まほろばの泉

亜細亜人、孫景文の交遊録にある酔譚、清談、独語、粋話など、人の吐息が感じられる無名でかつ有力な残像集です

外交における応答辞令

2022-11-22 05:41:44 | Weblog

 

中国共産党の党学では歴史、古典の科目もある

いま日本では受験科目にも忌避され、企業でも採用には無用の能力として顧みられることが少なくなった。

それでも挨拶のネタや微かな教養の披歴として稲盛氏や安岡氏の言葉や文字を説明している。

習近平氏はその党学校の校長を歴任している。しかも下放という辺鄙に地方での労働教化も体験している。

それは、人物によってその情勢や時の流れが見て取れることであり、相手が政治指導者ならその国の力量や行く末まで読み取れる、一種の度量や器量の類だ。まさに頭の良いということは数値秀才ではなく「直観力」や先を見通す「逆賭」の力量だろう。

  「逆賭」・・・現状観察からあらかじめ起こり得ることを推考する。事前に手を打つ。

  「観る」・・・多面的、根本的、全体的、俯瞰

 もちろん、相手によって対応を変えたり、古典百家の逸話を駆使した応答も長けている民族のこと、我が国の売文の輩や言論貴族の珍奇な説に踊る政治家や企業人にはない、厚く深い智慧や洞察によって逢場作戯(場面や相手によって応答を戯れる)を、まさに愉しんでいる。つまり見極めた余裕である。「呑んでかかる」と思えばよい。

 

              

 

以前、佐藤首相と米国大統領の応答を記したことがある。

佐藤総理とて岸田総理同様、仮にも学び舎教育を受けた学歴持ちだが、こと相手が戦争の勝者、こちらは白人から野蛮で未開と云われ、時の流れで完膚なきまで叩かれ敗戦した国の宰相だある。それゆえ、臆する心があったのか道学の師である安岡正篤氏に対応の妙を請うた。

安岡正篤氏は簡略に騎士道と武士道の共通理念を説いた。相手は利権に目ざとい陣笠代議士ではない。地位の立場に相応した教養と、歴代大統領に比した矜持の現示を他国の指導者に表わす威儀もあった。

従来は短時間の表敬後、ホワイトハウスの庭で共同会見を行うのが通例である。まさか「何の用で来たの?」「ワシントンは素敵な街ですね」はないと思うが、相手によってはそれもあるのが首脳会談だ。

共産主義国家同士でもテーブルの下は足の蹴りあいもある。衛星国の子分のようにあしらうこともある。

「こちらは核がある。言うことを効かなければ大変なことになる」

『いや~、8憶いるので、半分失っても4億は残る』

半分冗談だのようだが、応答は鷹揚だが国を背負う胆力、気概がある応答だ。

笑って握手して協力を謳ってマスコミが化粧して喧伝しても、「どうなるか分かっているよな」は応答の内実である。

なかには,はじめから卑屈、迎合して歓心を買う政経の人間もいるが、もともと仁義道徳が亡失しなければ当選も金儲けもできない世界での一過性の成功者では、なかなか出来ない芸当のようであるが、国家の衰退や亡国には現れる人間の類である。

 

                

 

 

日中国交交渉は官僚で積み上げられ、周総理、田中総理によってまとめられた。二人で毛主席に報告した際、「もう喧嘩は終わりましたが、ケンカしなくては仲良くならないようです」と、大人が子供に諭すように語った。そして田中総理は「楚辞」をもらった。楚辞は「世はみな濁る、吾、独り清む」と嘆いてベキラの淵に身を投じた人物の逸話が書かれている。つまり最後には「身を投じる」ことの暗示のようにもみえる。

周は論語の一説「言、信を必す。行、果を必す」と揮毫を贈呈した。随行は歓喜し,記者もそれを発信した。

佐藤慎一郎氏は「遊ばれたね、あれは文字遊び。一国の総理やエリート官僚がコロリやられた。いずれ日本は下座になる、それがエリートなんだ」 それは占領時の軍人が高名な書家に揮毫依頼したときのこと、エリート軍官吏は書いてある内容はわからないが、有名書家の、つまり女性のブランド好きのようなもの。ところが文中に「恥」が欠けていた。恥を知れということだ。嬉々として床の間にかけている軍官吏が高位高官に就いたエリートなのだ。ロシア文学好きの共産主義者や論語好きの媚中のようなものだろう。

論語に戻るが、周の揮毫は論語の一節にある「弟子が一等の人間はどのような人物をいうのでしょうか」と問うた部分の抜粋だ。

「言うことが信用できて、行うえば必ず結果がでる、このような人物はどうですか」

「まだまだ小者だよ」

「一等の人間とは」

「主人(皇帝なり元首)の遣いで異郷の地に行って、主人に恥をかかせない,義のある人物が一等な人物だ」

つまり、周の揮毫に書かれていた章は論語の重要な部分が欠落したものなのだ。

続く章は「硜々然として小人なるかな」、つまり言うことが信用できて、行うことに結果がでる、それは小者で、国や民族、要は元首や国民の思考や教養を矜持として他国に遣いに出なければ真の宰相とはならないと皮肉ったのだ。

