異世界こぼれ話 その七十三「異世界のビートルズを詳しく調査してみた」 | Siyohです

Siyohです

音楽とスピリチュアルに生きる、冨山詩曜という人間のブログです

2009年の9月9日、「Everyday Chemistry」という未知のビートルズのアルバムが、デジタルダウンロードできるようになりました。それがこちらのページ。 2015年からYouTubeにも公開されています。

 

このアルバムを入手した経緯のページが上記ページからリンクされていますが、その経緯がなんと、パラレルワールドに行って、そこから盗ってきたというのです。しかもカセットテープ! 今回は、この話の真実性に迫ってみたいと思います。

経緯をざっと紹介しましょう。このカセットテープを異世界から持ってきたという人は実名を明かしていなく、名前はジェイムズ・リチャーズJames Richardsと呼んでほしいと書いています。住んでいるところはカリフォルニア州リバモア市。異世界に迷い込んでしまった日は2009年9月9日水曜日。彼はそこから東に100kmくらい離れたターロック市で数日間友人のところにいて、その帰りにデル・プエルト・キャニオンDel Puerto Canyonに寄りました。その途中、愛犬が尿意をもよおしたようなので、車を停めて愛犬を外に出したのですが、その後犬の吠える声が聞こえ、見るとウサギを追いかけていました。彼は愛犬が、何かを追いかけ始めたら止まらない性格だと分かっていたので、仕方なく犬を追いかけて走り始め、その途中で転倒し、気を失ってしまったのです。

気がつくと、彼は見知らぬ部屋の中にいました。彼を助けた男はジョナスと名乗り、こんな風に説明してくれました。

 今いるのはパラレル・アース(並行地球)で、その世界では、50年代に宇宙のことを調べるか、パラレルワールドのことを調べるのかとなったとき、パラレルワールドに力を入れることになり、今では、パラレルワールドに旅行する人がたくさんいるというのです。ジョナスはある「異次元への旅行代理店」のために、新しいパラレルワールドを探索していて彼を見つけ、通常なら自分の世界に連れてくるようなことはしないのだけれど、看護の必要があると判断し、異例の処置をとったと言います。

二人は、それぞれの世界での共通点、違う点を語り合い、やがて、二つの世界に同じ名前のバンドがいくつかあることが明らかになりました。そんなバンドのひとつに「ビートルズ」がありました。こちらの世界では、ビートルズは1971年に解散しましたが、この世界ではジョン・レノンとジョージ・ハリソンはいまだに健在で、ビートルズは解散していないというのです。

ジェイムズはジョナスと一緒に、いくつかのアルバムのカセットテープを聞きました。どうもこの世界では、CDやレコードがないか、あっても普及していないようです。ジョナスが正式に持っていたアルバムは『サージェント・ペッパー』だけで、その他はコピーでした。その『サージェント・ペッパー』のアルバムデザインは、私たちの世界のものと細かい点が違ったようです。そして、他の6つのアルバムのタイトルを見ましたが、その中の4つは、全然聞いたことのないタイトルだったと言います。

それらの音楽を聞きながらジェイムズが軽い気持ちで、テープをコピーしてくれないかと尋ねたところ、ジョナスは急に険しい表情になりました。そして真剣な調子で、「何も持ち帰ってはなりません。写真もお土産もテープも、すべてダメです」と言いました。それはなぜかと尋ねたら、ジョナスはただ「あなたの安全のためだ」とだけ答えたのです。

一時間ほど経った頃、玄関の呼び鈴が聞こえました。ジョナスが玄関を見に行ったとき、ジェイムズはこのときとばかりに一つのテープをポケットに突っ込み、残りのテープをわからないようにかき混ぜました。また、ジョナスが戻ってきた時、「お腹がすいたので何か食べさせてくれませんか」と言って、彼の気をそらせたのです。

ジョナスは食事をふるまってくれました。ほとんどの食品は私たちの世界のものと似ていましたが、商品名だけが違っていたそうです。ただし、紫色のケチャップにはビックリしたとのことです。

