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カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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ローライ35Tのメンテナンスの巻

2024年03月15日 21時00分00秒 | ブログ

ローライ35TとTEです。どちらも箱に入って眠っていた個体とのことで使用感は殆どありません。この頃のシボ革は初期の材質と違い、柔らかな質感で劣化も早い傾向にあります。そこで、メンテナンスと同時にシボ革の張替もご希望でした。私の場合、アキアサヒ製を使用しますが、オーナーさんのご希望で35Tをブラック、35TEをネイビーブルーとしましたが、私の眼にはどちらもブラックに見えてしまいます。

35Tは基本的に35の復刻ですから同じ仕様ですが、部品の材質が変化しています。上下カバーが35の真鍮からアルミの梨地アルマイトになっています。左の私の私物の真鍮梨地クロームとは風合いが違いますね。

 

巻き上げレバーもアルミ製となっています。軽いこと・・

 

 

まず露出計が動きません。しかし、電池の電解液漏れでもない限り、新しいユニットですからメーターやCdsが壊れていることは稀です。

 

回路の修復で復活しています。

 

 

いくら新しいと言ってもファインダーは汚れて曇っています。

 

 

レンズを分解清掃をして戻します。

 

 

底部を開けると必ずと言ってよいほど切れたフィルムが出てきます。清掃と潤滑をします。

 

沈胴の摺動が、やや荒れ気味なのでフェルトを取り出して洗浄しました。ドイツの初期など古い個体はフェルト自体が痩せてしまっている場合があり、交換が必要なケースがありますが、この個体の場合は洗浄によって嚙み込んだ汚れを除去してあげれば再使用が出来ます。

問題のシボ革交換です。まずオリジナルのビニールレザーに比べてどうしても厚みが厚目なのと、オリジナルは端部が薄く成形されていますが、本革の方は抜型で抜いたまま両面テープを貼られているため、このまま貼ると本体側の段付きより出っ張ってしまうのです。

オリジナルのシボ革を剥がすと糊が残ります。これを除去しておきませんときれいに貼れません。しかし、溶剤を使用すると、下地のリンクル塗装が弱いため塗装が落ちてしまいます。

 

本体側の段付きと面一になるように調整をしてこのように貼ってあります。革の硬さがもう少し硬いと寸法安定性が出るのですが、それ用の革ではないと思いますので仕方ありません。貼る面積が小さいので位置合わせにごまかしが利かないのでローライ35のシボ革交換は難しいです。35Sプラチナの純正シボ革でも段付きより出っ張り気味でしたので、自然素材を使うことの難しさです。

メンテナンスをしたシャッターユニットを搭載しました。

 

 

じつは間違えました。35Tがネイビーブールでした。そこで同じように貼り替え作業をしたのですが何故か貼りにくい。原因は革の厚みでした。純正のビニールレザーは0.65mm で本革ブラックは両面テープ貼りの状態で0.7mmでしたが、ネイビーブルーは0.96mmありました。色によって厚みが違うというよりは素材の革の厚みが全く同じには出来ないのでしょう。

純正より0.3mm以上革が厚くなると同じように貼っても革の長さが足りなくなります。また、のようにトップカバーより革が飛び出してしまいます。

 

裏蓋のシボ革を貼ります。デジカメのレンズを通すと確かにネイビーですが、実際はもう少し黒に近いです。純正はシボ革を貼った後でストラップ座をカシメていますが、ストラップ座は取り外せないので純正革はカッターナイフでカットして外します。おそらく抜型の試作時は純正に近い厚みの革が使われたと思います。このまま普通に貼っていくと終端では1mm以上革が足りなくなります。また、接着は両面テープ仕様ですが、引っ張り気味で貼った場合は両面テープでは強度が足りません。今回は接着剤で固定してあります。良い感じに貼りたい場合は、両面テープを剥がして革を0.7mm程度まで薄く削ってから貼ると剝がれにくく寸法的にも適正になると思います。

ローライ35TEです。ほとんど使用感がないのにシボ革だけが劣化をしているという・・初期のドイツ製のシボ革がカチッとしていて劣化もなく最高です。シボ革は35用のため沈胴着脱ボタンの孔を開けなくてはなりません。また、この個体は絞りのロックレバーがあるタイプですので問題はありませんが、ロックレバーが無いタイプの場合はレバー部分のシボ革を追加しなければなりません。

裏蓋も悲惨な状態。

 

 

劣化をした後期のシボ革は蝋のような表層がこのように剥がれます。

 

 

沈胴のフェルトが汚れていて摺動感が良くありませんので洗浄します。別にシャッターユニットのメンテナンスをしておきます。

 

シボ革を貼りました。やはりブラックは厚みが薄い分だけ貼りやすいですが、裏蓋側は慢性的に横幅が足りない傾向がありました。(私の主観)

 

ローライ35系の場合、シボ革を本革で貼り替えるのは意外に難しく手間のかかる作業です。特に側面の終端部などは曲げてすぐにカットですから純正より厚いと収まりが悪く、標準の両面テープ貼りでは接着力が足りません。適切な革調整と接着剤の併用が良いと思います。しかし、良心的な価格で供給してくださることには感謝ですね。

 

トミーのリペイント (tomys800.sakura.ne.jp)

 



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