評価 (3点/5点満点)
何かを表現しようとするなら、自分の頭で考え、自分の言葉で語っていくしかない。
『情報は1冊のノートにまとめなさい』などの著者・奥野宣之さんが、結果だけでなく過程も楽しめる「ちゃんと読む」というライフスタイルを提案します。
「ちゃんと読む」ことで得られるのは、言語を操る技術だけではありません。
借り物でない自らの表現にたどり着けるでしょう。
日々、スマホで情報を受信・発信するだけでなく、本書を参考にして、長い文章にもきちんと腰を据えて向き合ってみましょう。
【my pick-up】
◎「書く」前に「読む」
普段から経済誌のインタビュー記事などで「この社長はちょっと違うな」「この人は何か持っていそう」といった感じで名前をチェックしていた人物は、だいたいバックボーンに独特の読書遍歴があります。愛読書リストの中に、有名な歴史小説だけじゃなく大学時代の恩師に勧められたアカデミックな文献が紛れ込んでいたりする。「ああ、どうりで」と膝を打つわけです。つまり「書く」前に「読む」が大切なのです。何かを書いたり話したりするためのもっとも基本的なトレーニングは「ちゃんと読む」ことであって、書かなくても土台は固められる。
◎「プッシュ型情報」(テレビ)は要注意
NHKの歴史番組や海外ドキュメンタリーは私も大好きです。しかし、あの手の番組を見て「知識がついた」というのは大きな勘違いです。ああいうのは、ある分野がとっつきやすくなるための「入門用ツール」であり、文献から知識を取り入れる前後に「補助資料」として活用すべきものなのです。
◎切実さに欠けた「共著」は避ける
執筆者はみんな一流の学者で、単著はおもしろいのに共著になると生ぬるい内容になってしまうから不思議です。きっと単著の場合「ひとりの著者が全責任を負わねばならない」といった緊張感があるから、全力を出し切ることができるのではないでしょうか。残念ながら「共著に名作なし」です。
◎リアル蔵書から脳内蔵書へ
どんなジャンルの表現であれ、過去の作品を下敷きにしたり、エピソードや名言・名句を引いたりするのは基本中の基本といっていい。とくに私のようなライターにとっては重要な仕組みです。考えあぐねて手が止まってしまったとき、脳内蔵書からひらめきを得るケースと、そうではなく頭の中が空っぽのまま「何かヒントはないか」とネット検索を繰り返すケースと、どちらがいい結果につながるか、言うまでもありません。