中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

「ないないずくし」

2024年03月28日 | 情報
報道によると、当事案の海外赴任は、
業務の引継ぎなし、業務経験なし、ラインのサポートなし、会社の支援体制なしの「ないないずくし」
まさに、敵のまっただ中に、何の情報や武器を持たずに落下傘降下、まさに「バンザイ突撃」しているようなものです。

中小規模の企業では、往々にして起こりうる事態です。
国内市場の縮小を海外市場の開拓で補おうとする傾向が、トレンドでしょうが、
海外での事業展開には、慎重な計画推進をお願いします。


日立造船社員が過労自殺 初の海外赴任で未経験業務、ミス叱責も
3/25(月) 毎日

東証プライム上場の大手機械メーカー「日立造船」(大阪市)の若手社員が赴任先のタイで自殺し、3月に労災と認定されたことが判明した。
この社員は初めての海外勤務だったのに専門外の業務を命じられ、上司にミスを度々叱責されていたという。
社員がこれらの複合的な要因で精神疾患を発症し、自殺したと判断された。
亡くなったのは、北陸出身の上田優貴さん(当時27歳)。
遺族や代理人弁護士によると、上田さんは大学院修了後の2018年4月に入社し、主に海外のごみ焼却施設などの設計業務を担当。
入社3年目の21年1月20日にタイへ渡航し、日本にいる頃から関わっていたタイ中部ラヨーンでのごみ焼却発電所建設プロジェクトに従事していた。
だが約3カ月後の4月30日、施設内で倒れているのが見つかり、死亡が確認された。

 ◇コロナ禍で実地研修もなく
上田さんには外国出張の経験がなく、海外勤務はこれが初めてだった。
当時は新型コロナウイルスの感染が広がっており、通常行われる実地研修も受けられずに渡航した。
タイでもコロナ禍で休日はホテルに籠もりがちになるなど孤独な状況に置かれた。
タイ語を一切話せないうえ現地では英語に堪能な人が少なく、コミュニケーションで苦労する様子が見られたという。
業務も当初は日本にいた時と同様、電気設備の設計を任されたが、3月中旬から発電所の試運転に携わるようになった。
それまで全く経験がなく、知識もないためミスが多くなり、他の従業員の面前で上司から毎日のように叱責されたという。
さらに、頼りにしていた別の上司が4月に帰国する一方、自身の帰国は5月末から7月末に延長され、
当時の日記に「仕事がぜんぜんできなくて毎回おこられてばかりでとてもつらい」とつづっていた。
3月中旬~4月中旬の残業時間は100時間を超えていた。

 ◇会社側、自殺か事故か結論つけず
日立造船側は上田さんの死を自殺か事故か断定できないとしたが、
遺族側は「転落場所で行う作業はない」との社員の証言や転落時の防犯カメラ映像から自殺だと主張。
大阪南労働基準監督署(大阪市)は24年3月4日、過労自殺と認めた。
遺族の代理人を務める岩城穣(ゆたか)弁護士(大阪弁護士会)によると、
労基署は海外勤務や経験のない業務への対応、ミスへの厳しい叱責が上田さんに強い心理的負荷を与えたと指摘。
亡くなる直前に精神疾患を発症していたと認め、自殺に至ったと結論付けた。
岩城弁護士は「海外に赴任する若手社員に企業は慎重に配慮する必要がある。
この件が労災と認められた意義は大きい」としている。

 日立造船広報・IRグループは取材に「当社として労災認定の事実を確認できていないため、コメントは差し控える」と答えた。


長期の海外出張先で死亡の男性、労基署が労災認定…亡くなる5日前の日記「おこられてばかりでとてもつらい」
24.3.25 読売

日立造船(大阪市)の男性社員が2021年に長期出張中のタイで死亡したのは、
慣れない業務や上司の叱責(しっせき)で精神疾患を発症したことによる自殺だったとして、大阪南労働基準監督署が労災認定したことがわかった。
遺族と代理人弁護士が近く記者会見を開き、海外勤務中の労務管理の徹底を訴える。
男性は大阪市の上田優貴さん(当時27歳)。18年4月に入社し、主に電気設備業務を担当した。
ごみ焼却発電プラントを建設するプロジェクトのため、21年1月からタイの拠点に出張。
上田さんにとって初めての海外出張で、7月までの期間延長が決まった後の4月、高さ約30メートルのプラント建屋から転落して死亡した。
会社は従業員に出張を命じる立場にあるため、日本の法令に基づき、海外で起き得る危険に対処する安全配慮義務を負うとされる。
遺族側によると、上田さんは3月中旬以降、経験のないプラントの運転業務も担当。
残業が続き、死亡前の1か月間の時間外労働は149時間に上ったという。
上田さんは3月下旬から日記をつけており「仕事がんばった」「生きのびることができた」とつづっていた。
死亡の5日前には「毎回おこられてばかりでとてもつらい」と記していた。
遺族側は23年4月に労災申請。労基署は遺族側の訴えを認め、
海外出張や不慣れな業務、現地で受けた上司からの叱責などが自殺の原因になったと結論づけた。労災認定は今月4日付。
日立造船側は23年5月、遺族側の要望を受け、死亡の経緯を調べる第三者委員会を設置。
11月にまとめた報告書は「不慣れな業務で疲労が蓄積し、上司から注意や指導を受けて心理的な負担が積み重なっていた」と指摘した上で、
経験の浅い従業員への組織的なフォローを求めたが、タイ警察が死因を特定しなかったことを踏まえ、「自殺か事故死か認定できない」とした。

母「環境変化にもっと配慮を」
上田さんの母親、直美さん(52)は取材に対し、「優貴は精いっぱい頑張っていたと思う。
会社には職場環境の変化にもっと配慮してほしかった。
納得できるまで、会社と話し合いを続けたい」と述べた。
日立造船は労災認定について、「内容を確認できておらず、コメントは控える」としている。
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