東京・渋谷の東急百貨店本店が1月31日に再開発事業に伴い、55年の歴史に幕を下ろしました。

 

渋谷区立大向小学校が神南小学校と統合されることになり、跡地に建てられ、1967年に開店したのが東急百貨店本店なんですよね。

 

本店の裏手には東京を代表する高級住宅地として知られる松濤があり、渋谷という商業地と閑静な住宅地の接点に位置する百貨店として営業をスタートし、高額品を買ってくれる上顧客や外商を利用するような富裕層に愛されていた百貨店というイメージがありました。

 

渋谷駅に直結した東横店の店頭売上の方が圧倒的に高かったにも関わらず、道玄坂2丁目に位置する店舗を「本店」としたのは、百貨店としての品格、地位を高めるためだったそうです。

 

営業最終日には、東急本店にたくさんの思い出をお持ちの方々が別れを惜しみに来店されていました。子供の頃に、「母親に連れられてよく買い物に来ました」という方がたくさんいらっしゃいましたね。

 

各TV局のイブニングニュースでは、時間を使い、取材、中継をしていました。それだけ大きな出来事だったんですね。

 

閉店に際し、店頭には稲葉満宏・本店長名で感謝のメッセー「THANKS &LINK」が掲げられていました。

 

『開業以来、55年の永きに亘り、渋谷・東急本店を支えてくださったお客様、地域の皆様、関係者の皆様、本当にありがとうございます。

 

これまで育んでいただいてきた絆を大切に終幕の瞬間まであふれる感謝をお届けいたします。

 

そして、その想いと美しい未来へつながる希望をこれからもずっと皆様とともに。

 

最後にもう一度、心を込めてお伝えしたいのはただ一つ。

 

ありがとうございました。』

 

こういう文章を読むと、ダメですね〜泣けちゃって。

 

長年、ここで働いていた方々はたくさんの思い出があるだろうし、過ごされた時間はかけがえのないものだろうし、こみ上げるものがあるんだろうなぁと思います。

 

僕は神戸出身なので、東急本店には母親と買い物に来たという幼い頃の記憶はないのですが、百貨店は大好きな場所でした。

 

僕の母の行きつけは、元町にある「大丸神戸店」、「梅田阪急」、「高島屋大阪店」でした。

 

母には告白はしていませんでしたが、僕は同性愛者ですから、ガチガチの野郎でもないんです。だからと言ってお化粧をしたい、女性になりたいというタイプでもない…。何て言えばよく分かりませんが、世間でよく言う優男タイプです(笑)。

 

キラキラした華やかなものが好きだし、お洒落も好きだし、スイーツも好き。

 

母もそんな僕と買い物に行くのが楽しかったのだと思います。よく二人で行きましたよ〜。僕はデパートと言う呼び方より、百貨店と言う呼び方が好きでしたね。一緒に行けば必ず何かを買ってくれるので、思いっきりスネをかじらせてもらっていました(笑)。

 

僕の子供の頃は、百貨店といえば、何でもあって、素敵な店員さん(もちろん男性)もたくさんいらして、本当に楽しい場所だったんです。

 

僕は学生の頃、「梅田阪急」や「高島屋大阪店」でアルバイトをした経験もあり、東京に住むようになり、就職したデザイン事務所が「小田急百貨店新宿店」の広告を請け負っていたので、宣伝課へ何度も足を運んだし、僕にとって百貨店ってどこか特別な場所だと言う気持ちがしています。

 

「小田急百貨店新宿店本館」も新宿駅西口地区開発計画に伴い2022年10月2日(日)に営業を終了してしまいました。小田急新宿店は、本館の営業終了後、新宿西口ハルクを改装のうえ営業を継続していますが、本館の建物が無くなると言うことは感慨深いものがあります。

 

セブン&アイ・ホールディングスは「そごう・西武」を米投資ファンドに売却することを決めているようで、旗艦店の西武池袋本店(東京都豊島区)などにヨドバシカメラが出店する案が出ていますよね。

 

百貨店という存在はもう消えていく運命なのかなぁ。ちょっと寂しさを感じます。

 

東急本店と代々木公園を繋いでいる通りを東急本店通りと呼んでいました。今は「奥渋」と呼ばれている辺りです。住所は宇田川町、松濤、神山町、富ヶ谷になるのかな。

 

僕のこのblogに度々登場する、ヘアーメイクアーティストで、亡くなってしまった昔付き合っていた彼氏が住んでいたのが「神山町」だったので、この通りは毎週のように歩いていたのです。

 

東急本店前で彼と待ち合わせたことは何度もありますし、本店に隣接する『Bunkamura』にある「ル・シネマ」「オーチャードホール 」、「シアター・コクーン」では映画、演劇、バレエ、コンサートなど観させてもらい、たくさんの感動をいただきました。

 

東急百貨店本店後地の開発計画、「Shibuya Upper West Project」に伴い、「オーチャードホール」を除き『Bunkamura』は4月10日(月)より長期休館すると発表されました。

 

「ル・シネマ」と「シアター・コクーン」は渋谷および東急線沿線の周辺施設や東急グループ各施設などで継続はされるそうです。

 

僕にとっての『東急百貨店本店』の思い出は彼との思い出に繋がっています。地下の食品売り場には二人でよく通ったものです。

 

1884年の創業以来、パリの人々に愛され続けている老舗カフェ『ドゥ マゴ』のベーカリーは大好きでしたし、世界各地から厳選した上質でこだわり抜いたコーヒー豆をキャピタルコーヒーで買っていました。

 

銀座で長きにわたって愛される日本の洋菓子の老舗「銀座ウエスト」の焼き菓子『ビクトリア』、近江商人発祥の地で明治5年創業した「たねや」の最中『ふくみ天平』が僕は大好きなんです。「福砂屋」の攪拌から焼き上げまで一人の職人が責任を持って仕上げたカステラは母が大好きでよく買って帰りました。

 

グローサリーは「明治屋」、鮮魚は「魚力」で買っていたし、上方鮨の名店「京樽」の茶巾寿司、「味の浜藤」の西京焼などの焼魚もよく食べたなぁ。

 

また一つ、思い出の場所がなくなってしまいました。ちょっとメランコリーです。

 

他の百貨店でも買えるものばかりですけど、好きだった人との思い出には変えられないです。

 

東急本店の跡地には、東急、LVMH系のLキャタルトン、東急百貨店の3社による再開発プロジェクト「Shibuya Upper West Project(渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト)」が進められるそうです。

 

2027年の竣工時には地上36階・地下4階の高層ビルに生まれ変わり、ラグジュアリーホテル「ザ・ハウス・コレクティブ」が日本に初進出するほか、商業施設やレジデンスが入るみたいです。

 

「100年に1度」とも言われる大開発中の渋谷の街。この先どう変わって行くんでしょうか。何だか同じようなデザインの無機質で個性のない高層ビルばかりで味気ない感じもしますけどね〜。

 

バブル経済の崩壊、ファストファッション(低価格に抑えた衣料品を、短いサイクルで世界的に大量生産・販売)の隆盛、Eコマース(ネットショッピング)の発達、そしてコロナ禍…。時の移り変わりと共に人々の消費行動やサービス需要は多様化しましたからね。それと共に百貨店のかたちにも変化の波が訪れているのでしょうね。

 

常に時代は変化をしていかなければいけないですからね。これからくる未来は明るいと信じたいですね。