『無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記』(山本文緒、新潮社) | 近鉄八尾駅前にある鍼灸整骨院 東洋医学の事なら、いど鍼灸整骨院。

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厚生労働省の調べによると、2022年の男の平均寿命は 81.05 年、女の平均寿命は87.09年。

まぁ、人生八十年ってとこです。

 

私自身も五十歳を過ぎたころから、残された時間を何となく意識するようになりました。

 

今日はこんな本はいかがでしょう。

 

 

『無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記』山本文緒、新潮社)

 

山本文緒さんの作品は大好きで、かなりの数を読んできました。

直木賞を受賞した『プラナリア』はもちろん、『あなたには帰る家がある』『眠れるラプンツェル』『絶対泣かない』『群青の夜の羽毛布』『そして私は一人になった』『落花流水』『ファースト・プライオリティー』『再婚生活』『アカペラ』『なぎさ』『ばにらさま』『残されたつぶやき』等々……なかでも吉川英治文学新人賞を受賞した『恋愛中毒』や中央公論文芸賞を受賞した『自転しながら公転する』は何度も読み返したものでした。

 

山本さんは1962年生まれ。

この本は2021年10月13日、すい臓がんで58歳で逝去された著者の遺作となった、闘病日記(山本さんによると「逃病日記」)です。

 

コロナ禍真っ只中の2021年4月、毎年きちんと人間ドックを受けてきたのにも関わらず膵臓がんステージ4bとの診断を受けます。治療法はなく、進行を遅らせることしか手立てがないということで臨んだ抗がん剤治療で地獄を見ます。

抗がん剤治療から緩和ケアに切りかえることに決めた山本さんは、余命4ヶ月(表題のもとになる120日)の宣告を受けます。

そんな2021年、5月からの日記です。

 

早期退職していたご主人と、軽井沢に建てた家に引っ越し、残された日々を過ごします。

脱毛、吐き気、痛み、発熱、そして腹水などの苦しくて辛い症状、友人や家族との交流、ご主人との楽しい時間等々を淡々と、時には彼女らしい優しさとユーモアを交えながら綴ります。

 

彼女はこう書きます。

『突然20フィート超えの大波に襲われ、ふたりで無人島に流されてしまったような、世の中の流れから離れてしまったような我々も、これから少しずつ無人島に親しい人を招待してお別れの挨拶を(心の中で)しようと思っている。』

 

 

人はみんな必ず死にます。例外はありません。

ある日突然死神に肩を叩かれ、「死と向き合う日々」を送ることになります。

そんな時に、山本さんの深い優しさとユーモアに溢れた、それでいて誠実な言葉は、最期にきっと寄り添い、そして励ましてくれるように思います。

 

そして、それまで日記の中でご主人のことを『夫』と書き記していた山本文緒さんが、最期の最期で『王子』と書かれているのには胸が詰まりました。以前出版された『再婚生活』という日記ではご主人のことを『王子』と書いていた山本さん。

きっと素敵なご夫婦だったのでしょうね……

 

山本文緒さんの遺されたInstagramfumioyamamoto)や、ご友人の方々の追悼文も山本さんの人柄が偲ばれ感銘を受けました。まさに自転しながら公転し、逝ってしまわれた山本文緒さん。まだまだ色んな作品が読みたかったです……

 

 

 

 

 

 

 

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