【企業法務】妊娠・中絶と不法行為 | 弁護士石坂の業務日誌@武蔵小杉

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小規模企業をクライアントとしていると、会社関係のご相談だけでなく、代表者とか企業オーナーに関する家事事件や人間関係のトラブルについてもご相談を受けることがあります。 

株式についても相続が絡んだりしますしね。 また、人間関係のトラブルといえばやはり男女関係(もちろん同性同士の場合も同じですが)でしょうか。これぞ街弁の「企業法務」ですね。 

今回は、交際関係にあった男女が妊娠してしまったが中絶した場合の慰謝料等についての裁判例を紹介します。

 【東京高等裁判所平成21年10月15日判決】 事案の概要としては、 「原告(女性)と被告(男性)は、結婚相談所を通じて交際を始めた。原告と被告は性行為をして、原告は被告の子を妊娠したが、結局、人工妊娠中絶をした。 原告は、被告に対し、妊娠及び中絶に関しての損害賠償を求めた。」 というものです。 原告の主張は、「妊娠及び中絶に関して真摯に協議する条理上の義務を負うところその義務に違反して原告に損害を与えた」という構成だったようです。 原審は、原告の主張を認容し、原告に発生した損害(中絶費用及び慰謝料)の2分の1を賠償すべきであるという判断をしましたが、被告がこれを不服として控訴したものです。 控訴審でも原審の判断が維持されており、 「妊娠した被控訴人が人工的に胎児を母体外に排出する道を選択せざるを得ない場合においては、身体的及び精神的苦痛にさらされるとともに経済的負担をせざるを得ないところ、これらの苦痛は控訴人と被控訴人との共同の性行為に由来するものであるから、両者が等しくその不利益を分担すべき」であり、「その不利益を分担しない控訴人の行為は、被控訴人の法律上保護された利益を違法に侵害する」としています。 まあ妊娠は1人ではできないので、基本的には2人で等分に負担すべきだというのはそのとおりですかね。

類似事案の場合も、このような考え方がまずはベースになると思われます(もちろんレイプ等の特殊事情がある場合は全く別でしょう)。 

ただ、慰謝料に関しては、この事案では、(原告の法的構成のこともあって)男性が女性の身体的・精神的苦痛といった不利益を軽減したり解消したりする行為をしなかったということが前提になっているように思われます。中絶したら直ちに慰謝料まで認められるのだ、ということまで読み取れるかというとよく分かりません。個人的には、中絶手術によって身体的な負担を負うのは女性だけですので、基本的にはそれだけで慰謝料が発生する(金額の多寡は別としても・・・)と考えてよいのではないかとは思いますが。 

 

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