食事の後、二人は愛犬とともに最初の部屋に戻りました。ジョナスが機械のスイッチを入れたら、ポータルが出現し、そこを通って彼は自分の世界に戻ってきました。その時、水の中に入るような感じだったそうです。しかし、体は全然濡れなかったので、奇妙な感じがしたと彼は書いています。実際、犬はポータルから出てきた時、水をはじくように体を震わせていました。

 

ということなのですが、真実はどうなのでしょう。この人が嘘を書いている可能性はどれだけあるのでしょうか。とりあえずカセットの写真から考えましょう。

General Electoric社の再利用可能なカセットテープ。このラベルがごく普通なのかどうかを調べたところ、同じ会社の10分のテープを写真にとって公開している人がいました。

同じデザインですね。ただ一つ気にかかるのは、問題のテープは中央下に一箇所だけネジが留めてあるところです。カセットテープの画像をいろいろ調べていたら、通常は四隅にもネジを留めるか、あるいは全くネジを使わないようです。とはいうものの、他社製ではありますが、同様に中央下のみをネジ留めした製品がありました。だからGeneral Electric社でもこのような製品が存在した可能性はあると言えます。

 

そんなカセットテープの見かけより肝心の歌はどうなのだ、というと、実はすべて、解散後の各自の曲の切り貼りみたいなものなのです。アルバム最初の Four Guysを聞くと始まってすぐに、ポール・マッカートニー&ウイングスの大ヒット曲「バンド・オン・ザ・ラン」が出てきます。下地になっているのはジョージ・ハリソンのWhen We Was Fabで、その合間合間にバンド・オン・ザ・ラン」が流れてくるのです。この調子で現在はそれぞれの曲の元がわかっていて、このアルバムは単に各自の曲を切り貼りして作ったリミックスだと言われたりしています。ではこれがリミックスだという前提に立って、アルバムの中で私が一番好きなAnybody Elseを例に、詳しくみていきましょう。

 

この曲はポールのSomedays(1997)が軸になっています。そこに、ジョンのOne Day (At A Time)(1973)とリンゴのMonkey See - Monkey Doo(1978)が挟まれていきます。各元曲はググればすぐに聴けるので、ここではAnybody Elseの音源と色分けした歌詞を用意しました。Somedaysからとられた部分が黒、One Dayは青、Monkey Seeは赤にしてあります。ちなみに最初の40秒ほど、ずっとイントロです。

http://www.asahi-net.or.jp/~qr7s-tmym/secret/Anybody_Else.mp3

Anybody Else

Somedays I don't,

I don't believe that you are mine.

Somedays I look,

I look at you with eyes that shine.

 

You are my strength

When we're apart

You are my strength

When we're apart

 

It's no good asking me what time of day it is

no use reminding me, it's just the way it is

don't ask me where I found that picture on the wall

it's no good asking me, it's just the way it is

 

Sometimes I laugh,

I laugh to think how young we were.

Sometimes it's hard,

It's hard to know which way to turn.

 

Ev'ry night we fuss and fight

Like me and you know who

(We don't need anybody else)

※上記4回繰り返し

(We don't need)

(We don't need)

 

Somedays I cry

I cry for those who live in fear

Somedays I look

Somedays I look into your soul

 

It's no good asking me what time of day it is

Who won the match or scored the goal

Don't ask me where I found that picture on the wall

How much it cost or what it's worth

 

Inside each one of us is love

('Cause I'm the fish and you're the sea)

('Cause I'm the apple and you're the tree)

Inside each one of us is love

('Cause I'm the fish and you're the sea)

('Cause I'm the apple and you're the tree)

I guess love is always just

(Good for you)

 

'Cause I'm the fish and you're the sea

'Cause I'm the apple and you're the tree

 

