tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「資本」主義の意味と金融所得課税問題 続

2021年10月27日 11時45分29秒 | 経済
前回は金融所得に課税するという問題を考えるうえでそのベースになる資本の働きについて見てきました。

人間は働いて価値を生み出します。その働きの効率(生産性)を高めるために資本は役立ちます(歩いて運ぶより1万円の自転車を買ってそれで運べば楽してたくさん運べます)。
効率のよくなった分は1万円の資本の貢献です。

税金というのは、こうして生まれた人間と資本の協力の成果である「付加価値」にかけられるものです。
付加価値にかけられるのは付加価値税(日本では消費税)だけではありません。付加価値税というのは比較的新しい発明で、以前は付加価値の分配先、人間と資本に「所得税」と法人税(法人所得税)」それに金利や配当に金融所得課税がかけられていました。

もともと税金というのは、政府が国民のために仕事をするのが通常無償ですので、それを補うために行政サービスの代金として付加価値の中から取っていたものです。

しかし、社会保障制度などが生まれて、税収が足りなくなったので、その分は社会保険料として徴収したり、付加価値税として徴収したりして、社会の中での所得の偏りを是正するようになりました。

これは、資本主義の手法だけですと、どうしても所得の配分が偏って、格差社会になり、社会が健全でなくなるという事から、社会主義的な手法を資本主義が取り入れた結果です。

つまり、税金(社会保険料も含む=国民負担)というのはその年に生まれた付加価値つまりGDPの一部を政府に納め、それを「政府の仕事への対価」と「社会保障のための所得の再配分」に政府が適切に使うというシステムなのです。

付け加えますと固定資産税というのがこのほかにあります(今度中国お導入するようです)。これは架空の計算ですが、その固定資産を借りていれば発生する賃借料(本人が払って本人が受け取る)に相当する収入(帰属家賃など)という経済計算上の見えない付加価値への課税です。

税金と社会保険料を合わせて「国民負担」と言い、GDPの中でそれが何%を占めるかといいう数字を「国民負担率」と言い、北欧などの福祉国家では高く、アメリカが主要国の中では最も低い事は良く知られています。

という事で、税などの国民負担は付加価値の中から支払われるというのが基本的な設定です。

ここで金融所得課税の問題をどう考えるかという問題に繋がっていくわけです。

問題は、金融所得と一口に言いますが、その中身は、全く違った性質の2つのものが入っているという点をまず考えなければならないでしょう。
それは、「キャピタルゲインとインカムゲイン」です。
(ちなみに、これは私のブログでも長期に安定したアクセスがある項目です)

キャピタルゲインとインカムゲインの基本的な違いは、インカムゲインは付加価値の構成要素になるのですが、キャピタルゲインはもともとが「値上がり益」ですから、付加価値の構成要素にならないという点です。

付加価値の構成要素にならないものから税金を取るというのはどういう意味を持つのでしょうか。また取らなかったらどうなるのでしょうか。

この点はもっと深く検討して、金融所得課税を、国民経済の正常な発展に整合するような精緻な理論の構成も含めて、誰もが納得できるものにしていくことが、岸田総理の下での検討会に課せられた使命でしょう。

次回はインカムゲインの性格について見てみたいと思っています。

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