「そうだ四柱神社に行こう!」

と、特急あずさに乗り込んだその日は、
とても天気が良く、そして、寒かったのですが
そのせいで、とても空気が澄んでいました。

電車の車内から眺める外の景色は、
線路を走る方向に向かって流れていき
雲ひとつ無い青空には、緋橙色の
柿の実が映え
家々の軒先には、そのうちいくつかの柿が
干し柿となって吊るされていました。

窓の大きい車内にいたから
のんびり景色を眺めていたけれど
「外を歩いたら、さぞかし寒いだろうなぁ・・・」
などどボンヤリしていると山が現れました。

右手に広がる山々は、
代赭の濃淡の岩肌と
すっかり変わった黄色、まだ残る深緑が交互に混ざり

それはそれは、幻想的な雰囲気を醸し出しています。

「日本画に出てきそうな・・・」

と、いう言葉がそのまま表現出来る景色が
車窓の外に広がっていました。

それから、松本に近づくにつれ、
段々、雪が見えてきました。
左手には、雪を被った山景色まで出現しました。

右手の幻想的な山の景色と左手の荘厳な山の景色
どちらもとても素晴らしい山の景色です。
対照的な山の姿を一度に見れるのも不思議なものです。

この山々を見ていて一人の画家を思い出しました。

武井真澂(たけい しんちょう)

この画家は、山に魅せられて山の絵を描くために
松本に移り住んだと言われています。

そもそも、彫工を専攻していたのが
山に魅せられ、山を描きたいと思い
日本画と洋画を学んだそうです。

武井真澂の時代、日本画の主流は余白の美。
緻密なデッサンと構成によって
全部の画面に絵の具をのせることはありませんでした。

「どうやって山を表現するか?」

を考えた時に、洋画の技法を取り入れることで実現させました。

さらに、画面の大きさにも工夫を凝らしました。
この発想は、日本画のみ、洋画のみを学んでいたら
出て来なかったかもしれません。

登山家に愛される山の絵を描く山岳画家ではありますが
かなりの変わり者だったようで、束縛を好まなかったのか
日本山岳画会の創設に参加したけれどその後は離れたようです。

何事かを表現しようとする者は、
変わり者が多いということでしょうか?

松本に行ってみて
「なぜ山に魅せられたのか?」
がよくわかりました。



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