ビートルズファンの私には、声はそれぞれポール、ジョン、リンゴのように聞こえます。歌詞はSomedaysと比べるとかなり順番が変わっていますが、Anybody Elseにだけあって、それぞれの曲にはないという部分はありません。しかしこれと各元曲を聴き比べると、テンポが違う、コード進行も伴奏形態も少し違います。これは一般的に手に入る既存音源を切り貼りするだけでは絶対にできません。ではトラックごとに分かれたマスターテープがあったら? いや、それでも難しいです。メインのポールの歌ではメロディが変わっている箇所があります。「I don't believe that you are mine.」の歌詞はSomedaysに二回出てきますが、どちらもyou are mineの部分がAnybody Elseとは歌い方が全然違っているのです。

 

さて、そうなると、これがリミックスだった場合。ソースになった音源はどうやって手に入ったのでしょう。各自の未発表の録音を元にしている? いや、各自がソロに別れた後でなお、4人すべての未公開音源、しかもトラックごとに分かれたマスターにアクセスできる人物像を思い浮かべるのは難しいでしょう。それよりはむしろ、そっくりさんを利用したと考えれば、このアルバムを作成することができそうです。ビートルズのコピーバンドは世界中に存在し、その中にはかなりそっくりの声を出す人たちもいます。とは言え、そういったバンドの人たちはそれぞれがソロになってからの曲もカバーしているのでしょうか。よほど有名な曲ならそうかもしれませんか、このアルバムに使われている多くのマイナーな曲は一から練習しないとダメでしょう。それでも、コピーの人たちはビートルズ各員の歌い方を知っているわけだから、それほどの苦労ではないのでしょうか。とにかく言えるのは、このアルバムを作るためのそっくりさんを探してきて、レパートリーでないものは練習してもらい、最終的に録音をするというのは、かなり大変なことだと予想されることです。

 

では、そんなに苦労して、おそらく多大なお金と時間をかけて作成したアルバムを、無料で公開するのはいったいどんな人なのでしょう。すべてを秘密裏に運んでいることから、口止め料もしっかり払っていると想定されます。しかも、アルバムを作成するにはそっくりさんだけではなくアレンジャーや、サポートミュージシャンも必要になりそうです。とは言うものの3000万円くらいかければ何とかなりますかね。ビートルズ役の4人には500万円ずつ。その他に1000万円。これくらい出していたとすればこの10年以上、ずっと秘密がバレなかったのも納得が行きます。

 

このプロジェクトを考えた人は当然ビートルズが好きで、解散後もそれぞれをとても好きなことでしょう。でもなぜこんな、ソロ曲のリミックスみたいなものを作ったのでしょう? 一曲だけなら遊びで、このアルバムよりもずっと品質の悪いリミックスを作る人がいるかもしれません。ただ、いったい何があったらこれだけの曲を、人を雇ってまで録音する気になるのでしょう。試しに作ったものが友人たちに好評だったとか? しかしそれだとますます口封じをする相手が多くなります。まあでも、それだけお金と情熱が有り余っている人がいたとして、とにかくアルバムが完成したとしましょう。

 

なぜ無料公開? 

これに関しては、プロジェクトが自己満足から始まっていると仮定すれば、お金を取ると著作権関連がひたすら面倒だと考え、無料にしたかったのではないかと考えられます。ただ、無料であってもこれは立派な著作権の侵害。訴えられてもしょうがありません。もしかしたら訴えられない理由はこの異常な入手経路にある? 普通にアルバムを作ったとしたらそもそもなぜこんな話を創作したのでしょう? 話題性を産んで、自分の作品が広く知れ渡ることを考えた? 広まったらますます著作権が怖くない? そういえばこの人、自分のメールアドレスを公開しているのです。ということは当然権利関係のメールは行って、すべて示談となってそれなりの賠償を払っているとか? 3000万円でも予算は足りなかったのかも?

 

ということで、いったいどんな人がどれだけの情熱を持って、どれだけのお金を使って、という疑問があるものの、このアルバムを異世界とは関係なしに作ることは一応可能と言えます。ただ、もちろんこれは実際にそうしたという証明ではありません。私としてはこのアルバムを普通の手段で強引に作るような変な人がいると考えるより、異世界に行ってしまった変な人がいたと考える方が自然なのですが。。。

 

皆さんはどう思いますか?