反骨の女性ジャーナリスト(下)<本澤二郎の「日本の風景」(4701)

<憲法9条を先取りした松本英子の慧眼=A級戦犯の押し付け論崩す>

 昨夜Youtube動画で、防衛省が軍拡への情報と世論操作を、民間に資金を流して研究させているという恐ろしい話を目撃した。同時に、抵抗するジャーナリストを封じ込める動画を防衛省が作成し、それをYoutube動画で宣伝しているこざかしい事実も判明した。43兆円超軍拡工作は以前から進行していたのである。野党の徹底した追及を期待したい。

 いわゆる戦争準備のための政府・防衛省・防衛利権アサリの民間研究機関が連携して、防衛3文書の閣議決定から殺し合いのための43兆円予算獲得作戦を強力に推進しているのであろう。電通やNHK・読売主導の戦争体制の構築も、目前といえるかもしれない。

 

 こうしたことは明治期も同じで、英子はこれに果敢に抵抗して、天皇ファシズムによってしたたかな弾圧を受け、誇れる知性は徹底的に非難され、屈辱を受けてやむなく渡米した。反骨の女性ジャーナリスト・松本英子は、訪米後に第一次世界大戦のころのワシントンを目撃し、心を痛めると同時に死のベッドから、あらん限り非戦の声を上げ続けた。これもまたすごい闘争であろうか。毎日非戦の詩歌を詠んだり、日系新聞に小論を次々と発表して、おぞましすぎる戦争の非を訴えた。しかし、米国では官憲の被害に遭遇しなかった。

 彼女の叫びは、信仰していたプロテスタント系のメソジスト教会にも影響を与えたであろう。現に1945年に敗北したあとに誕生した日本国憲法9条の非戦の規定は、日米双方に非戦の思想が存在していたのであろう。日本の知識人の一部からアメリカの学者・法律家にも浸透していたものだ。安倍晋三らの押し付け憲法論は、彼らの世論操作のために意図的に用意された9条批判の戯言である。

 

 米国西岸カルフォルニア州から発信した非戦・無戦の思想は、子供や夫を失った欧米社会にも、深く影響を与えていたはずだ。1993年3月、1か月にわたる訪米取材でうれしかったことは、サンフランシスコで出会った白人弁護士が「9条がアメリカにもほしい」といってくれた時の言葉である。非戦の思想は、日本人女性ジャーナリストの叫びが、戦争国家のアメリカ全土にも静かに教会から日系人に浸透していたと仮定すると、松本英子の慧眼にただただ脱帽するばかりだ。一昨日、茅野の埴生の宿を訪れた日刊ゲンダイの峰田理津子記者は、非戦を常識と受け止めている反骨のジャーナリストだし、彼女の仲間たちの小塚・坂本の女性記者らもそうであろう。

 宇都宮徳馬さんの「日本人の平和主義は、財閥や利権アサリの機関や世論操作に耐えられる。いい加減なもんじゃない」との指摘も忘れてはならない。非戦は日本人の精神として昇華している。国民は自信をもって次回の選挙に一票を行使するだろう。

 

 戦争ごっこで暴利を得る米国の産軍複合体制とそこにぶら下がる日本財閥など死の商人たちは、機会さえあれば危機と緊張を煽る。宇都宮さんは「軍人は勲章欲しさに戦争をしたがる」と喝破した。

 

<戦争は政治・政府が引き起こす=ゆえに武器弾薬保持否定した9条>

 政府や官界・司法界の公人はすべて憲法に従わねばならない。当たり前である。立憲主義の憲法なのだ。だが、今の自公体制3分の2の圧倒的多数が、ゆでガエルのような野党を蹴散らして独裁政治を演じても恥じない。

 311の反省が微塵も見られない原発大作戦の強行策から、43兆円の戦争準備はその典型である。

 繰り返す、日本国憲法は非戦憲法だ。戦争そのものを否定して戦争を禁じて認めない。武器弾薬を放棄し、戦争を禁じた見事な憲法である。すなわち外交力で国民の財産と命を守るという、実にこの世の最高かつ崇高な憲法であって、財閥のための戦争そのものを否定した素晴らしい憲法なのだ。

 

 非戦の憲法を死守する責任を政府・議会・裁判所に課している。これほど安心安全な国は存在しない。

 

<いま議会や官界に司法界に財閥など死の商人を阻止する反骨の人はいないのか!>

 日本で言論の自由がなくなっている。新聞テレビの世界に反骨のジャーナリストはいない。いても声を上げることが出来ない。特定秘密保護法・自衛隊参戦法・共謀罪の戦争三法が、言論の自由を封じ込めてしまっている。加えて電通による締め付けによって、日本の編集人たちは萎縮し、非戦を叫ぶことを自身で封じ込めている。

 それどころか、読売やフジサンケイなどは率先して政府の改憲軍拡を推進している。国民の知る権利を封じ込める新聞テレビに驚愕するばかりの日本国なのだ。例外が日刊ゲンダイである。自公内閣必読の夕刊紙という。報道を担当する記者たちは、全て反骨のジャーナリストらである。

 

 ただし、NHKが政府に完全屈服した10年前から世論操作・情報操作が悪辣すぎて声も出ない。安倍以降の内閣はNHKを駆使して真実を隠すことに見事に成功している。人々を偏狭なナショナリズムの世界に追い込んでいる。NHK記者の反乱が起きるか、起きないのか?

 

<人はすべて戦争嫌い!非戦の英子ばかりだ!声を上げ行動を!>

 岸田は息子を戦場に送り込むことが出来るだろうか。出来るはずがない。憲法は読んでいるだろう。読んでいなければ秘書官が教えてくれる。いえることは、自分が出来ないことを他人に押し付けるな、である。

 この世の人たちは、非戦の松本英子の叫びを理解するだろう。ロシア人もウクライナ人も。非戦の日本が、ウクライナを支援して、戦争を長引かせていることは憲法違反である。そこに大義はない。

 日本人は戦争を止めさせるため声を上げ、行動することを非戦の9条は強く求めている。 

 

<「全ての婦人が立ち上がれば出来る」と英子の枕辺の遺言に脱帽>

 英子は叫ぶ。「戦争を食い止めるための唯一の方法は、婦人のすべてが立ち上がることだ。婦人が決起すれば戦争を止めることが出来る」と叫び続けて63歳の若さで亡くなった。

 反骨の女性ジャーナリストの遺言は、戦争そのものを否定し、止めさせることだった。その秘策は女性が握っていると断じた。日本の婦人団体よ、立ち上がれ、そして連帯してプーチンとゼレンスキーに釘を打つのである。

 人々の命を守るために遠慮など不要だ。

2023年1月31日記(政治評論家・日本記者クラブ会員)