だだ、これも遊びて、一杯食った、今度は知恵を絞って、一杯食わせると考えれば、これも人物としての懐に深さだろう。総理みずから国会で流行りごとのようになった細々とした説明や言い訳では会談も締まらない。貴重な時間の浪費でもある。まして改竄、隠蔽、先延ばしでは異国では通用しない。

彼の国は人治と云われるが、所詮、法を積層しても、部分を探求する官吏が優秀と云われても、軍備が整っていても、在れば有るに越したことはないような類で、個々の力量、深層の情緒が真の国力であることは熟知している。歪めるのは汚職腐敗で民が面従腹背になり放埓になることによる国内社会の衰亡だと考えている。

いや歴史の教訓として、弱さを見せれば外敵も内敵も浸食する歴史が学びとして重要視され、先ずは「人間観察」を要点として現在から将来を推考する、つまり人物の力量を見抜き応答する、かつ信用できる人間の存在こそ国の命運あると考えている。

周さんは上手くやった、と人民大会堂は万歳が響き渡った。万歳は「万砕」(ワンソイ」同じ音でもある。

鄧小平さんは、小平は「小瓶」黙って瓶を壁に投げつけた。

四つの近代化は「四化」だが「四話」、あれは出来もしない四つのお話しだと。

でも、批判されても分り切ったことだ。角さんも一杯食わされたと鷹揚だ。

高く買わされれば、「あんな良いものを安くしてもらって」といえば、売り手も隙がでる。日本人なら今後は買わないとなるが、彼の国は関係性が継続する。看板な「言、二値ナシ」とある。価格は間違いない、これが正価です。ところが看板の二つの値段はないが、三値や四値はある。そこには断絶や訴訟もない。前記した「逢場作戯」なのだ。悔しがれば、運が悪かった、今度がある、と。

いっとき市井で流行った本に「厚黒学」がある。要は面の皮が厚く、腹黒い生き方だが、まさに腑に落ちる心底を表した内容でもある。それならと香港で「賄賂学」はないかと探したが見当たらなかった。日本人は賄賂は悪で腐敗堕落の根との印象だが、昔から賄賂は「人情を贈る」と考える慣習があった。

それは「よろしくお願いします」「邪魔しないでください」の類で大らかな人情交換だった。コソコソした日本人と異なり額も大きい。数年前に摘発では、省幹部でも数100億、党幹部になると数千億にもなった。日本では政治家や官僚も小粒で狡猾なのか、その度胸は無い。だからなのか決断は鈍く、すべて打ち抜きで曖昧を旨としている。政治資金の流用も居酒屋やガソリンの領収証、最近では家族に還流して大臣を辞めた小者もいる。それでも東大出の元エリート官僚だ。これでは国を代表した外交など任せられないし、せいぜい握手と写真、少し小狡ければODAの援助利権が関の山だろう。

今回は岸田君は彼の国の民から観て小者のように映った。もしも装って隙を見せたなら、今度は大人のように振る舞って欲しい。孫文も「真の日本人がいなくなった」と、側近の日本人に嘆息している。

先ずは、狡猾な官吏、欲張り陣笠や曲学阿世な知識人に阿諛迎合せず、宿命を立命に転化する学びが欲しい。

メンツをつぶさず、一杯喰わせるような頓智があるなら、面白い漢となる。また、亜細亜は再興するはず。

それなら「宏池」を冠とした命名者安岡正篤氏も感服するはずだが。

< 現在の中国での状況と民情は、繁栄とともに政治指標も変化し民の習性や情操も変化している。ここで取り上げた逸話は人間の本性とする「色・食・財」の欲望に向かうとき、ときおり垣間見る民の智慧と観えることがある。政治の政策には応ずる民の対策と云われるものがそれである。とくに外交交渉での隘路として異なる姿を見せることでもある。たしかに独特の感覚と応答である。それは個々のメンツとも思えるものではあるが、環境や状況で瞬時に変化する。日本では立場の形式と本音として通底されている姿でもある>

 

   

 

 

以下、Yahoo!ニュース コラムより抜粋

中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

 

岸田首相が習近平と会談できたのはG20が終わった翌日11月17日にタイに移動してからだった。単純に国の順番から言うと、国連のグテーレス事務総長を含めて15番目となる。

 もっとも、11月17日にタイのバンコクで開催されたAPECに参加する国と参加しない国(オランダ、南アフリカ、セネガル、アルゼンチン、スペイン、イタリア)があるので、必ずしも日本が関係国の中で15番目にしか位置付けられていないとは言えないものの、やはり図表を作成してみると、習近平が日本を相当低くしか位置付けていないという現実が、否定しがたい形で突きつけられる。

