メンバーからメールで頂いた2023年前半に観た映画で良かった、又は印象的な作品です。作品西暦は特記がなければ日本公開年度、次に製作国です。公開年度や劇場で観たかに拘っていません。TVやレンタルBDなどを含めて選んでいます。これから見たい映画も取り上げていいとしています。今回は新型コロナのため映画館で観るのを控えた会員もいますので、2023年前半に観た映画でなくてもいいとしています。また、感想などでネタバレの要素がある場合がありますのでご了承ください。原則敬称略。
H.Oさん
今回は、ワンちゃんを主人公にした映画の中から、シリーズものの2点でエントリします!ワンちゃんと生活を共にしていると、犬というより、自分の子供という感じで接してしまうので、常々、ちゃんと意思疎通できたらなって思っていますが、この映画は、動物たちも人と意思疎通したいって思っていると思わせます。
『僕のワンダフル・ライフ』(A Dog's Purpose) ( 2017年アメリカ 監督:ラッセ・ハルストレム 原題A Dog's Purpose )
「野良犬トビーの愛すべき転生」(W.ブルース キャメロン 著)という米国でベストセラーになった本を元に映画化されたものです。
主人公は、ベイリーというワンちゃんと少年イーサ ン。犬の寿命は人より短いので、イー サンに会いたい一心で、ベイリーは転生を繰り返すわけですが、生まれ変わる度に、犬種も飼い主も変わり、なかなか遭遇できないといった流れで進みます。
あらすじは、観てのお楽しみというところですが、犬目線で心情が描かれているのがとても面白く、その中で、犬が飼い主を幸せにしようとする姿にはグッときます。
画像出典:映画専門チャンネルムービープラス 僕のワンダフル イッキ観!https://www.movieplus.jp/recommend/detail/?id=1070 (閲覧2024/1/8)
『僕のワンダフル・ジャーニー』(A Dog's Journey )( 2019年 アメリカ 監督:ゲイル・マンキューソ 原題 A Dog's Journey )
『僕のワンダフル・ライフ』の続編です。主人公のワンちゃん(ベイリー)が何度も生まれ変わっている間に、少年だったイーサンも大人になり、そして・・・・・ということで、これが、完結編という感じです。
何度も生まれ変わって、いろんな飼い主に出会っていろんな経験しながら、その度に強い絆を築いていくのですが、本人(本犬)は、やっぱりイーサンに会いたくてという流れで進みます。
犬に人間の言葉が分かっていたらいいなという思いが強くなりますね。
当然ですが、ご覧になる場合は、『僕のワンダフル・ライフ』から先にご覧ください。
画像出典:洋画専門チャンネル ザ・シネマ 僕のワンダフル・ジャーニー 飼い主への一途な愛は何度生まれ変わっても永遠に。https://www.movieplus.jp/recommend/detail/?id=1070 (閲覧2024/1/8)
O.Aさん
2023年下期に鑑賞した映画で予告編と本編のギャップが大きかった映画を紹介します。
一部、内容に触れている部分があるため、所謂ネタバレを気にされる方は読まない方がいいです。
予告編詐欺と言いたくなる位、予告編と本編に差異があった3本。
『首』(2023年11月23日公開 監督北野武)
予告編→ https://www.youtube.com/watch?v=vcGZ8m7tqDI
予告編の印象から黒澤明の『影武者』や『乱』の様な大型歴史時代劇を期待すると思います。衣装が黒澤明の娘の黒澤和子なのでなおのこと。もしくは、『アウトレイジ』の時代劇版を期待した人もいると思います。
しかし、本編では、BL(衆道)やコント的な要素が多く、本格時代劇を期待した観客はかなり困惑すると思います。
特に劇中、羽柴秀吉(たけし)が羽柴秀長(大森南朋)と黒田官兵衛(浅野忠信)に対して仕掛けるアドリブ芝居では、完全に大森と浅野が役柄を離れ素に戻って対応しているのが明確にわかります。まさかこれが本編に使われているとは当人は思っていなかったでしょう。
作品の印象は、過去作の『みんな〜やってるか!』や『監督・ばんざい!』に近いかもしれません。たけしの秀吉のキャラクターはテレビ番組『痛快なりゆき番組 風雲!たけし城』の城主のまんまでした。
(下の画像は中央に羽柴秀吉(たけし)、左に羽柴秀長(大森南朋)、右に黒田官兵衛(浅野忠信)。衣装は黒澤明の娘の黒澤和子)
画像出典:映画.com首【こんな狂った戦国時代、観たことない――!】北野武監督、構想30年の“集大成的一作”で描いたのは“誰も見たことがない本能寺の変”だった! 有名武将たちの“全員、狂人”も凄まじいエンタテインメント超大作 https://eiga.com/movie/99284/special/ (閲覧2024/1/9)
『怪物の木こり』(2023年12月1日公開 監督三池崇史)
予告編→ https://www.youtube.com/watch?v=Bfajd6Kax84
2019年・第17回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した小説の映画化。コピーの『サイコパス VS 連続殺人鬼』と三池崇史の最新作ということで期待が高まる一本。『殺し屋1』や『極道戦国志 不動』のような映画を期待した人も多いと思います。
しかし、本編ではサイコパスと謳っている亀梨和也が開始早々、「実はサイコパスではありませんでした」というまさかの展開。しかも、サイコパス設定が人工的に作られたという設定。このネタバレが巻頭のシーンにあるのも致命的にダメ。一番の売りを外してどうやって本作を楽しめばいいのか?
