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金融危機、フランス大混乱、アサド大統領モスクワ訪問とシリア動乱振り返り

2023-03-20 00:12:10 | WW1&2
先週、アメリカのあまり普通でない銀行があまり利口な運用をしてこなかったことを一つの要因としてあっさり破綻したことを受けて、その余波が次第次第に広がり、折からの金融政策の変更の影響が重なり、金融危機はまだ始まったばかりといった趣で週末を迎えた。

週末には、クレディースイスという巨大な銀行の行方が話合わせれている模様で、この結果次第では週明けはまた大波乱なのでしょう。

多くの人が言っているように、多くの銀行、特に欧州の銀行は2008年の傷を治せなかった。治せないから金利なしの世界にするという甘いけど中毒性のある薬を使ってはみたものの、今度は手放せなくなって今日を迎えている。いつまでもシャブを打ったら身体が持たなくなるのと似てるのよ。

他方、アメリカのFRBは金融緩和を金融引き締めにすることで、なんとかして健康を増進したがっている感じはあるわけだが(劇的な運動は避けてください!)、今回、またまた大量に融資した模様。

Banks sought record Fed liquidity in wake of SVB collapse

どうなることやら。

また、シリコンバレー銀行という銀行そのものの運用の仕方も、なんかすさまじく迂闊だったように見えていたりもする。緩和バブルの象徴ですか、といった趣の銀行。(金利がほぼないから、杜撰なビジネスプランが横行し、借金は永遠だ主義がそこはかとなく維持されているために国家側から出るお金も緩くなる)

そういうのを監視するはずだった米の体制も、ほんとにそれでよかったの???という代物だった模様。

2008年の危機を受けて作られていた体制は、トランプちゃんが薄めていた。

銀行監督は2018年にトランプ政権と共和党が支配する米議会によって緩められ、資産が2500億ドル(約33兆400億円)を下回る銀行を対象とした年次ストレステストは必須ではなくなった。SVBのグレッグ・ベッカー最高経営責任者(CEO)はかつて、この規制緩和を訴えていた一人だ。緩和が発効すると、SVBは急速に成長。22年の早い時期には、資産は2200億ドルに積み上がった。17年末の時点では510億ドルだった。

SVBの問題、当局は数カ月前から警告-SF連銀が監督チームを交代
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-03-17/RRO2X4T0G1KW01?srnd=cojp-v2


週明けもまた大変なことになるでしょう。


動乱の臭いのする欧州 - フランス

そんな中、欧州方面では、ウクライナ対応を巡ってデモが頻発しているのに続き各国で経済対応を巡って国民の不満は激増している。

特にフランスでは、定年の延長を巡って国論も議会も紛糾する中、マクロン政権が議会をすっとばして政策を通したため、さらに紛糾。

フランス政府に怒りの声、定年延長の強行受け


下院では、首相が強行策の声明文を読み上げる際に、反対している党派が、国歌「ラ・マルセイエーズ」を歌い出すという事態が発生。

短いので見て損はないと思います。

'Non!' - French MPs disrupt pension bill by singing the national anthem

武器を取れ、市民たちよ、隊列組んで進めー、といったところがハイライトのこの歌を議会で歌うってどうなの、と思ったりもするが、でも、武器を持った対決の代わりに議会というリングが設定されていると考えれば、それをスルーする奴がいたら怒るしかない、とも思う。実力行使を思い出させながら・・・。

そうはさせじ、という決意なのか単なる性癖なのか難しいところだが、いやしかし、フランス当局のデモの取り締まりの暴力性は相変わらずスゴイ。ホントに殴る。まぁマクロンが民衆にビンタくらうことがあり得る国家だから、ある意味バランスしているような気もしないでもない(ホント?)。


しかしそれでも人は外に出る。
 

しかし、こうなった後に双方が納得できる解決策を求めるのは大変だなとも思う。また、今般は年金問題だけど、全般的状況としてインフレが長引くことから来る不満は今後も続くわけでしょ。

でも欧州諸国の場合、EU/NATOという上位レイヤーが作る方針が強く支配する構造になってしまっているので、国内の問題を国内だけで片付けられない。

例えば、EU/NATOの対ロシア戦争に加担してなけりゃ、食料もウランも石油も今まで通り旧ソ連地区から安価に入ってきたのに、それができなくなったからインフラが引き起こされ、その方針を支えるために馬鹿みたいな軍事・治安まわりの金がかかるという構造がある。この状況からフリーな国家を想像してみればわかる。事情は全然違ってくる。それなりに国家国民のための妥協点を探すしかなくなるだろう。こういう選択をヨーロッパの個々の国家は取り得るのか?