 少なくとも、同じ大統領あるいは首相がAPECにも参加しているのはフランスやオーストラリア、インドネシアなどで、タイで会っても良かっただろうが、優先的にインドネシアで会っているし、17日にタイに移動してからも、フィリピンやシンガポールの首脳よりも、日本は後回しになっている。

 日本が少しは優位に立っているのは「ブルネイ、ニュージーランド、パプアニューギニア、チリ」に対してのみだ。タイが最後になっているのは主催国だからだ。

 一方、視点を変えると、韓国の大統領とはかなり優先的に先に会っているのは、韓国は米韓との関係上、何としても中国側に引き付けておきたいという思惑があるからだろう。韓国の場合、APECには大統領に代わって首相が出席することになっているからという理屈は成り立つだろうが、韓国側のやり方もうまければ、韓国が6番目に位置しているのは、日本人として決して愉快な気持ちにはなれない人が多いのではないだろうか。

 中国は、こういう順番を非常に重視するという伝統があるので、その視点から見ても、韓国に比べて日本など、「どうせ放っておいても尻尾を振って近づいてくる」と高を括っている何よりの証拠だとしか見えないのである。

 

◆習近平の前でオドオドと焦る岸田首相

 そのイヤな予感は、初対面の場面で早速、現実のものとなった。

 11月17日午後8時46分、習近平が宿泊するホテルに岸田首相が表れた。バイデンのときと同じように習近平が対面舞台の真ん中にいて岸田首相が速足で歩いて近づいていく設定だ。最初に会った時の会話と動作が滑稽過ぎて、実際の対談がどうであったかはほぼ関係ないほどだ。

 以下、日中両国のネットに現れている数多くの動画に基づいて、「習近平&岸田」の対話や動作を記したい。( )内は中国語の和訳や筆者の説明で、会話の文字起こしに関しては筆者自身が聞き取れたものを記録した。

 

習近平:到了(あ、来た)。

岸田:・・・(走り寄っている最中)

習近平:你好啊(やあ、こんにちは)。(非常に軽いトーン)握手。

岸田:(ペコペコしながら)ええ、習主席と直接対話できましたことを大変うれしく思います。

習近平:那我们今天呢,坐下来谈一谈(じゃあ、今日はですね、座って話しますかね)。

岸田:・・・(大急ぎで日本語通訳の方を見るが、通訳が間に合わない。)

     (習近平、握手の手を離す。)

習近平:今天过来的还是昨天过来的?(今日いらしたんですか?それとも昨日いらしたんですか?)

岸田:・・・(通訳の方を振り向いている)

習近平:从巴厘岛(バリ島からさ)(回答が遅れてるので付け足す)

岸田:(しばらく沈黙。通訳の方を振り向く岸田首相に日本語通訳の声が届くと、ようやく)そうですね・・・、あのう・・・、え――っと、そのう・・・、本日、こちらに移動してきました。

    (「今日です」という一声が出なく、「あのう・・・、そのう・・・、えーーとぉ」を続けた後に、ようやく「本日」という言葉が出た。)

習近平:今天刚刚到的、我也是(ああ、今日、着いたばかりなんですね。私もです)。

    (ここで対面場面は終わることになっていたらしく、二人は対面舞台から去ろうとするのだが、岸田首相は間違えて習近平のあとに付いていき、習近平ら中国側の方向に向かおうとしたので、習近平がそれを遮り)

習近平:你们这边(あなたたちは、こっちですよ)

    (岸田首相ら日本側が向かうべき反対側の方向を、習近平が掌を上に向ける形で指す。「あ、どうも」と言ったのか否か、声は拾えてないが、頭を軽く下げながら習近平の後ろをアタフタと「日本側」の方向に戻る岸田首相の姿が映し出されたところで、画面は切れた。)

 

 バイデンとの出会いの場面も見ものだったが、岸田首相との対面場面は、それに輪をかけて「抱腹絶倒」と言っても過言ではなく、中文メディアは大喜びだ。

 日本人としては愕然とする。会談で何を話そうと、あとは推して知るべし。

 平然とゆったり構える習近平の前に、おどおどと緊張し、日本語も普通には出てこない岸田首相の小物ぶりが際立った。

 習近平はそんなに「偉い」のか?

 なぜ、ここまでビクつかなければならないのか?

 何を恐れているのか?

 だらしない!

 みっともない!

 せっかく国際社会的には有利な立ち位置にありながら、結局は「ご機嫌伺い外交」しかできない国のツケが露わになったのを見る思いだ。「言うだけ外交」、「戦略なき日本」の姿は、こういうところで顕著になる。今後、岸田首相が中国に関して、どのような勇ましいことを「言葉だけで」言っても、何も信用できない。

 日本はなぜこんな国になってしまったのか、暗然たる思いだ。

 

以上,参照として転記させていただきます

イメージは一部関係サイトより

 

 

 

 

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