【ロンドン=板東和正】世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は13日、ジュネーブでの記者会見で、新型コロナウイルスについて、2009年に流行した新型インフルエンザより致死率が10倍高いとの見解を示した。各国が感染拡大を抑えるために実施している外出制限などの措置について解除を急がないよう訴えた。

 2009年の新型インフルエンザでの死者数は世界全体で10万〜40万人とされる。米ジョンズ・ホプキンズ大の集計によると、新型コロナによる世界の死者数は13日時点で12万人に迫っている。テドロス氏は記者会見で、「新型コロナの感染は非常に速いが、減速(の速度は)ゆっくりだ」と分析し、今後も感染が急速に広がる恐れがあるとした。その上で、外出制限などの措置について、早急に全てを解除するのではなく、感染経路などを追跡できる態勢を維持しながら「徐々に解除していかなければならない」と述べた。

 また、WHOの感染症専門家、ファンケルクホーフェ氏は13日、新型コロナの感染者が回復後に免疫がつくかどうかについて「現時点で完全に把握することができていない」との見方を示した。ファンケルクホーフェ氏は、最近の研究で、回復した患者の中で新型コロナに対する強い抗体反応を示した人と示さなかった人に分かれたと明らかにした。回復後に新型コロナの検査で陽性と判断される人が増えれば、外出制限などの早期解除は困難になる可能性がある。

 一方、テドロス氏は同日、トランプ米大統領がWHOの拠出金の見直しを視野に入れた是正策を近く発表することに触れ、「私の理解では、トランプ氏は協力的だ」とした上で「(米国から)WHOへの拠出が続き、われわれの関係が良好であり続けることを望んでいる」と話した。テドロス氏は、2週間前にトランプ氏と電話会談したという。