昨年八月、ダイソーの文庫本『有島武郎』についてSNSに書いた折に、「正岡子規の本も持っているが未読で、此方は紙質が良くない」などと認めた記憶がありますが、最近『正岡子規』も読了。元は興味本位で買っただけでしたが、アンパン一つと同じ価格とは思えない…奥の深い百円本に驚愕しました。ただ残念なことに、今は『ダイソー文学シリーズ』は発行されていないようです。因みに、子規本の発行は6年前の2014年11月1日。超廉価の文庫も、購入者が少ないからなのか? 将又製作費が売価に見合わないからなのか?
 

子規は中・高の国語の教科書に俳句や短歌が載っていた記憶があるものの、詳しくないのでウィキペディア等で調べたら、「俳句,短歌,新体詩,小説,評論,随筆など多方面にわたり創作活動を行い、明治を代表する文学者の一人」とのこと。漱石とは同郷で親友でもあったそうで、34才の若さで肺結核により逝去。学生時代に米国発祥の野球に興味を覚え、のめり込んだ模様。本の表題「うたよみに与ふる書」に、冒頭源実朝は第一級の歌人であったと記し、その後多くの歌人をこき下ろしていて、和歌の知識なき凡人には難解。

 

だだし、前半の「かけはしの記」・「旅の旅の旅」・「高尾紀行」等々の旅行記は、当時の旅行は汽車の乗車は限られた地域のみで徒歩が中心であり、茶店や宿屋の素朴さと折り重なる俳句や短歌は判り易く清涼感。後半の「くだもの」では日本で食べられる果物を考察し、自分は蜜柑が一番好きとの文章に共感を覚え、「死後」・「九月十四日の朝」では死期が近い事を悟る中で、ユーモアさえ感じる日常の冷静な思考は短文ながらも読み応えがありました。正岡子規の記事を書いた紀念に、記憶の中の子規の俳句二つを掲載。

 

 柿くへば 鐘が鳴るなり 法隆寺

 

 赤とんぼ 筑波に雲も なかりけり