最近の作品で能画「藤」をご紹介します。

 

薄紫色の花を房状に咲かせる藤は、その美しさを古から人々に愛され「暮れゆく春を惜しむ花」として、和歌などによく詠まれてきました。

 

舞台は、たごの浦(現在の富山県氷見市)で有名な藤の花を題材にした能です。

能「藤」の最初の地謡が謡う「たごの浦の 底さへ匂ふ 藤波を かざして行かん 見ぬ人のため」という歌は、和漢朗詠集の中の歌で、縄麻呂の歌です。

「たごの浦の波の底までも 照り輝くように美しく咲いている藤の花を 髪に挿して帰ろう。

この藤をまだ見ぬ人のために」という意味です。

 

前半で自らを花人(はなひと)と名乗って消えた里女は、後半で花の菩薩として登場します。

藤で飾った冠を着けて夜もすがら舞を舞います。

この場面を描いたものです。
 

 

F10号 楮紙に書きました。絵具は岩絵具です。