると鉄砲鍛冶でしょうね。といって今日は、銃のみならず、ロケット、ミサイルを含むあらゆる武器を作る人たちのことを指すらしい。多分ロシアが昔から最も強い分野なんじゃないかと思ってみたりもする。

で、今年のその日は、極超音速滑空体「アバンガルド」のオリジナルのアイデアを現実にしていった重要人物であるらしいソ連時代からのエンジニアGerbert Yefremovさんが、プーチンと対話し、プーチンは我々の国のためのその功績は絶大だと絶賛していた。

Putin Honors Avangard Creator Yefremov on Gunsmith's Day

 

ロシアの極超音速兵器のラインナップがとてつもなく画期的なものだというのは徐々に認められてきているわけだけど、プーチンはエフレモフ(Yefremov)さんが成した功績を、今日の我々にとってそれは、ソ連時代の科学者イゴール・クルチャトフセルゲイ・コロリョフが成したものに相当する、と言った。

the implementation of your idea is undoubtedly comparable to the accomplishments of the nuclear and missile projects by the Soviet Union conducted by outstanding Soviet scientists Igor Kurchatov and Sergei Korolev. Your work is equal to that for us today. 

http://en.kremlin.ru/events/president/news/64058

 

クルチャトフはソ連の核物理学者でソ連の原爆開発プロジェクトを率いたことで有名な人。

 

コロリョフは、ソ連のロケット開発指導者で世界初のICBMであるR-7を開発した人。

SKorolow.jpg

 

これクラスなのかぁ~と驚く。

でもよくよく考えれば、これは確かにそうなのかもしれない。アバンガルドだけでなく極超音速ミサイルがロシア軍の標準装備になっていくということは、戦い方のレベルが根本的に変わるんだろうなと私でも想像できる。

これは単にミサイルの速度が上がったというのではなく、馬車の時代から車の時代になるぐらいのインパクトとなる可能性がある。

 

で、このラインナップを公式に明らかにしたのは2018年3月1日。ここでプーチンは2001年末に、冷戦時代を支えていたABM条約をブッシュが破棄したことがロシアがここまで開発せざるを得なかった根本的な理由だと大宣言していた。

つまり、ロシアを核ミサイルで脅す体制がここで可能になった。

要するに、無制限に張り合わないで、限定することで相互確証破壊を成り立たせていた。つまり、これこそ冷戦が極端に恐ろしいことにならずにすんだ肝だった。

それをいきなりブッシュがやめると言い出した。ソ連がない以上、ロシアとパリティー(同等)にしておく必要はない、つまり、ロシアはアメリカのターゲットだ、というロジックですね。

ロシアは当然大反発をするが、聞き入れられず2001年12月31日、アメリカが破棄する。

プーチンの2018年一般教書演説:強制MAD

 

その後アメリカは属国領土内に「ミサイル防衛網」なるものを作って、ロシアを核で脅していたわけだけど、そんなことはさせないと踏ん張ったのがロシアの科学者で、ついに2018年に、お前らの「防衛網」という名の仕掛けによっても俺たちのミサイルは無効化されない、それを凌駕して、お前らの領土内に届く。

つまり、もう一極支配妄想は終わりだ、と宣言したわけです。

 

対して、そこから2年経ったけど、アメリカから「うちだって極超音速ミサイルぐらいある」などといった言明も届かないところを見ると、今持ってる以上のものはないんでしょうね。

ということは、戦略兵器削減交渉を話したいと思うのならば、最低でも対等の立場で話さないとならない。(現実にはロシア優位であるとしても)

そして、現在残っている米露間の戦略兵器削減の枠組み(START)は1つだけ。来年2月だったかに切れる。

ロシアは、これが無くなると、ノーガードの競争になるんだから、なくさないよう延長するよう話し合いを開始すべきだと何年も前から言ってる。

アメリカの方は、自分優位で、自分たちは、例の「フル・スペクトラム・ドミナンス」(全球的な完全な優位)こそ我々であるというドクトリンをやめてないので、ロシアと対等に話し合うとか、ふざけてるぜ、という態度を崩さない。

去年あたりからは中国も入れろみたいにして、ふざけてる。中国は核の極限を持ってるのは米露なんだからウチは入らないといい、ロシアも、中国を無理にテーブルに付かせる気はないと何度も念押ししている。

流れから見ればわかる通り、ロシアと中国が、そして全世界の普通の人間が望んでいるのは、まぁなんちゅーか、「フル・スペクトラム・ドミナンス」とかいうフザケた考えをやめろという話ですからね。完全支配派はロジックの当然の帰結として核は使えるという考えも捨てられない。

ここが肝なわけですが、アメの方はそれを見ないように、回避して回避してわーわーふざけてる。

 

という中、昨日になって、米が、STARTを延長しろ、俺は何も変わらないが、みたいなまたまた妙な条件を付けた提案をしてきた模様。

US envoy says Russia must agree to arms control deal with no NATO scaleback, or else it’s ‘happy to modernize nukes without START’ 

https://www.rt.com/news/501234-start-treaty-modernize-nuclear-weapons/

 

ということで、これはまぁ物別れになるんじゃないでしょうか。ただ、このままだとアメリカは自分の方が回避して、STARTの期限が切れちゃったという話になりそうなので、ロシアはこうしなければならない、ああしなければならない、それなのいこれもしない、あれもしない、ロシアは無責任である、という議論を作ろうとしているものと思う。

 

ということで、「フル・スペクトラム・ドミナンス」路線は継続するらしい。ただそれは、破れ傘なわけだがというのが現実。

 

■ ふざけているのか狂っているのか 1

で、トランプは数日前、ミネソタのキャンペーン中に、

ロシアは極超音速ミサイルを持っている

ロシアは情報を盗んだ。

“You know, they have a super-duper hypersonic missile… it is five times faster than a normal missile,” Trump said at a campaign rally in Minnesota. “Russia stole that information. You knew that, you knew that? Russia received this information and then built [the rocket].” 