更に亀梨は実はいい人だったというダメ押しで鑑賞したことを後悔させるオチに絶句しました。
(下画像左:主人公弁護士(亀梨和也)。画像右:連続殺人鬼、木こりのように斧で人を襲う)
画像出典左:映画.com怪物の木こりhttps://eiga.com/movie/99644/ (閲覧2024/1/9) 画像出典右:シネマトゥデイ 亀梨和也を狙う“怪物”はこうして生まれた…『怪物の木こり』狂気のキャラクター制作秘話 https://news.yahoo.co.jp/articles/419a0ba16d9381a700991fa47aef038c95153d2a (閲覧2024/1/9)
『映画 窓ぎわのトットちゃん』(2023年12月8日公開 監督八鍬新之介)
予告編→ https://www.youtube.com/watch?v=869wlarndRA
戦後最大のベストセラーと言われる同名小説のアニメ化。予告編を見ると時代背景は戦後の復興中の日本のような印象を受けました。
児童向けアニメのような予告編の作りなので、大人の観客は鑑賞リストから外してしまうと思います。
しかし、本編は完全な反戦映画でした。後で気づいたのですが、公開日が12月8日で「太平洋戦争開戦記念日」だったのも意図的だと思います。舞台は戦中の日本で戦争のカゲが忍び寄る時代の描写が克明に描かれています。終盤のB29が焼夷弾を東京に投下するシーンの作画がかなり詳細に描写されているのに驚きました。劇中に太平洋戦争の開戦を報じるラジオの描写もあり、予告編では全く出て来ない「戦争」の要素を外したことは完全にマイナスだったように思います。
(下の画像左:中央の窓際にいるのがトットちゃん。画像右:東京大空襲の場面)
画像出典左:FASHION PRESS映画『窓ぎわのトットちゃん』黒柳徹子の幼少期描く自伝的小説をアニメ映画化、小栗旬・杏ら声優キャストにhttps://www.fashion-press.net/news/106231 (閲覧2024/1/9) 画像出典右:講談社コクリコ 窓際のトットちゃんhttps://cocreco.kodansha.co.jp/special/tottochan (閲覧2024/1/9)
Y.Tさん
2023年は知人に勧められた是枝監督の『怪物』を映画館で観たかったのですが、体調を崩してしまい叶わず。
Amazonプライムで、長年気になっていた『ミリオンダラー・ベイビー』を観ることにしました。とても心に響きました。
『ミリオンダラー・ベイビー』(2004年アメリカ公開 監督:クリント・イーストウッド原題Million Dollar Baby)
ハッピーエンドでは無い、ボクシング映画です。
老いた名トレーナー「ダン」と、田舎育ちでボクサーを目指すウェートレスの「マギー」。
「終わり良ければ全て良し」という言葉がありますが、逆に終わりが“最悪”だった場合は、全ての過程、そもそもの出会いさえも過ちだったように思えてしまいます。
フィクションと分かっていても、ダンとマギーの「選択」と「人生」に数日思いを馳せました。
公開当時、母親に勧められていたのですが当時10代の私には受け入れられなかったと思うので、今観てちょうど良かったです。
映画って、ちょうど良い時にちょうど良いものが巡ってくることがあるな、と思います。
(下画像左:レストランで働くマギー(ヒラリー・スワンク)。画像中:左に老いた名トレーナーのダン(クリント・イーストウッド)、右にボクサーを目指すマギー。画像右:マギーは勝ち進み、WBA女子ウェルター級チャンピオン『青い熊』ビリーとの100万ドル(ミリオンダラー約1.4億円)が掛かる試合。左にビリー、右の白がマギー。この試合で悲劇が起こる)
