つばた徒然@つれづれ津幡

いつか、失われた風景の標となれば本望。
私的津幡町見聞録と旅の記録。
時々イラスト、度々ボート。

国境に立つ歌姫。 ~ リンダ・ロンシュタット。

2021年04月10日 15時15分15秒 | 手すさびにて候。
         
<はじめに>
本投稿の主人公は、1946年7月15日に生まれた女性シンガー。
彼女は、アメリカとメキシコ、2つの文化をクロスオーバーさせ、
ジャンルにこだわらない柔軟さを発揮し、70年代を通じて活躍。
後の音楽と社会に一石を投じた。
その歩みを振り返るにあたり、BGMを選ぶ感覚で音源を張り付けてみた。
時間が許せば、ぜひ音楽を再生しながら、ご一読くださいませ。

<本編>
ほんの手すさび 手慰み。
不定期イラスト連載 第百六十九弾は「リンダ・ロンシュタット」。



Ta Ta Dios (2016 Remaster)


「リンダ・ロンシュタット」の生まれ故郷--- アリゾナ州「ツーソン」は、
国境まで100キロ余り。
年間の降水量は100mm以下。
抜けるような青空の下に建つ生家は、日干し煉瓦を積み上げた赤い壁に、赤い瓦。
広い前庭に黄色いサボテンの花が咲く、開拓時代の伝統を受け継いだ佇まい。
父親は、メキシコ系の血を引くギタリスト。
母親は、オペラ歌手になるのが夢だった主婦。
愛情と音楽に囲まれた子供時代のアイドルの1人は、パパ。
ジャズやポップスなどの流行りものだけじゃなく、
父の指が奏でるメキシコの伝統的なメロディも、お気に入りだった。

やがて、高校時代に音楽活動を始め、大学を中退し西海岸・ロサンゼルスへ。
「トルバトール」というクラブの門を叩く。
中世ヨーロッパの吟遊詩人を表す名前が付けられたそこは、
才能あるミュージシャンが切磋琢磨する一種の〝音楽道場〟。
専属歌手になって「ドン・ヘンリー」や「ジャクソン・ブラウン」ら、
未来のスターと共にステージをこなし、刺激し合う事で才能を伸ばしてゆく。
当時のバック・バンドが、後の「イーグルス」だったのは有名なエピソードだ。

グループのリードボーカルとしてデビューした後、ソロへ転向。
彼女のアルバムは、スタンダードカバーと、才能ある新人のスコアで構成。
つまり、過去と今、懐かしさと新しさを絶妙にブレンドした選曲で、
幅広いリスナーの心に訴えたのである。

It's so Easy (2015 Remaster)


ウエスト・コースト・サウンド。
カントリー。
ポップス。
典型的なロックンロール。
ジャンルの境界を軽々とまたぐ変幻自在の歌唱力は、彼女の魅力の1つ。
人気が沸騰してゆき、ファンから“ミス・アメリカ”の称号で呼ばれ始める頃、
ちょうど、女性の自立と解放を目指した「ウーマン・リブ運動」が勃興。
「リンダ」も自己主張を隠さず、
一人の人間、一人の女性として、堂々と振舞うのである。

Just One Look (2015 Remaster)


まぶしい成功を手に入れた「リンダ・ロンシュタット」の恋愛遍歴は、
華麗でバラエティーに富んでいる。
“Just One Look”---“一目で虜になった男”は、大勢いた。
ウエスト・コースト・ロックの大物「J.D.サウザー」、
「ローリング・ストーンズ」の「ミック・ジャガー」とも愛し合う。
そして、当時、カリフォルニア州知事との情事は「恋の逃避行」を伴う大問題に発展。
結局、このスキャンダルが元で、次期大統領候補と噂されていた恋人は、あえなく落選。
「リンダ」はファースト・レディになり損ねたが、歌手としては大成を遂げたのである。

Desperado (2015 Remaster)


文化や習慣の異なる人達が一緒に暮らす多民族国家の中には、
「目に見えないボーダーライン」が交錯している。
例えば、人種毎に棲み分けられた「区画」。
貧富の差という「階級」。
そして、心の中に引かれた「差別」や「意識」。 
そうした境界線は、ある時は衝突の舞台となり、
ある時は発展を促す揺りかごになって、新しい文化が生み出されて来た。

アメリカとメキシコの国境近くに生まれ、
文化やジャンルを軽々と飛び越えた「リンダ・ロンシュタット」。
彼女がスペイン語でアルバムを発表したのは1980年代末。
以降「ロス・ロボス」が映画「ラ・バンバ」のタイトル曲を大ヒットさせ、
「グロリア・エステファン」の快進撃が始まった。
他にも「リッキー・マーティン」、「ジェニファー・ロペス」、
「クリスティーナ・アギレラ」など
ラテン系ミュージシャンが続々登場してきた事を考えれば、
まさに先駆者だったと気づかされる。

1人の女性の歌が及ぼした影響は小さくない。

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