子供の頃、ケイドロが大好きだった。
毎日のように学校から帰ると
友達と一緒に放課後の校庭で
暗くなるまでやったものだ。
なんであんなに好きだったんだろう
多分捕まっちゃいけない、という緊張感
あれがなんとも言えない感覚だったのだろう。
さっきまで一緒に授業を受けていた
友達とも今は警察と泥棒の関係。
ここぞとばかりに張り切る友達と
それ以上にテンションが上がるねこやま。
大人になってやらなくなった。
でも本当はどれだけ大人になっても
あの楽しさが忘れられない
想像してみよう
大人になっても、上司と一緒にでも
ケイドロを楽しめるそういう時間はどうだろう。
じゃあケイドロの全国大会を開こう。
そしてただ遊びだったらつまらない
色々なルールや商品も決めておこう。
ルールは一つ、警察と泥棒にじゃんけんで分かれて
24時間捕まえ切るか、逃げ切れれば勝ち。
電気やガソリンを使った乗り物は禁止。
自転車やスケボー、電気を使わないものはオッケー。
逃げる範囲は街一つ。
タッチしたら捕まって、けんかはだめ。
勿論勝ったチームには商品もある。
勿論勝ったチームには商品もある。
亡くなった人に一日だけ会える、そういう素敵なチケットにしよう。
そうすれば昔のように、本気になって楽しめるし
負けても勝っても、みんなの笑顔を見ることが出来る。
素敵な時間が共有できそうだ。
ねこやまは出来れば泥棒がいい。
あの逃げ切る時の快感と
友達を助けた時の感動がすごく好き。
この全国大会では
みんな本気だから。
親孝行できなかったヤンキーや
大好きだった奥さんに先立たれた
おじいちゃん達も参加するんだ。
みんな一日だけでも会いたい人がいるし
本気になってねこやまを追いかけてくるだろう。
そうなったらこっちだって
昔飼っていた愛犬に会いたいんだから
捕まる訳にはいかないよね。
逃げる道具は自転車にしよう
小回りも聞くし、脚力には自信がある。
でも警察役のおじいちゃんが
でも警察役のおじいちゃんが
プロの競輪選手だったらどうしよう。
「まぁてぇー！！！」といいながら
鬼の形相で追ってくる。
「幸子に会うんじゃー！！」と
号泣しながら追いかけて来られたら
もうなんだか捕まった方が
いいんじゃないかとすら思ってしまう。
でもだめだ、ねこやまは
「きちたろう」に会うんだ。
もはやこうなったら遊びの域を
遥かに越えている。
開始30分で誰もが気づくはずだ。
音もなく背後から忍び寄るスケボーに乗ったおじいちゃんや
上空から滑空してくる主婦もいるだろう。
暗殺部隊と化した警察達から
ねこやまは逃げ切らなければいけない。
足の速さなんか関係ない
知能と経験と
会いたい気持ちがものを言う世界だ。
中には地面に穴を掘って
24時間潜る自衛隊出身の
泥棒役だってでてくるだろう。
なんとも頼もしい仲間じゃないか。
よしねこやまは
ボンベを持って24時間
川の底に隠れていよう。
電気が使えない以上
耐熱感知器は使えないはずだから。
こうしちゃいられない。
いつ開催されるかも分からないから
今日からお風呂で特訓しなくちゃ。
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