菅首相が「記者会見を拒否」して、官邸のホールでぶら下がり取材に変更した。だれも〝山田隠し〟だと思っている。
ところが首相は、記者が理由を質したのに対して、「昨年5月に宣言を部分的に解除した際、当時の安倍晋三首相が会見を開かなかったこと」も理由に挙げた。つまり、前例に従ったということだ。おかしいじゃないか。昨年、菅首相は学術会議会員の任命を拒否した際に、ただ前例に従うことを改める必要を強調していたではないか。
前例を踏襲することは良い場合も、よくない場合もある。それは、民主主義、立憲主義、国民の福祉を広げるなどの役に立つように使われるべきもので、菅首相は自分のために、政権のために都合がいいように前例を利用している。
「前例にとらわれない」とアピールすれば、国民は「新しいことをやってくれそうだ」と期待を高めるだろうと、学術会議会員任命に利用した。それが大失敗だったので、この前言ったばかりの「前例にとらわれない」を忘れたことにして「前例に従った」。こんなご都合主義では「国民のための政治」はほど遠いということだ。