DALAI_KUMA

いかに楽しく人生を過ごすか、これが生きるうえで、もっとも大切なことです。ただし、人に迷惑をかけないこと。

林(24)

2022-04-30 17:00:51 | 環境問題・保護


4月28日に、共立出版から、「湖の科学」という書籍が出版された。
筆者はカナダ国ラバル大学のWarwick F. Vincent先生で、訳者は東北大学の占部城太郎先生だ。共に湖沼学のエキスパートである。
初めて湖の研究を始める人には、最適な本だ。
ぜひ購入して欲しい。
以下に、序文を転記する。

☆☆☆☆☆

古くて新しい学問 湖の研究に 心を惹かれる 若い人々は幸せだ

この本は、湖を学ぼうとする人々への宝箱である。
ふたを開けると、ほぼ150年前にLimnology(陸水学)という言葉を初めて誕生させたスイスの研究者Francois A. Forel先生への敬慕の情があふれ出てくる。しかも扱っている内容は、Forel先生の基礎研究から最新の科学まで網羅しており、決して古めかしいものではない。むしろ、これほどまでによくコンパクトにまとめたと感心するほどである。

第1章は序文で、「湖やその水面下にある様々な事象や謎についてワクワクした気持ちを持って、もっと学びたいと思ってもらいたい」と語っている。
第2章では湖とは何かについて触れ、第3章で光と湖、波、流れなどの物理現象を記述している。
第4章で湖に住む微小な生物と水中に溶ける気体や化学物質を扱い、第5章で生物生産と食物連鎖が登場する。
第6章は著者が得意とする極地や高地の湖沼の話である。
そして最終の第7章では、「人間と地球環境とは相互依存の関係にあり、生存に不可欠な生態系サービスとそれを支える環境全体を健全な状態で維持していかねばばならない」と結んでいる。
著者Warwick F. Vincent先生は、私の古い友達の一人である。年令が近いこともあり、1991年頃からお付き合いをさせていただいている。1993年の琵琶湖から始まり、2002年にニュージーランドのタウポ湖、2015年にカナダ最北端のワードハント湖の調査をご一緒した。どれも懐かしい思い出であり、その都度、多くのことを教えていただいた。
Vincent先生は博識の人である。しかも深い知識と不断の思考に裏打ちされた誠実な研究姿勢は、本書にもよく表れている。この本は先生の傑作の一つであり、占部城太郎先生の名翻訳によって輝いている。このような手引き書をもとに、陸水学を学べる学生や若い研究者は、幸せである。先生が言うように、陸水学は人間と自然の間に横たわる謎解きの学問でもある。
「ようこそLimnologyの世界へ」、そう言うVincent先生の声が、そしてForel先生の声が聞こえてきそうだ。地球温暖化の進行が止まりそうにない現代だからこそ、本書を読んで地球科学の必要性と可能性を学んで欲しい。すべての国、すべての人種、すべての学問を融合しなければ、今降りかかる困難を克服することはできないのだから。

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 林(23) | トップ | 林(25) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

環境問題・保護」カテゴリの最新記事