ギター馬鹿ですので若い時はジャズもかじってはいるが、ほぼ聴くのはギタージャズだったのでマイルスを避けながらジャズをかじっていました。でもギターと言う狭い領域だけにこだわって聴いていると音楽好きの人との会話も弾みません。「ブルース、ファンク中心だけどジャズも好きなんですよ~ジャズ研でした」なんてことを言っても、ギタリストの話題以外についていけない。なので見栄を張る意味で、ギター以外のジャンルの深堀りを始めようと、はるか昔に購入したのがこのアルバムでした。しかしマイルスは知ってはいたものの、それとは全く違うサウンドだったので、当時のジャズ初心者にこのアルバムは、なんとも理解不能な音楽でした。なのでマイルスは苦手と聴いてこなかったのですが、古い時代のマイルスを聴いてからイメージが変わり、興味が湧いて聴いていったらいつの間にかマイルスのアルバムが一番多くなっています。そして今では、アコースティック・マイルスも、電化マイルスも両方楽しんで聴けるまでに成長しました。
当時の私の感想が書いてあったのですが、かなり正直な感想で、困惑のほどが伺え(笑)今見ると自分でも面白いです。
マイルスの代表作の一つですが、訳がわからんdesu。所謂ジャズでは無く、ロックでも無く、混沌としています。フュージョンの始まりとも言われるようですが、ここからウェザー・リポートへの道は遠いと私には聞こえます。ネットで見ていると、肯定派、否定派に分かれるようで、コメント書いてる人は大体が肯定派ですね
その訳の分からなかったアルバムについて、自分の整理のためにも前後のアルバムや時代背景をまとめておくと、このアルバムの録音は1969年、Miles In The Sky(1968) ➡ Filles De Kilimanjaro(1968) ➡ In A Silent Way(1969) ➡ Bitches Brew(1969) の流れで、電化マイルスのサウンドが形作られてきています。
1969年は色々なことが起きていた年で、アポロの月面着陸1969年7月20日。音楽業界ではウッドストックが1969年8月15日~17日に開催、このアルバムの録音は、1969年8月19日~21日、28日完全に重なれば凄い偶然でしたので惜しい。この年は Grand Funk Railroad-HeartBreker, The Meters-Cissy Strut, Sly & The Family Stone-Dance to the Music, The Jackson 5-I Want You Back などが発売されるファンク全盛時代、そしてビートルズ解散など、ジャズ以外の音楽が大いに盛り上がっていたことで、Jimi Hendrix、Sly & The Family Stone 等の音楽に触発され、Miles In The Sky からの流れの電化した音楽を作り上げてきた結果の作品です。
当時の私が難解だと感じたのは、ドラム2人とパーカッション2人によるポリリズムを主体とした楽曲で困惑、断片的なテーマ?で、あとはフリーみたいな形式で明確なテーマが存在しないことで頭が混乱、つまりは今まで聴いてきた形式のしっかりとした音楽とは異質な音楽を聴いて心地よいと思う感性が全くなかったから。マイルス音楽はもとより今では聴けるようになってきたフリー・ジャズなんかにも、当時の私の耳は拒否していました。しかし音楽好きの集う「おでんバー」の方たちは、フリー・ジャズ好きも多く、ノイズもありの環境で長く酒を飲んみながら様々な音楽を楽しんできて耐性がついてきた今の私には、心地よい音楽に聞こえるようになっています。
Bitches Brew こちらの作曲者はマイルスなので先導者はマイルスです。こちらも静かな始まりですが、エコーをかけたトランペットで、短いフレーズとロングトーンで煽ってからのブレイク、低いベースとパーカッションでリズムを作ってから、またマイルス主導で音が形成されていきます。Pharaoh's Dance の方が曲全体はインパクトありますが、中盤からのリズムは、こちらの方が、やや鋭角的。次の長尺の出番はジョン・マクラフリンですが、強めで攻撃的でインパクトのあるフレーズ、この明確な流れが無い中でのジャキジャキのバッキングが迫力で、それに合わせて俺の出番がまた来たかと親分マイルス、親分がマイルスとすれば子分のウェイン・ショーターのソプラノが怪しく入ってきて、一挙に普通の曲のように聞こえる展開、そしてブレイクしてからの次は誰だ?と耳を凝らしていると、ザビヌル、チック・コリア のどちらが主導かはわからないエレピが静かに入ってきて、ドラム、パーカッションはリズムをとるのを止めた展開で、マイルスは最初のフレーズに戻る。1枚目の方混沌としたルールの無いインプロ色が強いと思っていましたが、じっくりと聴くとそうでもなかったです。いつも思いますが聞き流している時と、聴きこむのでは印象が変わる曲は結構多いです。
