(ちょっと古い写真。車高調付けても純正車高が基本です)
足回りのセッティングの話です。
よく「はがき4枚分程度の接地面」で車と地面をつないでいるのがタイヤ、とかって言いますが本当にそうですよね。重量で1tonもある自動車が、たったのはがき4枚分程度で地面の上にくっついて走っている。できるだけ摩擦抵抗を高くする。でも、やみくもに摩擦力が高かったら燃費が悪くて大変。
自動車のタイヤの接地の仕方は非常に重要ですね。
ラリーを通して足回りで学んだ事は、いかにタイヤを接地させるセッティングにするか?という事。
以前は、滑り出しのフィーリングが・・とか、ドリフト状態のコントロール性が・・とか言っていたのだが、冷静に考えると何のために人が乗って運転しているかって、ある程度の領域をその時々の車の状態に合わせて運転する為です。
決まった条件に対して決まった動きをするだけなら、プログラミングされた自動運転でも対処できる。
でも、タイヤの温度、路面の温度、アブソーバー内の油温やブレーキの熱、ホイールの暖まり具合、タイヤの熱、空気圧の変化、ブッシュのたわみ量の熱による変化・・・。などなど。
SSの距離が長く成れば成るほど、SS中にもいろんな変化に対応してドライビングしていた。
フィーリング重視でセッティングしていた頃は、外的要因が予想と外れると
「これは予想外だった、しょうがない」みたいな事を考えてしまった事もある。
重心下げる為に車高を低くして、底付きしないようにバネレートを高くして、滑りのコントロール性を上げるためにアブソーバーを硬くして・・・。
足回りが動かない様に、動いてもゆっくり目に・・・などとしてしまっていた。
フィーリングはメッチャ良いし、車高低くて格好良いんだけど、外乱(ちょっとした凸凹とか、砂や落ち葉など)に弱くて、限界走行出来るのがスムーズで良い路面、見た目通りのグリップ力がある路面でしかなく、結果タイムが悪い。
タイヤのたわみとスムーズなサスペンションストローク、コーナリング中のタイヤの角度(対地キャンバー等)が適正である事が、自動車として設計通りに最も性能を発揮できる状態だ。
と考えるように成るまで、随分と時間が掛かってしまったな。
この状態の車って、普段乗りで乗り心地良く、ワインディングでは「柔らかめだけど接地面が安定していて「安心して高い速度を維持できる」状態なんですね。
この状態に一番近い足回りは、スポーティーカーなら「純正サスペンション」がそれ。
そりゃそうだ。
モータースポーツの世界では、見た目とかじゃなく必然を重視したセッティングにします。
上の写真をロールが大きいと感じますか?
低めのバネレートでナチュラルドリフト状態で走ってこの状態。
アウト側のタイヤはまだストロークできる範囲が残っていて
イン側のタイヤはまだ伸びるストロークが残っている。
これがラリーの足回り。
タイヤがイイ感じの潰れ具合で4輪接地しています。
この状態で縁石乗り上げても、グレーチングを越えてもナチュラルにいなす。
僕の考える理想の足回りはコレです。
この足だと、外乱要因が多少あっても修正舵もほとんど要らず、アクセルも
踏みっきりで走り抜けられる。
他車を見ていて車高短で俊敏に外乱に対応するのは「ドライビングが凄い」とは感じるけど、
車両のセッティングは成っちゃいない、勿体ないな。
と感じるようになってきました。
タイヤが路面から離れない事が安定したトラクションを生み、
結果として長い時間アクセルを踏み続けられるので、速く走れる。
2輪駆動の限られたグリップ力を最大限に活かして前へ前へと進める。
峠のワインディングでも、同じ考え方で行けるはず。
車高短ペッタペタじゃ、もう速く走れないよ僕。
数年前に、とある純正サスペンションメーカーの開発者さんとお話する機会がありまして、「メーカーがテストを繰り返して出した結論を、なんで一般の方が導き出せるんですか?」と言っていただけました。
それはラリーを走りながら、もっと速く走るためのセッティングを常に考えていた結果です。
ドライビングしながらも、技術屋、開発屋のものの考え方が出ちゃいますね。
ミッドシップに乗って早7年。
しばらく競技走行できていないけど、こういう時は考え方の整理等、
普段できない事を冷静に考える時間と考えたら、無駄な時間じゃ無くなりますね。
次回は
タイヤを地面から離すな②
「タイヤを潰し過ぎないように」を考察します。