みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1455「生存確認」

2024-04-24 17:50:26 | ブログ短編

 中学生(ちゅうがくせい)の娘(むすめ)にメールが届(とど)いた。大叔父(おおおじ)からだ。お正月(しょうがつ)に家族(かぞく)で遊(あそ)びに行ったとき、大叔父から頼(たの)まれてしまったのだ。大叔父は一人暮(ぐ)らしで、いつ倒(たお)れるか分からないからその時のためにと。ちゃんと生きてることを誰(だれ)かに知らせたい、ということみたい。メールを受け取るぐらいならと娘は引き受(う)けたのだか…。
 初めのうちは短い文(ぶん)で「生きてるよ」みたいな感(かん)じだった。それが、だんだん長くなっていって…。そのうち、小説(しょうせつ)のような物語(ものがたり)になってしまった。ひとりでいるから暇(ひま)なんだろうけど…。でも、大叔父のお話は奇想天外(きそうてんがい)でとっても面白(おもしろ)い。学校(がっこう)の友だちに読(よ)ませても評判(ひょうばん)がよくて、次(つぎ)も読ませてよとちょっとしたブームになってしまった。
 そして、その日がやって来た。いつもの時間(じかん)に大叔父からメールが届かなかったのだ。娘はすぐに両親(りょうしん)に知らせた。両親は「忘(わす)れてるんじゃないのか」と言ったのだが、娘は心配(しんぱい)で「倒れてるかもしれないよ」と訴(うった)えた。自宅(じたく)に電話(でんわ)をしてみたが誰もでない。
 ますます心配になってきた。明日は休みだし、これから行ってみるかということになった。家族みんなは車に乗(の)り込んだ。そして出発(しゅっぱつ)しようとしたとき娘にメールが届いた。大叔父からだ。娘はすぐに電話をかけた。大叔父がでた。
「ああ、すまんなぁ。いいアイデアが浮(う)かばなくて時間がかかってしまった。そっちは、みんな元気(げんき)にしてるか? また遊びにおいで、待(ま)ってるからなぁ」
<つぶやき>これは、本末転倒(ほんまつてんとう)なんじゃないですか? でも、こういうの良(い)いと思います。
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ホームページで再公開しました。

2024-04-23 18:30:34 | お知らせ

ブログ短編0564「海賊島1」を再公開しました。

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0002「怪事件ファイル」

2024-04-20 18:16:39 | 短編物語

 「蜘蛛の糸」2
 翌朝早く、二人は駅の改札口で待ち合わせた。いちごは係長からの命令もあり、しぶしぶ同行することになったのだ。いちごは山田の荷物を見て驚いた。小さなバスケットに猫が一匹入れられていた。黒のとら猫で、毛の色つやからみても年老いた猫である。
「なんで、猫なんか?」いちごは挨拶もそこそこに質問をあびせかけた。
「いや、それが」山田は頭をかきながら、「行きつけの中華飯店の女将さんに頼まれまして、しばらく預かることになってしまって」
「それにしたって、連れてこなくてもいいじゃないですか」
「一人にしておくのは、どうも可哀想で…」山田は猫を覗き込み、「なあ、アリス」
「もう、信じられない」いちごは山田を睨みつけて、「一人じゃなく一匹でしょう。もういいから、行きますよ」いちごはそう言い捨てると、先に改札を抜けて行った。
 いちごは憂鬱な気分だった。今日一日、この変な男と一緒にいなくてはいけないなんて。電車の席に座ると、いちごは大きなため息をついた。山田はそんなことは気にもかけずに、リュックからファイルを取り出していちごに手渡した。
「雲里(くもさと)村から事件現場まで、この一年の間に、ほぼ直線上に何人かの不可解な患者が病院に運ばれています。いずれも人けのない場所で、脱水状態で発見されているんです」
 いちごはファイルにざっと目を通して、「それが、この事件と関係あるんですか? だいいち、なんで北陸まで行かなきゃいけないんですか」
 いちごは山田が何を考えているのかまったく分からなかった。
「クモですよ。クモがすべてに関わっているんです」
「くもって…」いちごはあきれた顔で聞き返した。
「事件現場にあった蜘蛛の糸。それに、この患者たちの衣服にも蜘蛛の糸が付着していた。これから行く雲里(くもさと)村には、蜘蛛にまつわる伝説があるんです」
「なにバカなこと言ってるんですか。それじゃまるで、犯人は人間じゃないとでも…」
「そうですよ。人間にはこんなことは出来ませんから」
 いちごは頭をかきむしり、この先なにが待っているのか、不安な気持ちになってきた。
 雲里村に着いたのは昼過ぎ。この村はすでに廃村になっていて、荒れ果てた家が点在しているだけだった。山田は迷うことなく村のはずれにある森に入っていった。森の奥にある鳥居をくぐると、こんもりした塚が見えてきた。その塚のすぐ前に、小さな祠(ほこら)があった。
「思ったとおりだ。祠が動かされています」山田は祠に近づいて詳しく調べ始めた。
 祠のすぐ後ろ側の塚の部分に、人間の頭ほどの穴が空いていた。そして、祠に貼り付けてあった封印の御札が破られ、中にあるはずの封印石が消えていた。
「封印石を探しましょう。その辺に捨てられているはずです」
 いちごは言われるままに、山田に説明された丸い形の封印石を探し始めた。山田はというと、バスケットから猫を出して、祠の後ろの穴の前に座らせていた。
「何してるの! あなたも探しなさいよ」藪の中を探していたいちごが、声をはりあげた。
「すいません」山田はそう答えると、「頼むぞ。見張っててくれ」とアリスにつぶやいた。
<つぶやき>世の中には不思議なことがいっぱいあるんです。気をつけましょうね。
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1454「臨床試験」