とか、

私たちはとても進んでいるので、習近平もプーチンも、みんな(にとって)、私たちは世界の羨望の的だ。しかし彼らは私たちが持っているものをよくわかってない、でも、彼らは私たちが彼らが聞いたこともないものを持っていることは知ってる

“We have weapons that are so advanced that [Chinese] President Xi [Jinping], [Russian President Vladimir] Putin, everybody, we’re the envy of the world. But they don’t know quite what we have, but they know that we have stuff they have never even heard of before,” the President said.

とか言ったらしい。

今のところこの話を伝えているのはロシアメディア複数のみなので、一応アメリカ側の出方を見てみたいとは思う。

トランプを侮蔑してやまない米メディアが拾わないのは不思議なぐらい美味しいネタだとは思うが、多分、これは米メディアがペンタゴンに止められて(あるいは忖度して)いる線もあると思うな。なぜなら、実はとてつもなく大きな話だから。しかも、その大きな話を、大統領ともあろう人がインチキ話をいいふらしている。

何がしたいのか謎というより、全体的にバラバラなんだろうなという気もする。

精一杯トランプを庇ってみるなら、こういう騒ぎを作ることによって、現実のアメリカを周知して、一般人の力を借りて、フルスペクトラムとかいうアホな状態を否定していこうという作戦かもしれない・・・・と一応書いてみたい。

そもそも、トランプは俺らが持っているのは super-duperミサイル(「超スゴイミサイル」、といった感じ)と呼んでいるので、これ自体、米の現状をあてこすっているとも読めるわけだからね。

渾身の冷戦護持派大勝利であるらしい日本 (2)

 

■ ふざけているのか狂っているのか 2

記事の内容とは離れるけど、ふざけているのか狂っているのかわからない事件が今日もあった。

米大統領候補のバイデンが奇妙なことを言っている。奇妙というか、到底真面目に聞けないでしょ、それ???という類。

 

(トランプのこの路線でいくと)、私が話し終えるまでに2億人の人間が死ぬと見込まれてるのだ、と言ってる。マジで。

 

 

200ミリオンは2億人。アメリカの人口は約3億。いきなり2/3が死ぬってどうやって???? イエローストーンでも爆発するんだろうか? 未知の隕石か?

いやしかし、バイデンの話が終ってもアメリカで大量死は起こっていないようなので、よかったと言うべきなんだろうとは思うが、いやしかし、なんだこれは!!

聴衆は、ざわつくことすらできなかったに違いない。

 

■ オマケ

多分、バイデンは、200 thousand と言うべきところだったんでしょう。チェックすると直近の米の新コロナの死亡者は20万人ぐらい。

だがしかし、これをちょっとしたバイデンの失言と言えないのは、頭が働いていたら、たとえプロンプトに 200 millionと書いてあっても、瞬間的に、2億人だぁ?おかしいなこれはと判断して、so many people will die(とーっても沢山の人が死ぬ)とかなんとか言うのが普通の大人でしょう。

それができない人なのねというのがまるわかりになった。


 


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5 コメント

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”原発の父”ではなく”原爆の父 (И.Симомура)
2020-09-21 18:29:12
些細なことですが,クルチャートフは”原発の父”ではなく”原爆の父”です.
ありがとうございますあり (ブログ主)
2020-09-21 19:36:04
ありがとうございます。
私のタイプミスですので直しました。
トランプの第2マンハッタン計画宣言 (ローレライ)
2020-09-22 11:26:16
トランプ大統領の第2マンハッタン計画宣言はアメリカの大統領選挙絡みなのでバイデンの発言も意味がある。
何をするんでしょう? (ブログ主)
2020-09-22 12:46:26
ローレライさん、

第2マンハッタン計画なんですか。何をするんでしょうね。日本の軍事予算と宇宙開発費がゲロゲロに上昇しているのは、この計画に入ってるんでしょう!

その間ロシア人が今後昼寝を決め込まない限り、その頃にはハイパーソニック系は2世代とか3世代目とかになっているんでしょう。

どんな世の中になるんでしょうね、ほんと。
Unknown (にゃんこ)
2020-09-23 19:25:42
昨日、娘に「中国の子供たちが一番成りたいと思っている職業が何が分かる?」と聞かれました。男の子ならスポーツ選手かなと思っていたら、なんと科学者だそうです。「サッカー選手とかじゃないのよ」と言われました。
何かの本で、アメリカがステルス戦闘機を設計するときソ連から流出した論文情報を基にしたというのを読んだ記憶があります。昔の論文で、当時は誰も評価しなかったらしいですが。

トランプさんだけでなく、技術者でもなんでもない人たちが、「アメリカから技術を盗んだ」と言い張っていますね。知りもしない事を。

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