どうしてX線CTで人体の横断面の画像が
得られるか不思議ではないですか?
私と関係が深いX線CTの原理を紹介します。
なぜ私と関係が深いかといいますと、
私は企業時代にX線CTを開発していたからなんです。
(機構部分だけですけどね。)
X線CT(Computed Tomography)は、単にCTとも言われ、
X線ビームを人体に多方向から照射し、
人体の横断面の画像をディスプレイに表示するものです。
<X線CTの原理>
[スキャン方式]
まずは、スキャン方式を紹介します。
第1 世代(Fig. 3)は、Translate/Rotate(T/R)方式と呼ばれ、
レーザポインターのようなペンシルビームを
平行に移動させるTranslate 動作と、
わずかに回転させるRotate を繰り返す方式です。
1断面のスキャンに約5分を要しました。
第2世代は、スキャン方式はT/R 方式ですが、
検出器の数を増やすことで、スキャン時間は
20秒程度に短縮されました。
第3世代(Fig. 4)は、数百個の検出素子を備え、
扇状のビーム(ファンビーム)を用いることで、
Translate 動作を排除した方式で、
Rotate/Rotate(R/R)方式と呼ばれるものです。
1断面のスキャンに数秒を要しました。
第4世代(図5.7)は、
円周状の検出器リングを備え、X線管(X線源)のみ回転する方式で、
Stationary/Rotate(S/R)方式と呼ばれるものです。
1断面のスキャン時間は1秒以下と高速スキャンが可能となります。
今は第4世代が主流でしょうか。
(出典:医療用X線CT技術の系統化調査報告、平尾芳樹著)
短時間で診断ができるのはありがたいですね。
医療機器の進歩に感謝します。
[X線検出器]
次に、X線検出器について説明します。
投影データの収集は、人体を透過したX線を電流として検出する
X線検出器を採用しています。
上の図は、キセノンガス検出器で、
容器内にイオン化しやすいキセノンガスを密封し、
バイアス電極と信号電極間に入ってきたX線をイオン化し、
X線量に応じた電流値(投影データ)として検出するものです。
(最近は個体検出器が主流になっているようです。)
[画像再構成法]
検出した投影データから画像を再構成します。
この方法を画像再構成法といいます。
一般的な画像再構成法として逆投影法があります。
逆投影法は、投影データに適当な関数を
コンボリューション(畳み込み処理)し、
その結果を逆投影する方式です(Fig.6)。
次に、逐次近似法です。
(説明がやさしいので、これを取り上げました。)
逐次近似法は、予め設定された各画素の初期値を
投影データの方向に線積分した結果と、
実際の投影データの値との差を求め、
その差が小さくなるように各画素の値を修正します。
このプロセスを繰り返すことで正解な画像(左上の画像)
に近づけていく方式です(Fig. 7)。
(1)縦方向の投影データ(6、14)をそれぞれ
2つの画素値(3、3)、(7、7)に振り分けます。
(2)次に、右上から左下への投影データ(12)と
振り分け後のデータ(10)との差(+2)を調整して
右上と左下の画素値を(8、4)とします。
(3)最後に、左上から右下への投影データ(8)と
振り分け後のデータ(10)との差(-2)を調整して
左上と右下の画素値を(2、6)とします(右下の図)。
これで当初のが画像(左上の図)を再構成できました。
初期にはこの再構成法が採用されていました。
(参照:X線CTの原理は「X 線CT第1 回:画像形成の原理,装置開発の現状」
齊藤泰男著、MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY Vol.27 No.3 May 2009)
上記以外に様々な画像再構成法が研究されています。
人体を実際に輪切りにしなくても
人体の断面の画像が得られるのが
分っていただけたら幸いです。
なお、今回説明した内容は私の専門外ですので、
説明が不十分だと思いますが、ご容赦ください。
X線CTの歴史にご興味がある方は
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私は第1世代と第3世代の機構部分を開発してきました。
第3世代のケーブル処理機構にご興味がある方は
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