ということで、欧州方面の政治はもはやEU/NATOというレイヤーが著しく不都合になっていると考えることをパスしては語れないフェーズになったと思う。大変な道ですね。


■ アサド大統領、モスクワ訪問

そんな欧州を後目に、ミドル地区では、14日、シリアのアサド大統領がモスクワを訪問、15日にロシアのプーチン大統領と会談した。



Meeting with President of Syria Bashar al-Assad

先月のトルコ・シリア地震でのロシアの支援に感謝し、ロシアが立場を変えずずっと支援してくてることを喜んでいる旨を述べ、さらに、

シリアは、今般のロシアの特別軍事作戦を支持しているし、ドネツク、ルガンスク、ヘルソン、ザポロージャを含んだロシアの新しい国境を認めていると言及。

そして、こんなことを言う。
 
ウクライナでの特別作戦の開始以来初めての訪問なので、この機会を利用して、ネオナチとその先任の者たちに対するこの特別作戦をシリアは支持していると言うことをもう一度述べたいと思います。

私が新旧のナチに言及しているのは、西側が過去に古いナチを受け入れ、現在は新しいナチを支持し始めているからです。私たちの立場は、友情と献身だけに基づいているわけではありません。私たちの立場は、世界を安定させる必要性から生じています。そうしなければ、大きな雷が鳴り響くことになるのです


アサド大統領は、ウクライナにいるのが昔のナチの子分のバンデラ一派が主体で、その派生形が現在だという認識を前々から表明しているので、あっさりこのようなことを言う。現在世界でこうした認識を正式に表明する、プーチン以外では唯一の国家指導者ではなかろうか?

大きな雷というのは、要するに大戦争のことでしょうね。

経済が上手くいかなくなったらデカい戦争して解決しようとかいう不埒な奴らがいるが、そうはさせない、というのはプーチンが過去に何度か触れているところだし、多くの人が既に認識しているところでもあるでしょう。


■ 振り返ってみる

シリアの一件が本当に重要なのは、もし2015年、16年にロシアが乗り出さなかったらどうなっていたのかを考えればわかる。

要するに、西側が、ユーゴやイラク、リビアをずたずたにしていったのと同じことが、まだ続いていたわけですよ。

西側というのは軍事覇権をハリウッド映画がカバーアップしているような設計だから、軍事的に自分より強くないところを勝手に荒らしまわって、えへらえへらしていた。ところがそこにロシアが登場して、シリアを陥落させられないのみならず、ロシア軍は有能で、ロシアが持ってると言っていた優秀な兵器類が本当にあることも確認された。

シリアについて書いている頃よく使った図だけど、ここにロシア軍が小さいながらも基地を持ちS-400を設置したというのは、もうね、びっくりな出来事だったわけです。これ以降、シリア領内に航空機が勝手に入り込むと巨大なリスクが発生することがデフォルトになった(マジで、イスラエルや米の軍用機が降りた。その後またへんな策を弄するんだけど前のようなことはもうできない)。




そこから、サウジの国王がロシアを訪問するという出来事があり(2017年)、次第次第に、テロ資金供与の主力であるサウジが変身し始めた。


2017-10-08 18:02:52


西側がイスラム過激派を使っては事件を起こしてきた仕組みが壊れ始めたとも言えますね。

(もとより2014年には、プーチンその人が、西側が「テロリスト」と呼びならわしているそれは、傭兵だって知ってるけ?と西側のジャーナリストを前に発言し、その動画が1000万回以上視聴されるという事態が生じていた。)

