以前の記事で、法テラスの利用はお勧めできないと書いた。

 弁護士に依頼する者にとって、法テラスを利用するリスクは以前の記事で述べたとおりであり、提供されるサービスの「質」に影響するおそれがある。弁護士の側から法テラスの利用を勧めてくれない限りは、利用を避けた方がよい。

 しかし、このブログは、相談者・依頼者側に対して面と向かっては言いづらい本音を知ってもらいたいというのが主目的であり、弁護士に相談・依頼している人(潜在的な相談者・依頼者も含む)を主たる読者として想定しているので、相談者・依頼者側の視点でも物事を考えてみる。


 1 事件によっては法テラスでもよい

 法テラスを利用した場合のリスクの最大は、つまるところ「訴訟等でよい結果にならないこと」である。これ以外にも、「弁護士が十分話を聞いてくれない」とか「仕事が遅い」「進捗の報告がない」とかいったリスクもあるが、なによりも重要なのは「結果」であろう。

 逆に言えば、法テラスを利用して弁護士に依頼した場合でも「結果」に差が生じるリスクが低いのであれば、法テラスを利用しても不利益が小さいとは言える。

 では、どういう事件なら、「結果」に差が生じるリスクが低いといえるか。

 パッと思いつく例としては、「離婚できればそれでいい」(金銭請求の余地がないか、相手から取れる財産がない)という離婚事件である。離婚事件は、訴訟までいけば、有責配偶者からの離婚請求でもない限り最終的には離婚できる可能性が高いケースが大半であり、弁護士の技量で左右されるおそれは低い(全てのケースがそうだとは言わないし、技量に左右される側面もあるが。)。依頼した弁護士に熱意や力量が乏しく、手を抜かれても、離婚という結果は実現できることが多いだろう。

 これ以外にも、どんな弁護士が代理人になっても大差ないケースという事件はあるので、個別に弁護士に相談するなりして判断したらいい。


2 法テラスでもがんばって仕事をしてくれる弁護士の探し方

 以上は、法テラスを利用して依頼しても結果に差が出るおそれが小さいケースである。

 もっとも、依頼したいのは上記の事件に限られないだろうし、依頼者にとって見れば、結果に差が出ないという消極的なことではなく、法テラスを利用して「優秀でよくがんばってくれる弁護士に依頼したい」というのが本音ではあるだろう。弁護士からすれば、そんなファンタジーがあるわけがないとしか思わないが、その希望に沿う形で法テラスを利用する方法も、ないわけではない。

 というのも、弁護士の中には、法テラスの熱烈な支持層ともいうべき人たちが存在するからだ。こういう人たちであれば、法テラスを利用しても通常と同等に事件に励んでくれる可能性はある。

 具体的には、法律事務所HPにおける弁護士のプロフィールで、役職・経歴に「日本司法支援センター」とか「法テラス」とかの単語がないか探すことだ(「日本司法支援センター」というのは法テラスの正式名称である。)。「日弁連 司法支援センター推進本部」とか、法テラスの理事とか地方事務所長を務めていた(いる)人は、法テラスを維持し発展させることになんらかの形で関与してきた(いる)人である。こういう人たちであれば、法テラスを利用した場合でも、通常の事件と同等に働いてくれる可能性は高い。

 もっとも、こういった法テラス関連の役職の経歴があっても、中には、諸々のしがらみで役職を引き受けた人もいる。しかし、それでも、一度はそういった役職を引き受けた人だから、法テラスでもきちんと仕事をすべきという建前は否定できないと考えており、一応はきちんと仕事をしてくれるだろう。

 したがって、こういう弁護士に依頼できるのであれば、法テラスを利用しても、きちんと事件を扱ってくれる可能性は高まるだろう。どうしても法テラスを利用したいというのであれば、このような探し方も1つの方法だ。