冷たい熱‐1
「だめ」
「どうして?」
「だめなの。わたし」
「したくないの?」
「したい。でも」
日は暮れたばかり。夜の繁華街。
こわいくらいにひとがいた。ピカピカ明るいネオンの光。そのほんのりした影の中、昼間よりもたくさんのひとが、ざわざわわだかまっている。こんなにごちゃごちゃ、いったいどこから来たんだろう。いったいどこまで行くんだろう。
「ね、ユウちゃん。いいじゃん」
「だめ」
「したいんでしょ?」
ただでさえちっぽけなからだを、もっとちいさくして通りを歩いてたら、ナンパされた。はじめて。それも、ヘンな色の髪のひとに。
「ユウちゃんてば、どうしていやがるの」
淡い赤色の前髪の奥から、灰色の瞳がふたつ、わたしを覗き込む。
わたしは安っぽいラブホテルの狭い路地のほうに歩いて行って、薄暗がりからヘンな髪のひとを手招きした。
そのひとはふいににまっとして、こっちにするする寄ってくる。
わたしは彼を見上げて、きっぱりと言った。
「キスして」
「いいよ。その先もここで?」
「すればわかる」
「ふうん」
にやりとした唇が近づいてくる。その顔はけばけばしい色の光でほのかに照らし出されている。
わたしはすっと浅く息を吸った。胸を張って、あごを上げて、それからぎゅっと目を閉じた。
わたしの中の「熱」が、じわり、高まっていくのを感じながら。
「だめ」
「どうして?」
「だめなの。わたし」
「したくないの?」
「したい。でも」
日は暮れたばかり。夜の繁華街。
こわいくらいにひとがいた。ピカピカ明るいネオンの光。そのほんのりした影の中、昼間よりもたくさんのひとが、ざわざわわだかまっている。こんなにごちゃごちゃ、いったいどこから来たんだろう。いったいどこまで行くんだろう。
「ね、ユウちゃん。いいじゃん」
「だめ」
「したいんでしょ?」
ただでさえちっぽけなからだを、もっとちいさくして通りを歩いてたら、ナンパされた。はじめて。それも、ヘンな色の髪のひとに。
「ユウちゃんてば、どうしていやがるの」
淡い赤色の前髪の奥から、灰色の瞳がふたつ、わたしを覗き込む。
わたしは安っぽいラブホテルの狭い路地のほうに歩いて行って、薄暗がりからヘンな髪のひとを手招きした。
そのひとはふいににまっとして、こっちにするする寄ってくる。
わたしは彼を見上げて、きっぱりと言った。
「キスして」
「いいよ。その先もここで?」
「すればわかる」
「ふうん」
にやりとした唇が近づいてくる。その顔はけばけばしい色の光でほのかに照らし出されている。
わたしはすっと浅く息を吸った。胸を張って、あごを上げて、それからぎゅっと目を閉じた。
わたしの中の「熱」が、じわり、高まっていくのを感じながら。