妹の秘密 10 | 夜想曲 ~自死を選んだ妹~

夜想曲 ~自死を選んだ妹~

~自死を選んだ妹~

何も言わない母と何も聞かない父。

そして妹・・・・・


そんな微妙ともいえる日々はしばらく続いた。



ある日、実家の父の所に行ったときに父からの報告があった。



『この間、かおんが家に来た。

どうも春先に結婚するみたいだぞ。

何かきいてるか?』



母と父が別居をして一ヶ月が経つか経たない頃だったかと思う。


何も聞かされていない私はそのまま返事をした。



『何も聞いてないけど。最近は会ってもないから

わからない。』



父は妹が家に来たことを嬉しく思っていたのだろう。

久しぶりに笑った顔だった。



妹とも少しだが話をしたのを嬉しそうに話していた。




父は口うるさい事は言うが、結婚等に関しては一切何も

言わない人だった。



″お前たちがいいならいい。 パパは反対しない。″



そう言う言葉を常に言っていた。


私と妹が自分の好きになった人と結婚するのが一番だと

思ってくれてたのを今でも思い出す。


きっと妹の結婚が決まったことを一番喜んでいたのは父に

違いなかった。



その後、1ヶ月もしないうちに母と父の別居もあっさり終了した。


妹の結婚が決まって、彼女の精神状態が落ち着いたからだ。



たった2ヶ月の間の別居。

そしてその費用を出したのは全て母だった。



妹が母にその費用や、自分の為の別居とわかっていても

母や父には一切の謝罪はしなかった。


また、そのことを妹には何も話すなと言われたのも言うまでもない。



私も何も話すつもりはなかった。



話をしてまた妹の精神状態が変わってしまっては困るという思い、

父や母をこれ以上悲しませてはいけないという思い。


本当は母や父の思いをぶつけたかった。

キチンとした別居の理由等、妹は知らなけれなならないと

思っていた。



でも、何も言わなかった。 

それが母の願いでもあったから・・・・・・


でもそれは、自分勝手ないいわけだったと思う。




当時20代半ばである程度の常識は踏まえていなければ

いけない年の妹に、何も言わなかったのは間違いだったのかも

しれないかった。




その後、4月になり妹とKさんは籍を入れた。

そして今まで住んでいた実家に程近いアパートに部屋を借りた。




結婚が決まってからの妹は180度態度が変わっていた。

実家に戻り今まででは考えられない位明るくなった。


両親ともよく話すようになり、家に帰らない事もなくなっていた。



両親にとっては良い事だったのだろう。

父も母も嬉しそうだった。



ただ、妹の態度が変わらなかったのは私に対してだけだった。



両親の前では私とも話はするが、いない所では別人のようだった。

何も話さないならまだ良かった。



とにかくこれまでの事に対しての文句や嫌味を言われ続けた。



それを私だけに話しているのであればまだ我慢も出来たが、

自分の旦那の事まで言われるとさすがに腹が立った。



よっぽど思ってる事を全部言えたら楽だったと思う。

何もかもぶちまけたらすっきりしたのかもしれない。


何度も喉元まで出かかった。

でも、そのたびに両親の思いを思い出すと我慢するしかなかった。



その時の妹は私を悪く言う事で精神状態を保っていたのかもしれない。



母もそんな妹の心情をわかっていたから




『我慢して頂戴。 あんたはお姉ちゃんなんだから』




と言っていたのかもしれない。




″あんたはお姉ちゃんなんだから ″




今でも私の中で一番嫌いな言葉なのは言うまでもない・・・・・・・






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