脳性まひ者 しんやのひとりごと

脳性麻痺による両上下肢機能障害と共に生きる筆者が、折にふれ、浮かぶ思いをつづる。

悩ましいマスク

 ダウンジャケットにカッパを着せてもらって、午前十時過ぎに外へ出た。用足しである。
 令和四年十二月二十二日、冬の雨は冷たくて、身にしみた。
 電動車いすで歩道を進んでいく。行き交う車を見ようとした。マスクが襟に引っかかり、
「まずい」
 目がかくれそうになって、とまる。後ろをついてきてくれていたヘルパーさんへ、
「マスクを下にひっぱってもらえますか」
 ぼくは手指が、あまりいうこときかない。マスクがよく動くので、直してくれる介助者がいないと、電動車いすはあっても、ひとりではこわくてどこへも行けなくなっていた。
 おまけに言語障害があり、マスク越しでは、さらに言葉がこもってしまう。関わりなれている人でさえ、ぼくが何をしゃべっているのか、聞きとりづらくなる。外へ出ても、やりとりする人が限られてしまうのは、さびしい。
「このマスク、来年は、はずして外へ出れるようになりますかね」
「オザキさんにとってマスクはネックというか、壁ですからね。はずせるようになれば、いいですね」
 そんなやりとりを介助の人としていたのは、一年前の今ごろだったろうか。SNSで仲間と、
「今年こそ、みんなで集まって、忘年会したいね」
 なんて、やりとりしていたのは、今年一月だった。
 コロナ禍は静まっていくかとみせて、ぶり返す。このウイルスが日本で暴れ出し、もうすぐ三年になるのだろうか。ニュースで流れてくるのでは、この冬、さらに勢いを増しているようすだ。
 もう、どうあがこうと、なるようにしかならないし、なるようになっていくだけなんだろう。
 それなら頭を静かにして、目の前のことを、たんたんとやっていくだけだ。そうしていれば、そのうち何かが、ひらけてくるんじゃないか……。
 とにかく外は雨が冷たくて、カイロでも貼らないと、話す声までふるえてくる。用足しから帰ると、先に急いでヒーターをつけてもらった。
 そういえは、朝に起床介助にきたヘルパーさんが、冬至だよ~って、言ってたんだっけ。
 いちばん夜の長い時期になっているのか。そうか、冷えるわけか。