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【突破する日本】緊迫化する世界情勢「ウクライナ危機」が長引くほどロシア有利に 様子を窺う習政権、米国が譲歩すれば「台湾有事」誘発も

2022-01-21 | 国際情勢

2022.1/18

新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染拡大に目を奪われているうちに、世界情勢は緊迫化している。日本も人ごとではない。

ウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟をめぐり、これに反対するウラジーミル・プーチン大統領率いるロシアは軍隊を国境付近に大規模展開した。ウクライナ情勢は緊張の度を高めている。

昨年12月、ジョー・バイデン米大統領とプーチン氏が2回、打開策を探ったのに続いて、今月10日にも米露の「戦略的安定対話」が、同12日にはNATO加盟国とロシアとの対話枠組み「NATOロシア理事会」の会合が相次いで開かれたが、進展は見られない。

ウクライナは旧ソ連圏だが、2014年、ロシアに政変を起こされ、自国領のクリミア半島を奪われた。ウクライナはNATO加盟を望み、米国とNATO諸国はそれを支持した。

しかし、NATO軍と直接国境を接することになるロシアは反対し、ウクライナに圧力をかけるべく国境付近に10万人超の部隊を展開している。

ロシアの狙いは当初、「ウクライナのNATO加盟阻止」にあったが、米国やNATO諸国の足元を見て要求をつり上げ、「NATO軍の東欧からの事実上の撤退」を求めている。

米国の政府高官は相次いで、「ウクライナ抜きで同国の安全保障を決定することはなく、欧州抜きで欧州のことを決めることはない」と発言している。同盟・パートナー諸国の意向を無視して、ロシアとの合意を結ぶことはないとの意味合いだが、前提はウクライナやNATO諸国と足並みがそろうことだ。足並みがそろわないと見て、ロシアは強気の姿勢でいる。

現に、NATO内ではロシアへの対応に温度差がある。

ロシアの軍事的脅威を警戒するポーランドやリトアニアなどはロシアに強硬姿勢を取るように求めるが、ドイツやハンガリーは慎重な対応策を模索している。

ドイツは昨年11月、ウクライナがNATO支援調達庁を通じてドローン迎撃用ライフルや対狙撃兵システムを購入しようとした際、拒否権を発動した。米国や英国は、ロシアがウクライナに侵攻した場合、建設が完了しているドイツ―ロシア間のガスパイプライン「ノルドストリーム2」の稼働中止をドイツ側に求めている。だが、ドイツのオーラフ・ショルツ首相は12月、稼働承認手続きは政治と関係がないとの認識を示した(産経新聞、1月13日)。

ロシアにとって、ドイツはNATO諸国の「柔らかい脇腹」だ。ロシアは「NATO諸国は一枚岩ではない」と見て揺さぶりをかける。

軍事衝突を避けるべく、今後も協議は続けられようが、長引けば長引くほどロシア側が有利となり、米国とNATO諸国は譲歩を余儀なくされる。この様子をじっと見ているのが中国の習近平国家主席だ。米国の譲歩は「台湾有事」を誘発する。


■八木秀次(やぎ・ひでつぐ) 1962年、広島県生まれ。早稲田大学法学部卒業、同大学院法学研究科修士課程修了、政治学研究科博士後期課程研究指導認定退学。専攻は憲法学。第2回正論新風賞受賞。高崎経済大学教授などを経て現在、麗澤大学国際学部教授。山本七平賞選考委員など。法務省・法制審議会民法(相続関係)部会委員、内閣官房・教育再生実行会議有識者委員、フジテレビジョン番組審議委員を務めた。著書に『憲法改正がなぜ必要か』(PHPパブリッシング)、『日本国憲法とは何か』『明治憲法の思想』(PHP新書)など多数。


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