さて、2枚目に突入は Spanish Key です。明らかにパターン化されたベースとリズムなので、少し安心感があり、ブレイク後は明らかにファンクパターンに突入します。しかし、この安心感が、耳と頭が1枚目になってしまってるので、このアルバムの中の楽曲としてはとしては若干つまらないような気もします。何故こんなことを思ってしまうのか考えると、混沌とした演奏の方が演奏者のエネルギーは多く使うからでしょうか。色々なことが考えさせられます。
そしてアルバムで一番短い4分29秒の John McLaughlin は、セッション的な曲で主役は当然 John McLaughlin のギターです。短い理由は、盤に収めるのに長さの調整が必要だったかららしいです。短くきられただけあって、このアルバムでは一番印象は薄い。
Miles Runs The Voodoo Down は曲名に気合が入っていますが、イントロ部分のマイルスのトランペットは曲名に反してポップな気がします。アフリカンな印象のするリズムとマイルスが主役です。リズムが主体となった楽曲で構成されるアイデアの良さは、ここでも健在です。しかしCD一枚目の楽曲のインパクトの強さには達していないと思います。
そしてボーナス・トラックを除いて最後の Sanctuary の作曲者は Wayne Shorter です。このアルバムの流れとして当然、作曲者は曲の先導をすることになります。音は鳴っているけど静寂を表現しているようなサウンドは、普通のアルバムで有ればバラードに該当するような役割と思いますが、暗闇の中で吹いているようなサックスは結構ホラー感あります。途中で激しいところもありますが、この曲の中心はリズムではなくショーターのサックスであり、音符と音符の間にある暗闇でしょう。ナルホドの曲名です。個人的にスキでは無いかも知れないけど、インパクトは残してくれる楽曲です。
あまりに曲が長尺で、真剣に聴くと、聴く側にも力が入る作品かと思います。賛否両論があるのは当然、一発で虜になる人もいるでしょうが、これからこのアルバムを聴く多くの人は大いに困惑してもらって音楽って何だろうなと考えながら、悩んだ末に好きにならなくても良いので、心に刻んでいただければ良いのかと思います。万人受けは確実にしないけど聴いてもらいたい「スゲえ、1枚」です、いや2枚です。あー疲れた🎶🎺
trumpet : Miles Davis
soprano sax : Wayne Shorter
electric piano (Left) : Joe Zawinul
electric piano (center) : Larry Young (1-1, 2-1)
electric piano (right) : Chick Corea
electric guitar : John McLaughlin
bass : Dave Holland
electric bass : Harvey Brooks (1-1 to 2-4)
bass Ccarinet : Bennie Maupin
drums (left) : Billy Cobham (2-5), Lenny White (1-1 to 2-2, 2-4)
drums (right) : Jack DeJohnette
drums (left), congas : Don Alias
cuica, percussion : Airto Moreira (2-5)
shaker, congas : Jim Riley (1-1 to 2-4)
producer : Teo Macero
artwork (cover, cover art) : Mati Klarwein
design (cover) : John Berg
recording data:
1969 August 19 / Columbia 30th st Studios, NY: 1-2, 2-2, 4
1969 August 20 / Columbia 30th st Studios, NY: 2-3
1969 August 21 / Columbia 30th st Studios, NY: 1-1, 2-1
1969 August 28 / Columbia 30th st Studios, NY: 2-5
1-1. Pharaoh's Dance / Joe Zawinul
1-2. Bitches Brew / Miles Davis
2-1. Spanish Key / Miles Davis
2-2. John McLaughlin / Miles Davis
2-3. Miles Runs The Voodoo Down / Miles Davis
2-4. Sanctuary / Wayne Shorter
【Bonus】
2-5. Feio / Wayne Shorter
0 件のコメント:
コメントを投稿