この成果がもたらされるにあたっては、2015年にシリア国から頼まれてロシアが介入する前に、2014年にロシアとイランが長く懸案となっていたカスピ海を巡る主権、漁業権の問題を解決して、カスピ海は沿岸5か国の共同の戦略的財産であると宣言したことが非常に大きかった。


これがなければ、2015年にロシア軍がカスピ艦隊からシリアの前の海にミサイルを撃ち込むことも、カスピ海を使ってシリアからモスクワへと安全なルートを作ることもできなかった。

アサド大統領は2015年、まだ西側メディアが、アサドを倒せーーーと大騒ぎをしている最中に、極秘にモスクワを訪問したことがあった。その時のルートだと言われているのがこれ。




そして、この流れが南北回廊となって結実、ロシア、イラン、アゼルバイジャン、インドが貿易で繋がっている。また、見ればわかる通りカザフスタンなどの内陸国も陸上のルートで乗り入れられる。



付近の大きな鉄道路線図。東西が交わるの。




去年からの西側によるロシア締め出し運動でも、イランもインドも別に動じることなく、むしろ西側の制裁をどうかいくぐるかで知恵を出し合っていた。インドは大量の原油を安価に購入した。

ちょっと見にくいんだけど、これがインドの原油供給者を表したもの。

一番右が2022年。積み上げグラフの下から、イラク(赤)、サウジ(緑)、青(ロシア)、紺(UAE)と続く。




ロシアは2011年から2021年までインドへの主要供給国ではなかった(ソ連時代にはあっただろうが)。また、周辺に石油持ちがたくさんいるので買う理由もなかったでしょう。しかし、購入した。いろんな調整の結果としてこうなったんだろうと思われる。この決済はもちろんドルではない。


というわけで、今回のウクライナでの一件は、2016年にもうこりゃあかんなと思ってやめればよかったものを、西側はそうはせず、ミンスク合意で時間稼ぎをして戦争準備をして、金融と軍事とプロパガンダでプーチンを追い落とし、ロシア国内をぐじゃぐじゃにして、ロシアを解体するーーーという方針を捨てられず、結局そっちを取ったことの最終局面として捉えられるべき一件。

今回、ウクライナとロシアが停戦すれば終わりよ、みたいなことを言っている人は、過去10年ぐらい眠ってたんじゃないかと思われる。

実際いろんな出来事があっていろんな変化があった。

2016年にはまだそこまでとは見えなかっただろうと思うけど、現在では、ユーラシア側と言うより、西側はこの先どうなるんだろうという視点で見た方がいいんじゃないかというぐらいの事態になっていると思う。

今週は、習近平さんがモスクワを訪問することになっているが、こういう出来事が発表されたというだけで、既に西側リーダー層にはある種のパニックが起こっているように見える。


■ オマケ

南北回廊のもっときれいな図がないかなと思って検索したら、ドイツDWが書いた地図が出てきた。



ペテルブルクの前の、バルト海からロシアを締め出し、黒海をNATOの海にしたらロシアは交易に支障をきたす、とEUのリーダー層はそう思ってたんだろうと思うわけです。

ロシア海軍が、ペテルブルクを出て、バルト海からUKの前を通って、ジブラルタル海峡を通って地中海に入って、トルコに邪魔されることをどこかで懸念しつつ黒海に入る、この流れの中でどれだけNATOやら欧州メディアが、ロシアが来た~、ロシアが来た~と騒いできたことか。ほとんど恐竜が出ましたみたいな騒ぎをしばしばしていたものだった。

もちろんそれは変わらないだろうけど、総じていうのなら、もうあんまりお前らのところに行きたいとも思ってないんだよ、というのがロシアさんのお返事だったと言っていいでしょう。共存できる人々、つまり友だちは他にもいるんだもの。