画像出典左:『ミリオンダラー・ベイビー』絶句するほど美しい「絆」のドラマhttps://intro.ne.jp/contents/2005/05/19_1257.html (閲覧2024/1/10) 画像出典中:愛すべき映画たち『ミリオンダラー・ベイビー』(クリント・イーストウッド) https://aisubekieigatachi.com/million-dollar-baby/ (閲覧2024/1/10) 画像出典右:どらごんづ★Movie'zミリオンダラー・ベイビー(2004年)https://dragonsmoviez.blog.fc2.com/blog-entry-1359.html (閲覧2024/1/10)
Aさん
今回は映画館で観た二本の映画について書きます。それ以外で印象に残ったのは、沢木耕太郎原作のボクシング映画『春に散る』と、フランス・スペイン合作の実話をもとにした映画『理想郷』でした。
●『ゴジラ-1.0』(2023年日本 監督・脚本/山崎貴)
かつて本多猪四郎が監督した作品群の『ゴジラ』、『モスラ』、『ゴジラ対モスラ』などの怪獣ものや、『マタンゴ』などのSF怪奇ものを子供の頃、よく父に連れられて渋谷の映画館で観た。思えば、私が映画好きになった原点はこの辺りにあったようだ。この頃の怪獣ものにはロマンがあった。
『ゴジラ-1.0』には、1954年版の『ゴジラ』のような過ぎ去った昭和のテイストが詰まっていて懐かしさを感じた。そんな時代設定でありながら、最新技術のVFXは素晴らしく、古さと新しさが統一されて画面的に違和感がない。そして「核の脅威」の象徴であり、人間が犯した罪の祟り神とも言える肝心のゴジラは間違いなく怖い。
好き嫌いはあるだろうが、私は、戦略的・政府的側面が強くて、ゴジラがそれほど怖くなかったスタイリッシュな『シン・ゴジラ』をあまり評価していない。なので、怪獣ものなら何でもいいというわけではない。
『ゴジラ-1.0』の時代背景は、太平洋戦争末期。特攻隊員だった主人公(神木隆之介)が生への葛藤から特攻できずに生き残り、戦後の荒廃した東京に突如現れたゴジラと対峙する民間チームに入って戦う物語。主人公が自分を取り戻していくという自己完結のストーリーに、混乱の中で偶然知り合った女性(浜辺美波)とのほのかな恋愛が絡めてある。
この賢く勇敢な民間チームとゴジラの戦いがメインなのだが、ここぞという時に流れる例のゴジラのテーマ曲のタイミングが絶妙だ。ストーリーは先が読めてしまう部分もあり、そこが物足りないという意見もあるだろうが、私は、それはそれで良いと思う。変な言い方かもしれないが、「王道の怪獣映画」という安心感があるのだ。
『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズで見せた山崎監督の昭和の街づくりが素晴らしく、主役二人をはじめ、脇を固める俳優陣もみな適役だった。そして大迫力の画面。ラストは、ただでは済まない、この先があるというエンドレスな不安要素を感じさせた。
(下の画像左:戦闘機でゴジラに挑む主人公(神木隆之介)。画像中:窓から迫ってくるゴジラを見る女性(浜辺美波)。画像右:大迫力のゴジラ)
画像出典左:シネマトゥデイ『ゴジラ-1.0』戦闘機に乗り込みゴジラに挑む敷島!新場面写真(全8枚)https://www.cinematoday.jp/gallery/E0023303/002.jpg.html (閲覧2024/1/9) 画像出典中と右:圧倒的迫力!!「ゴジラ-1.0」新たな全身ビジュアル&場面写真15点公開 https://eiga.com/news/20230914/12/ (閲覧2024/1/9)
●『PERFECT DAYS』(2023年日本・ドイツ合作 監督/ヴィム・ヴェンダース)
「PERFECT DAYS」は、私的で詩的で禅的な映画。観る側の心の奥底をくすぐるような、懐かしさと静けさに包まれた映像とストーリーだ。渋谷で公衆トイレの清掃の仕事をする男の日常を描いているだけなのだが、なぜか最後まで目が離せなかった。
若い頃、ヴィム・ヴェンダースやジム・ジャームッシュの映画が大好きだったことを思い出した。画面作りが本当に美しい。