2024-04-16 18:15:27 | ブログ短編

 男は妻(つま)から勧(すす)められたサプリメントを口に入れると言った。「あの薬(くすり)は完成(かんせい)したのか?」
 前に立っていた女がそれに答(こた)えて、「はい、臨床試験(りんしょうしけん)は間(ま)もなく終了(しゅうりょう)の予定(よてい)です」
「そうか…」男は顔(かお)をしかめるとコップの水を口に流(なが)し込んで、「まったく、なんて苦(にが)いサプリだ。こんなのが身体(からだ)にいいとはとても思えんなぁ」
 女はメモを取りながら、「分かりました。善処(ぜんしょ)します」
 男は手を振(ふ)って、「ああ…、こっちの話しだ。気にせんでくれ。私の身体のことを気にかけてくれるのはいいんだが…。妻は、どうも心配性(しんぱいしょう)なんだよ」
 女は気を使ってか、「お優(やさ)しい奥様(おくさま)なんですね。あたしには、とてもそこまで…」
 男は真面目(まじめ)な顔になり、「この薬が完成すれば、この国のいろんな問題(もんだい)が一気(いっき)に片(かた)づくはずだ。そして、私は総理(そうり)への道(みち)を駆(か)け上ることができる。一石二鳥(いっせきにちょう)じゃないか」
 女は肯(うなず)きながら、「確(たし)かに。医療(いりょう)の進歩(しんぽ)で高齢者(こうれいしゃ)が増(ふ)え続(つづ)けていますから…。高齢者を苦(くる)しませずに減(へ)らすことができれば、若者(わかもの)たちへの負担(ふたん)も軽減(けいげん)できるはずです。何て素晴(すば)らしい考えでしょう。こんな仕事(しごと)に携(たずさ)わることができて、あたしはすごく…」
 その時、男は胸(むね)を押(お)さえてデスクにうつ伏(ぶ)せになった。女は駆(か)け寄ると声をかけた。
「苦(くる)しいですか? 答えて下さい。いま、どういう感(かん)じですか? ねぇ答えて!」
 男は顔をあげると、「君(きみ)…。まさか…私に…? つ、妻が命令(めいれい)したのか?」
<つぶやき>こんな薬を使う世界(せかい)って…、どうなんでしょうか。あなたはどう思いますか?
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0005「いつか、あの場所で…」

2024-04-12 18:17:19 | 連載物語

 「大空に舞え、鯉のぼり」2
「違うの。高太郎君は悪くないの。…悪かったのは私の方なんだから」
 私はすべてを打ち明けた。どうしてゆかりと友達になったのか。そして、高太郎君が言ったことは間違っていないって…。これ以上、嘘をつきたくなかった。本当の自分を取り戻したかった。これで友達をなくすかもしれないけど…、それでもいいって思った。
 でも、ゆかりの反応はまるで違っていた。ゆかりは私の言ったことを笑い飛ばして…、
「なんだ、そんなことで悩んでたの? 気にしない、気にしない。私だって似たようなことしてるから。実はね、自分の部屋が欲しくて、いま根回ししてるとこなんだ」
 ゆかりは四人兄弟の三番目。彼女以外はみんな男ばかり。私は一人っ子だから羨ましいんだけど、ゆかりに言わせると生存競争が激しいんだって。自分の欲しいものは主張しないと手に入らない。自分だけの部屋なんて夢のよう、なんだって。
「一番上の兄ちゃんが一人部屋で、もう一つの部屋は三人で使ってて。不公平だと思わない? それでね、その兄ちゃんが大学へ行くために家を出て行く予定だから、その部屋を狙ってるんだ。でも、問題なのがちゅうにい」
「チュウニイ?」
「あっ、二番目の兄貴。こいつも狙っててね。ちょっと強敵なんだ。母ちゃんは味方してくれるけど、親父がね。男同士の絆ってけっこう強いでしょう。それを崩すために作戦を練ってるんだ。ま、見ててよ。親父なんて娘には弱いんだから。中学に入るまでには手に入れるから」
 私は感心してしまった。彼女の行動力というか…、すごい。私だったらとても生きていけない。そんな気がした。
「さくらはいいよなぁ。一人で使える部屋があって。ねえ、泊まりに来てもいい?」
「えっ? …うん、いいよ」つい言ってしまった。
「やった! 私んち男ばかりでしょう。話し合わなくてさぁ」
 けっこう強引なんだ。この後、たびたび泊まりに来るようになった。最初のうちは私も戸惑っていたけど、だんだんゆかりのことがほんとに好きになってしまった。なんだか私にも姉妹が出来たみたいで…。私の両親も良い友達が出来てよかったねって。友達とこんな付き合い方をしたのは初めてだった。なんかとっても新鮮な感じ。
 ここは都会とは違って隣近所の付き合いが親密みたい。縁続きの人とか、親同士が学校で同級生だったとか。ゆかりと高太郎君のところも同級生だったんだって。それで小さいときから一緒にいたんだ。ちょっぴり羨ましいなぁ。
<つぶやき>田舎っていうのは、人付き合いが大切なんです。助け合っていかないと…。
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