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6 コメント

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Unknown (ローレライ)
2023-03-20 20:19:13
アメリカ支配下のウクライナナチスに通商封鎖されたヨーロッパ半島,アフガンに通商遮断されていたインド半島の再現である。
Unknown (読者)
2023-03-21 15:06:10
岸田さんはインド訪問後今日は、ウクライナにすっ飛んで
いきましたが!また、資金提供ですか?WBCで日本は
メキシコにドラマチックな勝ち方をしましたが、上手くいき
すぎにおもえて…明日は、アメリカと決勝戦になります。大谷
はイケイケムードに対しダルビッシュが静か(イラン系の父)台本でも有るのかと勘繰ってしまうのですが…
フランス憲法49条 (セコイアの娘)
2023-03-22 08:14:03
フランス憲法49条
大統領が議会の審議を経ずに、法案を成立させられる。
まるで、戦時中の憲法みたいだなと思って、調べたら、戦前はフランスでも議会主導だったのを、戦後、シャルル・ド・ゴール以降、大統領に絶対的権限を付与する、行政主導の憲法になったとか。知らなかった。
ただし、シャルル・ド・ゴールならまだしも、マクロンじゃね。
緊急事態 (ブログ主)
2023-03-22 14:21:39
セコイアの娘さん

緊急事態には行政府が(王様、etc.の代わりに)一本化する、というのはある意味合理性はあると思うわけです。戦時、有事が多い欧州は尚更そういう考えが血肉になってるでしょう。

だけども、文字通りの国家の有事の際に使うことを想定している仕掛けを、国民を黙らせるために使う、という可能性もある。ここが難しいし、これは結局、法の想定ではなく、リーダー層が正常か否かという話しですね。

ちなみに、アメリカの大統領はこの行政府一任の案を制度化したものだ、とも考えられると思う。60日は大統領の一任で戦争できるでしょ。

また、制度より殆ど国民の血肉になってるのは、ロシアの有事体制かもしれない。名称はどうであれ、クレムリンが有事のスタフカ(大本営)に変身してトップに立って動かすのが一番適切だと国民が納得してる。
ABUSE (セコイアの娘)
2023-03-23 07:57:06
ブログ主さん、私の問題意識もまさにそこにあります。
国家の存亡がかかった緊急時に国会が紛糾していては、更なる悲劇を招きかねない。
ドゴールの起草した第五共和政憲法の49条は、おそらく大戦から得た教訓なのだと思います。
ただし、それはあくまで有事を想定したものであって、(たかが)年金支給開始年齢の変更などという国内問題をまともに審議していたら絶対に通らないからとゴリ押しするためのものではない。憲法をABUSEしているとしか言いようがない。
もし、私がフランスの有権者だったら、私も間違いなくデモの中の一人なのだけど、それでも、「自業自得」の4文字が脳裏から離れない。
だって、そうじゃないですか。マクロンになってから、一体何回デモやってるんですか。それで、何かが変わりましたか?変えたいのであれば、大統領をすげ替えなきゃいけないのに、1度で懲りず2度もマクロンに投票したのは、有権者でしょ。そろそろ気づけよ。
Unknown (にゃんこ)
2023-03-25 20:58:06
西部先生や伊藤貫氏のお話を聴いていると、民主主義って何だ?と思ってしまう。もう長い事、選挙に行ったこともない。諦めてしまった。
娘は、今の政権が駄目と思うなら、良いと思えなくても、他の党に入れるとかしなきゃと言いますが。

それにしても中露は凄いですね。連携して凄い勢いで事を進めている。長い間根回しもしてきたのでしょうが、見事というしかない。
ロシアがプーチン、中国が習近平だったというのが、これまた、凄い。外務省も優秀な人材が揃っているのでしょうね。
中国関連では、筑波大学の遠藤先生のブログを読んでいますが、「習近平の表情を見ると、彼はプーチンが好きなのだ」と書かれています。お互い、尊敬しあっているのが、良く分かります。

>これほど大きな地殻変動はなく、事態は石油人民元や台湾平和統一へのメッセージを超えて、世界秩序を変える方向に動き出しているのだ。このことに注目しなければならない。

と書かれている。先生は、幼い頃、長春で中国共産党による壮絶な体験をしていて、中国共産党を憎んでおられるようですが。でも、何故、日本人がそこにいたのか、という事ですよね。

岸田はこれらの事、理解しているのでしょうか?
離任して帰国する前中国大使の挨拶も受け入れなかったようで、呆れ果てます。
これほど愚かな首相はいないのではと情けない。

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