リーメンシュナイダーを歩く 

ドイツ後期ゴシックの彫刻家リーメンシュナイダーたちの作品を訪ねて歩いた記録をドイツの友人との交流を交えて書いていく。

232. リーメンシュナイダー写真集 第四巻「まえがき」の続きです。

2020年09月23日 | 自己紹介

▶「まえがき」の2回目、後半を紹介します。

 


写真集第四巻『完・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーと同時代の作家たち』(本は白黒写真)
「まえがき」に載せた天使 司教ルドルフ・フォン・シェーレンベルク碑銘彫刻より  
     ティルマン・リーメンシュナイダー 1496~1499
     ヴュルツブルク大聖堂
 

まえがき(2)

 2019年は私にとって特別な年であった。
 今まで連続して自費出版してきた写真集を「祈りの彫刻 リーメンシュナイダー三部作」としてまとめ、第22回日本自費出版文化賞に応募した。10月にグラフィック部門特別賞として「富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ株式会社賞」を受賞。その後、11月から12月にかけてギャラリー古藤(ふるとう)(東京都練馬区)に於いて、恐らく日本で初めてのリーメンシュナイダー写真展となる「福田緑写真展 祈りの彫刻リーメンシュナイダーを歩く」を開催した。受賞直後だったことも追い風となり、東京新聞、日経新聞から丁寧な取材を受け、しんぶん赤旗、朝日新聞にも写真展の記事が掲載された。それとともに日に日に来場者が増え、2週間で500名を超える方が見に来てくださった。その中にはすでに30~40年前からリーメンシュナイダーの作品を大切に思い続けてきた方々がいらした。たったの20年間で「追いかけ人」と称していた自分はまだまだ若輩者なのだと思い知った。ある方は遠く広島から新幹線で駆けつけてくださった。日本にこれほど多くのリーメンシュナイダーファンがいることを知り、深く感動している。こうした方々との語らいは尽きることなく、心輝く時間だった。私はリーメンシュナイダーの導きによって人生の大きな贈り物をいただいた。

 2019年に、あいちトリエンナーレ「表現の不自由展・その後」が途中で一旦中止に追い込まれたことは記憶に新しい。私が初めての写真展を開催したギャラリー古藤は、その先駆けとなる「表現の不自由展~消されたものたち」を2015年に開催したギャラリーである。毎年2~3月には福島原発事故を忘れてはいけないと、何本もの映画の上映やギャラリートークを行う「江古田映画祭」を実行委員会の中心となって開催している。催し物の定員は40名という小さなギャラリーではあるが、確かな社会的ポリシーを持ちながら運営するオーナーご夫妻は大変親切で温かい。私の友人の一人、木村まきさん(横浜事件国家賠償訴訟原告)は、このギャラリー古藤で2018年に「横浜事件と言論の不自由展」を開催した。そして同年12月に、永田浩三氏(社会的な問題について幅広く発言し続けている武蔵大学教授で、橫浜事件の裁判傍聴を続けていらっしゃる)と、ギャラリー古藤のオーナー、田島和夫さん、大﨑文子さんご夫妻に私を引き合わせてくれたのだった。このギャラリーは1年も前から予約ができ、しかもほぼ毎月1回、このメンバーが集まって準備会議を持つ。このサポートは、初心者の私には大変ありがたいことだった。それまで写真展を開くなどと考えたこともなかったが、このギャラリー古藤で第一回目の写真展を行うことができたのもまた大変な幸運であった。

                                     
 現在、世界中が新型コロナの感染で疲弊しきっている。各地で緊急事態宣言が発令され、今まで国内はもとより海外の広範囲な地域へ自由に旅することができた世界はどこかに消えてしまったようだ。こうした問題が起きるたびに自由に息のできる世界が狭くなり、人々は互いの違いを元に心の壁を作り、憎しみ合ったり拒否し合ったりする傾向が強くなる。目の前の恐怖に縮こまるのは自分も含めて悲しい人間の姿だ。福島原発事故の際に出された緊急事態宣言がまだ撤回されていない日本は、現在二重の緊急事態を抱えているのだ。

 この息の詰まりそうな外出自粛要請の下、それでも通勤して働かなければならない世代の方々には申し訳ないという気持ちを抱えつつ、私も家の中に縮こまって毎日パソコンに向かっている。医療機関で働く方々に心の中で手を合わせながら、本書が完成する頃には、もう少し息のつける日本、世界になっていて欲しい、友だちと自由に会い、お喋りを楽しむことができ、行きたい集まりに参加し、ドイツにもまた安心して旅ができ、海外の人々を日本に迎えることができますようにと祈っている。リーメンシュナイダーや中世作家の作品と向き合う中で優しいマリア様のお顔を見るとやはり心癒やされ、かわいい幼子キリストや天使たちの姿を見ると心がなごむ。美術や文学、音楽、演劇といった芸術の力は大きい。こうした危機の時代、芸術は何百年もの時を一気に越えて心に染みてくる。

  今年の秋、東京・国分寺市で第二回目のリーメンシュナイダー写真展を開く予定でいたが、現状ではどうなることか先が見えない。今年は難しくてもいつか必ず実現したい。身体が動く間は写真展を続け、最後にギャラリー古藤で締めくくりたいと思う。その中で皆さまとどこかでお目にかかれる日があれば、リーメンシュナイダーや中世の彫刻家について心ゆくまで語り合いたいと願っている。

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次回は目次を紹介する予定です。

※このブログに掲載したすべての写真のコピーをお断りします。© 2015 Midori FUKUDA

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