役所広司演じる平山は、ミニマリストで決まったことを淡々とこなすことに喜びを感じるのだろう。
早朝、近所を掃く老女のほうきの音で目覚め、部屋の植物に水をやる。カセットで音楽を聴きながら掃除道具を乗せたバンで仕事場へ。仕事は丁寧で手を抜かない。終われば銭湯で汗を流し、行きつけの地下の居酒屋へ行く。(店長がいつも「お帰り」と声をかけて一杯目を出すのが良い。)夜は古本屋で買った本を読みながら眠りにつく。見る夢は彼がフィルムカメラで撮る木漏れ日の映像と同じように淡い。
デートをしたい若い同僚にお金を貸して、結局返ってこないかもしれないが、それほど怒りはしない。だが同僚が突然辞めてシフトが崩れそうになった時のみ、普段温厚な彼は異様に怒る。生活のリズムが崩れるのが嫌なのだろう。それは「今」を本当に大切に生活しているから。訪ねてきた姪と一緒に自転車に乗って、大声で歌うように繰り返す「今度は今度、今は今」というフレーズが全てを語っている。
気になったのは、禅的には「掃除と料理は修行の一環」なので、その点、仕事にしている掃除は完璧だけど、私生活ではもう少し食生活に気を使って欲しかった。朝は車で缶コーヒーのみ、昼はお寺の境内でサンドイッチ、夜は居酒屋でほとんど食べずの繰り返しでは栄養が偏るし、お金もかかる。料理も簡単でいいから彼なりに工夫して欲しかった。ひょっとしてミニマリストで、ガスは止めているのかもしれないが。そういえば、火を点けたシーンは皆無だった。
バンのカセットから流れる60~70年代の音楽も良かった。私はアニマルズの『朝日のあたる家』とオーティス・レディングの『ドック・オブ・ザ・ベイ』しか知らなかったけど。ルー・リードの『PERFECT DAY』という曲は初めて聴いた。
ちなみにスナックのママ役の石川さゆりが歌った『朝日のあたる家』は昔、浅川マキが日本語詞を作って歌ったものらしい。それで、映画の中でギターを弾いていた客はあがた森魚だというから、かなりマニアックだ。他にも一瞬だけ出る俳優たちもいて見逃せない。
彼にとっては、この淡々とした日々が「PERFECT DAYS」なのだろう。過去に何があったか、なぜこの仕事と生活に落ち着いたのか、一切明らかにならず、観る側が想像するのみだ。
最後の平山の表情は良かった。喜怒哀楽が溶け合った至福の表情で、平穏な未来を感じさせた。
(下画像左: 公衆トイレでの主人公平山(役所広司)、清掃の仕事は丁寧で手を抜かない。画像中:行きつけの居酒屋。画像右: スナックのママ(石川さゆり)『朝日のあたる家』を歌う)
画像出典左:BANGER視覚・聴覚・触覚に訴えかける唯一無二の体験『PERFECT DAYS』ウェブ限定の書き下ろし小説「Days of HIRAYAMA」 https://www.banger.jp/news/108181/ (閲覧2024/1/10) 画像出典中:antenna“役所広司が通う”浅草のディープな焼きそば酒場へ!映画『PERFECT DAYS』ロケ地巡りhttps://antenna.jp/articles/21275903 (閲覧2024/1/10) 画像出典右:音楽ナタリー石川さゆり、ヴィム・ヴェンダース監督×役所広司主演の映画「PERFECT DAYS」で居酒屋のママに https://natalie.mu/music/gallery/news/524694/2060575 (閲覧2024/1/10)
下画像左:古本屋で買った本を読みながら眠りにつく主人公平山。画像右:笑顔の表情の平山。
画像出典左:音楽ナタリー石川さゆり、ヴィム・ヴェンダース監督×役所広司主演の映画「PERFECT DAYS」で居酒屋のママにhttps://natalie.mu/music/gallery/news/524694/2060575 (閲覧2024/1/10) 画像出典右:公式trailer パーフェクトデイズhttps://www.imdb.com/title/tt27503384/ (閲覧2024/1/10)
(2/2)へ続く