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諸田玲子著 「楠の実が熟すまで」

2022年12月05日 23時12分38秒 | 読書記

図書館から借りていた、諸田玲子著「楠の実が熟すまで」(角川文庫)を、読み終えた。徳川家治が将軍の安永年間、京の禁裏での出費が異常に膨らみ、経費を負担する幕府は、公家達に不正が有るのではないかと睨み、探索人を送り込むが、次々と謎の死を遂げてしまい、不正の証拠を掴むことが出来ず、最後の切り札として白羽の矢を当てたのが、御徒目付中井清太夫の姪、利津だった。利津が、孤立無援の隠密御用(女隠密)として、下級公家、御取次衆、高屋遠江守康昆に嫁ぎ、謎、不可解、反目、よそよそしさ、不自然の中で、闘う長編時代ミステリー小説である。

▢目次
「安永二年十月 京・橋詰町」、「安永二年十一月 京・竹屋町」、
「安永二年十二月 京・公家町」、「安永二年十二月 京・西町奉行役宅」、
「安永三年正月 大阪・楠葉村」、「安永三年一~二月 大阪・楠葉村」、
「安永三年三月 京・西院参町」、「安永三年三月 京・二階町」、
「安永三年四月 京・二階町」、「安永三年五月 京・二階町」、
「安永三年六月 京・二階町」、「安永三年七月 京・二階町」、
「安永三年八月 京・二階町」、「安永三年八月 大阪・楠葉村」、
「安永三年八月 京・西町奉行役宅」、「安永三年八月 大阪・楠葉村」、
「安永三年九月 京・西町奉行役宅」

▢主な登場人物
利津(21歳)、主人公、中井万之助の娘、
中井万之助(利津の父親)、御徒目付中井清太夫(利津の叔父)、
ぎん、弥吉、六兵衛、
御取次衆高屋遠江守康昆(こうこん)、舅、千代丸(6歳)、
右近(康昆の弟、離れに幽閉されている)、
忠助(高屋家老僕)、なか(高屋家女中)
石上伝兵衛(康昆の母方の叔父)、
御賄頭飯室左衛門志(さかん)、
大納言広橋兼胤(かねたね)、雑掌(ざっしょう)浜路典膳
西町奉行山村信濃守良旺(よしたか)、
京都所司代土井大炊頭(おおいのかみ)利里
留吉(清太夫の小者、定斎屋)

表題の「楠(くす)の実が熟すまで」は、利津が、説得されて、隠密御用をつとめる覚悟を決め、叔父である御徒目付中井清太夫に、「いつまでに、証しを見つければええのんか」と問うた時の清太夫の返事「楠の実が熟すまで・・・・だ」から付けられたものだ。
ぎんが絞殺され、弥吉が惨殺され、六兵衛が斬殺され、忠助も、なかも殺され・・・・、
公家と武家の対立、反目、刺客は、いったい何者?・・・、
表の顔?と、裏の顔? 疑念、入り混じり、下手人は不明。
康昆の弟右近とは?、留吉とは?、
康昆が言う、「京の人間が言うことを、信じたらあかんぞ」。
最終盤、木乃伊取りが木乃伊になり、康昆と千代丸の行く末を祈る利津だったが、楠葉(くずは)村に呼び戻される。そこに、利津には思いもよらなかった真の刺客が現れ、あわや利津も絞め殺される寸前になるが・・・。ハラハラドキドキの展開後、帳簿改竄に絡んだ公家達は、死罪、遠島、追放等、処分され、一件落着。利津は、わずか9ヶ月弱の隠密御用から開放されるが、物語はここで終っておらず、一人の女性として、康昆や千代丸に対する深い情愛を奉行に訴え、処分が配慮され、最後には明るい未来を匂わせているところは、作者のもっていきどころなのかも知れない。。
「いつの日か、親子三人で暮らす日がきっと来る・・・」、利津の眼裏(まなうら)に、楠葉村へ続く街道を歩いて来る康昆の姿が浮かんでいた。(完)


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