えんとつ町のプペル にしのあきひろ② | 言霊〜魂へと届く言葉〜 感動する話・泣ける話

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続き…



 

かえりみち、トボトボとあるくルビッチのもとにプぺルがやってきました。

「ねえ、ルビッチ。あそびにいこうよ」

「……またくさくなってるじゃないか。そのせいで、ぼくはきょう、学校でイジメられたんだ。いくら洗ってもくさくなるキミの体のせいで!」

「ごめんよ、ルビッチ」

「もうキミとは会えないよ。もうキミとはあそばない」




 

それから、ふたりが会うことはなくなりました。

プぺルはルビッチと会わなくなってから体を洗うこともなくなり、

ますますよごれてゆき、ハエがたかり、どんどんきたなく、どんどんくさくなっていきました。

プぺルの評判はわるくなるいっぽうです。

もうだれもプぺルにちかづこうとはしません。


 

あるしずかな夜。

ルビッチのへやの窓がコツコツと鳴りました。

窓に目をやると、そこには、すっかりかわりはてたプぺルの姿がありました。

体はドスぐろく、かたほうの腕もありません。

またアントニオたちにやられたのでしょう。

ルビッチはあわてて窓をあけました。

「どうしたんだい、プぺル? ぼくたちはもう……」

「……イコウ」

「なにをいってるんだい?」

「いこう、ルビッチ」


 

「ちょっとまってよ。どうしたっていうんだい?」 

「いそがなきゃ。ぼくの命がとられるまえにいこう」

「どこにいくんだよ」

「いそがなきゃ、いそがなきゃ」


 

たどりついたのは、ひともよりつかない砂浜。

「いこう、ルビッチ。さあ乗って」

「なにいってんだよ。この船はこわれているからすすまないよ」

おかまいなしにプぺルはポケットから大量の風船をとりだし、

ふうふうふう、と息をふきこみ、風船をふくらませます。

ふうふうふう、ふうふうふう。

「おいプぺル、なにしてんだよ?」

ふうふうふう、ふうふうふう。

「いそがなきゃ。いそがなきゃ。ぼくの命がとられるまえに」

プぺルはふくらませた風船を、ひとつずつ船にむすびつけていきました。


 

船には数百個の風船がとりつけられました。

「いくよ、ルビッチ」

「どこへ?」

「煙のうえ」

プぺルは船をとめていたロープをほどいていいました。

「ホシをみにいこう」


 

風船をつけた船は、ゆっくりと浮かんでいきます。

「ちょっとだいじょうぶかい、コレ !?」

こんな高さから町をみおろすのは、はじめてです。

町の夜景はとてもきれいでした。

「さあ、息をとめて。そろそろ煙のなかにはいるよ」


 

ゴオゴオゴオゴオ。

煙のなかは、なにもみえません。ただただまっくらです。

ゴオゴオという風の音にまじって、プぺルのこえが聞こえます。

「しっかりつかまるんだよ、ルビッチ」

うえにいけばいくほど、風はどんどんつよくなっていきました。


 

「ルビッチ、うえをみてごらん。煙をぬけるよ! 目を閉じちゃだめだ」

ゴオゴオゴオオオオ。


 

「……父ちゃんはうそつきじゃなかった」

そこは、かぞえきれないほどの光でうめつくされていました。

しばらくながめ、そして、プぺルがいいました。

「かえりはね、風船を船からハズせばいいんだけれど、いっぺんにハズしちゃダメだよ。

いっぺんにハズすと急に落っこちちゃうから、ひとつずつ、ひとつずつ……」

「なにいってんだよ、プぺル。いっしょにかえるんだろ?」

「キミといっしょにいられるのは、ここまでだ。

ボクはキミといっしょに『ホシ』をみることができてほんとうによかったよ」


 

「なにいってるんだよ。いっしょにかえろうよ」

「あのね、ルビッチ。キミが失くしたペンダントを、ずっとさがしていたんだ。

あのドブ川のゴミはゴミ処理場にながれつくからさ、

きっと、そこにあるとおもってね」


 

「ぼく、ゴミ山で生まれたゴミ人間だから、ゴミをあさることには、なれっこなんだ。

あの日から、まいにちゴミのなかをさがしたんだけど、ぜんぜんみつからなくて……。

十日もあれば、みつかるとおもったんだけど……」


 

「プぺル、そのせいでキミの体は……ぼく、あれだけヒドイことをしちゃったのに」

「かまわないよ。キミがはじめてボクにはなしかけてくれたとき、

ボクはなにがあってもキミの味方でいようと決めたんだ」

ルビッチの目から涙がこぼれました。

「それに、けっきょく、ゴミ処理場にはペンダントはなかった。

ボクはバカだったよ。

キミが『なつかしいニオイがする』といったときに気づくべきだった」

プぺルは頭のオンボロ傘をひらきました。

「ずっと、ここにあったんだ」


 

傘のなかに、銀色のペンダントがぶらさがっていました。

「キミが探していたペンダントはココにあった。ボクの脳ミソさ。

なつかしいニオイのしょうたいはコレだったんだね。

ボクのひだり耳についていたゴミがなくなったとき、ひだり耳が聞こえなくなった。

同じように、このペンダントがなくなったら、ボクは動かなくなる。

だけど、このペンダントはキミのものだ。キミとすごした時間、

ボクはほんとうにしあわせだったよ。ありがとうルビッチ、バイバイ……」

そういって、プぺルがペンダントをひきちぎろうとしたときです。


 

「ダメだ!」

ルビッチがプぺルの手をつよくつかみました。

「なにをするんだい、ルビッチ。このペンダントはキミのものだ。

それに、このままボクが持っていても、そのうちアントニオたちにちぎられて、

こんどこそほんとうになくなってしまう。

そうしたらキミは父さんの写真をみることができなくなる」

「いっしょに逃げればいいじゃないか」

「バカなこというなよ。ボクといっしょにいるところをみつかったら、

こんどはルビッチがなぐられるかもしれないぞ」

「かまわないよ。痛みはふたりでわければいい。せっかくふたりいるんだよ」


 

「まいにち会おうよプぺル。そうすれば父ちゃんの写真もまいにちみることができる。

だからまいにち会おう。また、まいにちいっしょにあそぼう」

ゴミ人間の目から涙がボロボロとこぼれました。

ルビッチとまいにちあそぶ……、それはなんだか、とおい昔から願っていたような、

そんなふしぎなきもちになりました。

「プぺル、ホシはとてもきれいだね。つれてきてくれてありがとう。

ぼくはキミと出会えてほんとうによかったよ」

プぺルは照れくさくなり、


 

「やめてよルビッチ。はずかしいじゃないか」

そういって、ひとさし指で鼻のしたをこすったのでした。


 

「……ごめん、プぺル。ぼくも気づくのがおそかったよ。そうか、……そっか。

ハロウィンは死んだひとの魂がかえってくる日だったね」

「なんのことだい? ルビッチ」

「ハロウィン・プぺル、キミのしょうたいがわかったよ」


 

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「会いにきてくれたんだね、父ちゃん」




 

THE END



















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