tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

岸田政権も賃上げ奨励、それでどうなる

2021年11月27日 14時21分36秒 | 経済
安倍政権が、本来政治の権限外である賃金問題に「賃上げ奨励」という形で口を出し「官製春闘」などという奇妙な熟語を生んで、結局は「余計なお世話」に終わった後を受けた岸田政権です。

まさかまた賃上げ奨励とは思っていませんでしたが、やっぱり言い出したようです。
ただし、「横からの口だし」だという事は、それなりに心得ているようで「官製春闘」ではありませんと言っているようですが、何が違うのでしょうか。

更に安倍政権が試みた「賃上げ減税」もやろうという事のようで、どうも経済と賃金決定と国家財政の関連がよく解っていないのではないかと感じられます。

大体、賃金決定というのは、自由経済の国では「労使の専管事項」という事になっていて、中でも、日本の労使は世界に類例をみないほど経済状態に適切な、合理性のある決定を実践したことで知られています。

ただ、この所、労働分配率が下がり、企業の内部留保が増加するという状態が統計でも示されていますが、はっきり言えば、これは経済政策の貧困から、企業が極度に防衛的になり、労働組合もその状況を理解していることの結果とみられます。

それが「官製春闘」の笛に労使が共に踊らなかった主因でしょう。政府は自らの経済政策の貧困、企業にも、労働サイドにも国民全体にも、日本経済の先行きに希望を感じさせる経済政策の出来なかった自らの経済政策にこそ、反省の目を向けるべきなのです。

その意味で、岸田政権の「新しい資本主義」の中身には注目しているのですが、自らの経済政策より、労使の賃上げに期待するような姿勢では先行きが案じられます。

昨年の1人10万円給付がどれだけ消費支出増に貢献したかも検証せず、今回も10万円給付に動いていますが、(それで救われる人がいないとは言いませんが)その大半以上が家計支出には回らず、銀行預金になり、国債引き受けかマネーゲームの投機資金になるのではないでしょうか。

「新しい資本主義」の「資本」は、バラマキの原資である国債引き受けや、デイトレの資金になる貯蓄に回るのではなく、GDPの成長に役立つ実体経済の活動の中の技術開発、生産性の向上、実体経済の成長に使われる「資本」でなければならないのです。
それでこそ消費活動活発化の原動力になり得るのです。

「資本主義」とは言っても、日本の場合は資本が中心ではなく「人間が中心」で、その人間の目指す「豊かさ」や「快適さ」の創出に役立つ、実体経済の成長に貢献する「資本」の蓄積・活用に着目した「資本主義」でなければならないのです。

賃金は、経済が成長することによって上昇します。と言うより、我々は「より高い賃金」の支払いを可能にするために経済成長に努力してきたとうのが実態でしょう。

賃金を上げて経済を成長させようと国のリーダーが考えるのは、物事の順序が逆ではないでしょうか。それで齎されるのは結局はインフレだけでしょう


リーダーの役割は、その国の経済社会が経済成長するような雰囲気、社会心理の醸成、国民意識の動機づけをすることではないでしょうか。

岸田総理の大先輩、宏池会を率いた池田総理は「経済のことは池田にお任せください」という名言を残しています。

「新しい資本主義」の中身が、真に日本経済社会の成長発展に役立つものに創り上げられる事を期待します。

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